第8話:三歳への成長と、積み重ねる日常
あの大騒動から一年が経過し、私は三歳の誕生日を迎えていた。
あの「魔の森」での事件以降、アイラは反省したのか無茶な行動を控え、以前にも増して私の体調を気遣うようになった。屋敷の庭で私がお気に入りの本を読んでいると、彼女はいつも隣に寄り添い、静かに私の観察相手を務めてくれている。
「ヒューイくん、風冷たくない? 寒かったらお部屋に入ろうね」
「ありがとう、アイラ。でも、もう少し陽の光を浴びていたいかな」
三歳になった私は、相変わらず「病弱で線が細く、本ばかり読んでいるおとなしい子供」という評価を周囲から獲得していた。前世の知識と【深謀遠慮】の力で、体調を崩したフリや繊細な立ち居振る舞いも板に付いたものだ。
庭の木陰で目を細めながら、私は視覚の隅にステータス画面を密かに展開する。
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**【基本ステータス】**
* **名前**:ヒューイ
* **年齢**:3歳
* **レベル**:20
* **【ステータス】**
* STR:45 / VIT:45 / AGI:65 / DEX:65 / INT:200
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**【保有スキル】**
* **固有スキル**:【ストック(レベル2)】
* **思考・戦略スキル**:【深謀遠慮】【多重思考】
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**【習得魔法】**
* **生活魔法**:全般(無詠唱可)
* **火魔法**:初級
* **水魔法**:初級
* **風魔法**:初級
* **土魔法**:初級
※魔法階級(全7段階):初級 / 中級 / 上級 / 特級 / 聖級 / 王級 / 神級
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**【保有固有スキル:詳細】**
* **【ストック(レベル2)】**
* 効果:1日2項目、己のステータスをストックすることができる。
* **【内訳・蓄積ステータス詳細】**
* **INT(知力)**:26,000pt(付与時:+2,600 / 1h)
* **AGI(敏捷)**:6,500pt(付与時:+650 / 1h)
* **DEX(器用)**:6,500pt(付与時:+650 / 1h)
* **VIT(体力)**:4,500pt(付与時:+450 / 1h)
* **STR(筋力)**:4,500pt(付与時:+450 / 1h)
* **達成状況**:
* **使用回数**:1,095 / 1,500
* **累積蓄積ポイント**:48,000 / 100,000pt
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(ふむ……レベル20か。あの魔の森での一件以来、無理のない範囲で経験値を拾つつ、ここまで上げてきた形だね)
私はレベル上昇に伴って得たステータス成長分の多くを、毎日の【ストック】作業によってコツコツとストレージへ吸い上げ続けていた。
そのため、蓄積ポイントはすでに合計4万8千pt(48,000pt)に達している。
素のステータスは完全に知力へと特化した極端な配分でありつつも、日々の動作では徹底的に力をセーブし、周囲には変わらず「病弱で繊細な3歳児」として振る舞っていた。
(レベル上昇分の余剰を上手くストックに回すことで、内側に巨大な知力と隠し球を溜め込みつつ、外向きには無害な子供を装う……このバランスが最高だね)
魔法に関しても、現時点で表に出しているのは「初級」や「生活魔法」程度だ。INTの圧倒的な伸びや戦略スキルの補正によって高度な魔法の構築理論も把握しつつあるが、今は目立つ必要がどこにもない。
(ストックした約4万8千ptの蓄積があれば、万が一の緊急事態にも『リリース』で瞬時に絶大な知性と対応能力を引き出せる)
だが、私の目指すゴールはあくまで「平穏なスローライフ」だ。この力を本気で行使する機会など、生涯来ないに越したことはない。
「ヒューイ様、お時間ですよ。本日の家庭教師の先生がお見えになりました」
使用人が呼びに来る。私の知的な好みを考慮して、両親が手配してくれた歴史と世界情勢を教える専門の家庭教師だ。
「分かったよ、すぐ行くね」
私は本を閉じ、ゆっくりと立ち上がった。アイラも「あたしも一緒にお勉強見るー!」と言って手を繋いでくる。
(さて、今日もしっかりと『病弱で勉強好きな男の子』を演じるとしようか)
日差しの中を歩きながら、私は穏やかな日々に深く満足していた。
このまま誰も私の真の力に気づくことなく、平和に年を重ねていける――この時はまだ、そう信じて疑っていなかった。




