第5話:レベル2解禁と、二歳の誕生日に届いた報せ
一歳の誕生日からさらに一年が過ぎ、私は二歳の誕生日を迎えていた。
この一年の間も、私は毎日欠かさず【ストック】のスキルを起動し、コツコツとステータスを貯金し続けてきた。その甲斐あって、今日の朝ついにスキルの条件を満たしたのだった。
自室で一人、能力画面を展開する。
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**【保有固有スキル】**
* **【ストック(レベル2)】**
* 効果:**1日2項目**、己のステータスをストックすることができる。
* **【解放機能:ステータス付与 / アイテム交換】**
* **ステータス付与**:蓄積した各ステータスポイントの1/10を、1時間限定で己の身体に還元・付与可能。
* **アイテム交換**:全蓄積ポイントを消費し、様々なアイテムや道具と交換可能。
* ※達成状況の数値は「累積値」のため、ポイント消費を行っても解放条件のカウントは減少しない。
* **【内訳・蓄積ステータス詳細】**
* **INT(知力)**:8,000pt(付与時:+800 / 1h)
* **MND(精神)**:8,000pt(付与時:+800 / 1h)
* **DEX(器用)**:1,500pt(付与時:+150 / 1h)
* **VIT(体力)**:1,000pt(付与時:+100 / 1h)
* **STR(筋力)**:500pt(付与時:+50 / 1h)
* **達成状況**:
* **使用回数**:730 / 1,500
* **累積蓄積ポイント**:19,000 / 50,000pt
* **????**:『????????』
* **????**:『????????』
* **????**:『????????』
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(ほう……レベル2になったか。なるほど、各ステータスの蓄積量が明確化され、ただ溜めるだけではなく『ステータス付与』と『アイテム交換』ができるようになったわけだね)
画面を解析しながら、私は思考を巡らせる。
1日2項目までストック可能になったのは実に大きい。そして、前世の知性と自身の適性から集中的に溜めていたINT(知力)やMND(精神)からは、1/10(800pt)を引き出して付与すれば、1時間限定とはいえ並の魔術師を遥かに凌駕する膨大な魔力と演算能力を発揮できる。
次の解放目標は累積50,000ptか……。なかなかに高いハードルだが、毎日2項目ずつストックできるようになったなら、決して不可能な数値ではない。
さらに『アイテム交換』のリストをスクロールしてみるのだが――。
(……ふむ。業物の魔導剣や上質な特効薬などは、要求値が桁違いすぎて到底手が届かないな。数十万から数百万ポイント単位か……)
高ランクの強力な武具や薬品は途方もない数値を要求され、現在の貯金では到底買えそうにない。一方で、数ポイントから数十ポイント程度で交換できる一覧には、一見何に使うのか分からないような些細な道具や、日常の雑多な消耗品ばかりが並んでいた。
(まあ、高望みしても仕方ない。手頃な低ポイントの道具でも、場面によっては何かの役に立つかもしれないね)
ポイントを消費しても解放条件の「累積カウント」が減らない仕様も実に良心的だ。
(神様は『どう引き出すか解せぬ』と言っていたが……レベルが上がればこうして機能が拡張されていくわけか。非常時の保険としては、これ以上ない武器になりそうだ)
新機能の確認を終え、私は満足して能力画面を閉じた。
今日も屋敷では、私の二歳の誕生祝いのためにささやかな準備が進められているはずだった。
――だが。
「大変だ! ヒューイ様! 騎士団長様のところのアイラ様が……っ!」
部屋の扉が勢いよく開き、息を切らした使用人が飛び込んできた。顔は青ざめ、声は激しく震えている。
「アイラが……どうしたんだい?」
私が静かに問いかけると、使用人は絞り出すように叫んだ。
「アイラ様が『ヒューイ様の体を丈夫にする薬草を取ってくる』と書き置きを残し、お一人で裏の『魔の森』へ入られてしまったそうです! 騎士団の方々が急ぎ捜索に向かわれましたが、森の奥は危険な魔物が徘徊する場所……!」
「……!」
一歳の誕生日に、彼女が真剣な目で語っていた言葉が脳裏をよぎる。
『あたしがもっと大きくなったら、絶対にその薬草を取ってきてあげるからね!』
あの子は本気だったのだ。私の弱い体を少しでも良くしたい一心で、二歳になった今日、危険を顧みず一人で森へ向かってしまった。
(やれやレ……。静かで平穏なスローライフを送りたいのだがね……)
私は小さく息を吐き出すと、ベッドから降りた。
目立つような行動は避けたかった。だが、自分を思って危険に飛び込んだ幼馴染を、ただ手をこまねいて見捨てるほど落ちぶれてはいない。
【深謀遠慮】で自らの気配を完全に殺し、【多重思考】で森の地形と最短ルートを計算する。
(アイラ……無事でいてくれよ。今、助けに行くからね)
二歳の誕生日の日差しの中、私は誰にも気づかれることなく、静かに屋敷を抜け出したのだった。




