第4話:温かな誕生日と、幼き少女の決意
生後一年を迎え、私は一歳の誕生日を迎えていた。
屋敷の広間では、両親や使用人たちによるささやかな誕生祝いが開かれていた。テーブルには豪華な料理が並び、柔らかなキャンドルの光が広間を温かく照らしている。
前世の私は身寄りが乏しく、自分の誕生日などコンビニのお弁当や缶ビールで淡々と済ませるのが常だった。誰かに笑顔で「おめでとう」と言われ、温かい料理で祝われることなど、生まれて初めての経験だった。
「ヒューイ、一歳の誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとうね」
母様が愛おしそうに私を抱きしめ、父様が優しく私の頭を撫でる。
(……ああ、そうか。誕生日を誰かに祝ってもらえるというのは、こんなにも胸の奥が温かくなるものなんだな……)
前世では知らなかった家族の温もりに、胸の奥がじんわりと熱くなるのを禁じ得なかった。目立たず平穏に生きたいという思いの裏で、この温かな日常を守りたいという気持ちが、私の中に静かに芽生えた瞬間だった。
パーティーには、近所に住む騎士団長一家も招かれていた。同い年のアイラは、私の隣で嬉しそうにはしゃいでいる。
「ヒューイ、おめでとー! これ、あげる!」
アイラが差し出してきたのは、庭で摘んできた小さな野の花だった。生後六ヶ月のときに腕にあざを作らせてしまって以来、彼女は私を割れ物のように大切に扱ってくれる。勝気な性格ながらも、その手つきは驚くほど優しかった。
「ありがとう、アイラ」
私が素直にお礼を言うと、アイラは誇らしげに胸を張り、ふと思いついたように真面目な顔で私の顔を覗き込んできた。
「ねえ、ヒューイ。ヒューイはお体が弱くて、いつもすぐ疲れちゃうでしょう?」
「まあ、そうだね……」
「あたし、知ってるんだよ! 裏の森の奥深くにね、食べると『お体がとっても丈夫になるすごい薬草』が生えてるんだって! 父様たちが話してるのを聞いたの!」
「薬草……かい?」
「うん! あたしがもっと大きくなったら、絶対にその薬草を取ってきてあげるからね! そうしたら、ヒューイも元気いっぱい走り回れるよ!」
(やれやれ……お気持ちは大変ありがたいが、危険な森に入るような真似はしないでほしいのだがね)
無邪気な優しさに苦笑しつつも、私は「ありがとう」とアイラの小さな頭を撫で返した。だが、彼女の真っ直ぐで力強い瞳には、幼いながらも確かな決意が宿っていた。
温かな誕生日の余韻の中、私とアイラの幼き日の約束が、静かに刻まれたのだった。




