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第3話:生活魔法と、【ストック】の隠された領域

1歳に近づき、自分の足で少しずつ歩き回れるようになってきた私は、屋敷の中でこの世界の「文化」や「仕組み」を観察する余裕ができていた。


ある日の昼下がり、裏山の見回りから戻ってきた屋敷の兵士が、遭遇した魔物の鋭い爪で負った腕の傷を侍医に診てもらっている場面に出くわした。

すると、そばにいた侍医が軽やかに掌をかざし、静かに言葉を紡いだ。


「――傷を癒やせ、『ヒール』」


侍医の手から柔らかな緑色の光が溢れ、兵士の腕にあった痛々しい傷が一瞬で綺麗に塞がっていった。さらに屋敷の料理人たちが、厨房で『ファイア』を使って薪に火をつけたり、『ウォーター』で綺麗な水を樽に満たしたりしている光景も目にした。


(ほう……あれがこの世界の『魔法』か。言葉とイメージで事象を改変するシステム……実に興味深いね)


大人以上の数値(45)を誇るINT(知力)とMND(精神)を持つ私にとって、その理を解析するのは容易かった。【多重思考】を裏で走らせながら魔法の発動現象を観察するだけで、生活魔法程度の仕組みは頭の中でほぼ解明できてしまった。


(ふむ……無詠唱でも十分発動できそうだな。生活魔法が使えれば、将来一人暮らしをするときにも不自由しない)


大魔法など使う気は毛頭ないが、日常をほんの少し便利にする知識を得られたのは収穫だった。


◆


その日の夜。部屋で一人になった私は、改めて自身の固有スキル【ストック】の画面をじっくりと確認していた。


---


**【保有固有スキル】**


* **【ストック(レベル1)】**

* 効果:1日1項目、己のステータスをストックすることができる。

* 達成状況:

* **使用回数**:300 / 700

* **蓄積ポイント**:3,000 / 7,000pt



* **????**:『????????』

* **????**:『????????』

* **????**:『????????』

* **????**:『????????』



* **【深謀遠慮(しんぼうえんりょ)】**

* **【多重思考(マルチタスク)】**

* **【盤上の先手(チェス・マスター)】**


---


(おや……? よく観察してみると、レベル1の下に『????』とだけ書かれた行が4つ並んでいるな)


神様はスキルの詳細を「未知の領域」と言っていたが、現在のレベル1を含めて5つの枠が存在するということは……どうやらこのスキルには『レベル5』までの段階が存在するらしい。


さらに画面の細部を読み解いていくと、レベル1の効果のすぐ下に、小さく数字が並んでいるのに気づいた。


**『使用回数:300 / 700』**

**『蓄積ポイント:3,000 / 7,000pt』**


(ほう……明確に『条件』とは書かれていないが、分母の数字が刻まれているな。これを満たしたとき、一体何が起きるのか……次の『????』が解放されると見て間違いないだろうね)


毎日休まず1日1回ステータスを削り、1日約10ptを蓄積していくとすれば――。


(なるほどね。このペースで毎日コツコツと蓄積を続けていけば、ちょうど2歳を迎える頃にこの『700回 / 7,000pt』というノルマを達成できる計算になるわけだ)


引き出し方すら分からない未知のスキル【ストック】。だが、2歳になれば次の扉が開くかもしれない。


(2歳か……。まあ、焦る必要はないさ。これからも目立たず静かに、毎日コツコツと貯金を続けていくとしよう)


自分のスキルの底を見極めた私は、満足して小さなベッドで目を閉じたのだった。

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