正義と嘯く / 黝いくちびる
せいぎとうそぶく / あおぐろいくちびる
◆正義と嘯く
ありふれた毎日で
ありふれた時間に嫌気がさす
ありふれた嘘を吐いて
ありふれた日常に絶望を覚える
あの海の向こうの陽の塊も
夜を誘う怪しげな光の主も
一刻一刻が新し過ぎて
一景一景がありふれて思える
止めどとなく時は経るのに
或る一時に吐いた譫言は
其の一時にとどまる事なく
いつまでも僕を縛りつける
何故、人は
本当と嘘をわけたのか
何故、人は
自分を守る為の嘘を覚えたのか
「縛られるのにはもう疲れた」と
わかっていてもどうしても自分を守ってしまう
たったひとつの嘘で
大きな大きな代償が課せられる
嘘だと呟けば汚れてしまう
本当だというのなら
嘘を本当にしなければならない
考えてる暇なんてないんだよ
僕が脳を廻しても
時は世界と密接に過ぎていくのだから
人間が自分だけには嘘をつくことが出来ないように
重過ぎる鎧から逃れても
きっとまた自分を守る為に
同じ事を繰り返す
ありふれた毎日のありふれた時間
ありふれた嘘を吐いた日常に絶望を覚える
其れでも
全部が全部、悪くはない
生きていくには時に嘘は必要なんだ、
と
◆黝いくちびる
黒く鈍く錆びた
重く冷めた胸の辺りの奥
それが何なのか、ずっと知りたかったんだ
開いた方の眼には何が映るの
閉まった方の胸には何が沁み込むの
何も聴こえない、何も見えないの
あの声、あの目が全部怖いの
傷付いたように逃げながら
君に大丈夫だと言って
そのくせ、眼は凄く凍みて
震えが止まんないよ
君が好きです
好きです
声にならない想い
見えるもの全て
全てが
敵に思えたんだ
揺れる愛を
みえすいた本当と嘘と
矛盾が締め付けて
電話口の君に
嘘を本当だと、
僕の唇は
黝い嘘をついた。




