欺かれるを / 海月のみる海
あざむかれるを / くらげのみるうみ
◆欺かれるを
欺く事を畏れるな
欺かれる事に怯えるな
全ての真理に欺きは存在して
全ての理は欺きに浸っている
そんな嘘の様で当たり前な真実
骸を食む神の群、闇を繕う暁の手
漂う鼓動、心臓の褐色
そんな嘘の様で当たり前な真実
のし掛かる残像は嘗ての愛なのだろうか
愛情には程遠く、寧ろ憎悪に偏るのに
この底に疼く傷は裏切りの痕よりも
草臥れる事なく愛を求めて
この揺れる揺れる心には
鍵も無ければ扉も無く、囲いさえも無い
止められない衝動を、抑えきれない感情を
どうすればいい
後に鋼を求めてもただの悔いにしかならないだけで
この欺きの手中にある世界では
偽りに狂う、真実に佇む
欺く事を畏れるな
欺かれる事に怯えるな
聳える膨大な時間が美しいと思えないのだ
そんな嘘の様で当たり前な真実が
きっと僕等の全て。
◆海月のみる海
揺れた漆黒を潤すこの色を
濃い青とだけでは譬え切れない
刻み込まれる断崖に、月光を晦ます苔色
踊る雑草に、茨の波
その全てが自分を包んでいるのに
まるで異空間の様だ
拒む事なく、それでいて完全など有り得ない
この世界に白の色は消え失せる
覚醒された白など存在しない、真綿の色でさえ漆黒に似る
濁るけど、染まらない
褪せるけど、消えない
拒む事なく、それでいて完全など有り得ない
深く底には尖る波の轍が在る
砂の破片にも夜の瞳の照らす光が当たる様にと
飛沫の泡が瞬く速さで破裂するのを
その零れる光を透して見つめている
常闇を宿すこの空間は
酷く、狂おしい程に美しい
そして冷酷で残虐的
そんな矛盾の世界で生きる僕等は
矛盾が故にいつしかこの世界に殺されるのだろうか
漆黒は沈んだままだった
初めて気付いたんだ、
ゆらゆら揺れていたのは僕だった
そして僕も矛盾だらけだ
拒む事なく、それでいて完全など有り得ない
神が認めた“平等”が一つだけある
それ故にここもまた、矛盾の海。




