春霞に想ふ / 皸に滲む
はるがすみにおもふ / あかぎれににじむ
◆春霞に想ふ
僕が一億年前、君に出逢えていたなら
六十億分の一の君に出逢えていたなら
僕が見ないで描いた君という存在を
揺らいで描いてみた君という感覚を
何も知らない、誰も知らない
そんな一人ぼっちじゃ嫌だよ
誰が責める、何を責める
もう傷付くとか忘れたいよ
誰でもない、それは僕という意識だよ
まだ一つだけを何だか求めてんだ
譲れないもんだけど握れきれなくて引き摺る
ただ、愛するって何だか照れるんだ
ばれちゃ困るって訳じゃないけど
お願いだ、君だけの僕からの愛としといてよ
僕が一億年前、君に出逢えていたなら
六十億分の一の君に出逢えていたなら
僕が見ないで描いた君という存在を
揺らいで描いてみた君という感覚を
僕は、ひたすら愛するだろう
もう君じゃなきゃ駄目なんだ、
君だから意味があるんだ。
◆皸に滲む
現実が
夢に肥えた瞼と脳味噌を貫通する様に
確実に軟らかい優しさと情けを抉り取る様に
掠めた刃の鋭さよりも
貪欲に傷を求める血の群が
じわじわと染み出る鉄の香りが
この肌の裂ける現実をやっとの事で脳に伝える
目を覚ませ、目を醒ませ
この快い眠りから、
この誘惑に魅せられた幻から
瞳に映る事全てが、
欺きの中にあり、全てが惑わし
瞳に映る事全てが真実なのだ
そう己に言い聞かせていないと
脳味噌はわかってしまう、
わかりきった偽りを
脳味噌が乱れて心が荒む
この軋る音が聴こえるか
頭蓋骨を砕いてしまう
それでも平穏を装って
崩れた笑顔は誰が見ても惨めだろう
美しいとは言わない、誰もが歪だと笑う
挫折の背中に向けられるのは罵声に似た笑い声
現実など所詮真実には程遠い偽りの塊
本当など誰も知らない
目を覚ましても
きっと、瞳に映る幻は変わらない。




