朝霧 / 蝸牛の夷狄
あさぎり / かぎゅうのいてき
◆朝霧
目が覚めた、
なんかだるい
あと五分だけゆっくりさせてよ
起き上がる、
なんかだるい
ああ俺は今日も俺なんだ
さあ何をしようか
なあ何をすればいい
俺の証明が欲しいの
鼓動の音だけじゃ不安だよ
俺が食らいつく程の平和が
あるなら、ちらつかせてみなよ
何億、何兆円積まれても譲れない物がある
もしそれが命だとしたら
それは俺のじゃないよ
愛をみせてよ、
俺のはやれないの
なんて贅沢なの
それは贅沢なの
愛を追求する、
俺のは欠片しかないの
未完成な愛だけど、受け取ってくれるの
苦しいよ、重たいよ
いつかきっといらなくなるよ
愛を手渡す、
俺のでもいいなら
なんて謙虚なの
それを心というの
愛を包み込む、
俺の身体いっぱいで
なんて温かいの
それも“俺”というの
目が覚めた、
なんかだるい
あと五分だけゆっくりさせてよ
変な夢だったなあ、
なんかだるい
ああ俺は今日も俺でいいんだ
さあ何をしようか
さあ何をしようか。
◆蝸牛の夷狄
そこは握り潰せる程の小さな世界
それでも僕は生きている事だけがただ記録されて
そして自分という戒めで溺れている
どんなに贅沢に生きたって
どんなに惨めに生きたって
どんなに足掻いて生きたって
僕等人間が本当は独りだという事は変わらない
比翼の鳥が羽ばたく空は僕等が憧れるよりも、ずっと広く
何本もの光の線が雲を貫いてそこに在るのだろう
僕等に翼があったなら
きっと、この美し過ぎる空に狂い
そしてきっと、本当は独りだという事も
自分が何者かという事も構わずに
灼熱の太陽に熔かされるまで
飛び続けるのだろう
そんな物語が
“自由”を知ったつもりでいる僕等の
世界。
翼があっても、
飛べても
それはこの世界や僕からの逃げ道にはならない
この小さな小さな、小さ過ぎる世界で
僕が僕で在ることを失う事が
僕にとっての心臓が震える“自由”だ
それがもし螺の狂った“人間”だとしても。




