殿の梦 / 無二の心臓
しんがりのゆめ / むにのしんぞう
◆殿の梦
この戦の終わりが我等の終わり
我等の終わりがこの戦の終わり
委ねの微笑みは挫く夢を引き摺りまわす
憤りさえも感じる情に瞬きの一刻を悔やんで
目先の炎に焦がれ朽ちる
それこそが慈しみの中にある暗闇の理由
逃れる為の光を探さない理由
目を閉じれば求めるものをみてしまう
ある訳のないものを欲してしまう
それが幻想だとしても感じていたい
嗚呼、混乱、妄想、悪夢、奇跡
それのどれもが心臓を確かめる
狂いさえも我等の足下にはない
悪臭の骸が自然で、
黒焦げた血を眺める事で己の命を確認する
その狂いをこえた無の境地に
屍は今日も少しだけ残酷な殺意を携えて
忘れられない大切な事を忘れた顔をしている
夢という想像だけの快楽は、開く瞳に恐怖を映す
この戦の終わりが我等の終わり
我等の終わりがこの戦の終わり
嗚呼、混乱、妄想、悪夢、奇跡
その狂いをこえた無の境地に
横たわる時が来たなら
この誇りにまみれた争いも終わり、
少しだけ残酷な殺意を携えて、
忘れられない大切な事を忘れた顔をしているだろう
そして夢が終わった夢をみる
それもまた、己の命を確認するかのように。
◆無二の心臓
仰向けになった僕の身体は生きている事を忘れさせる
この呼吸のしずらい体制は、僕が僕を潰しそうになる
五本ある指のうち、一本でも折れたら痛みが走る
そして目を開けると、五つで一つの心臓も
四つの神経に生まれ変わる
きっとそれは必然で、
そしてそれが当たり前かのようだ
誕生を祝う蝋燭に灯る火全部が、自分だけで精一杯
自分が暗闇を照らす存在とも知らずに命を輝かす
四本ある燭のうち、一本でも消えたら暗闇が顔をだす
そして目を開けると、四つで一つの祝福も
三つの過去に生まれ変わる
きっとそれは必然で、
そしてそれが当たり前かのようだ
五つの心臓は僕と同じ速さで刻む
四つの神経に灯る燭は僕の色と僕の匂い
三つの過去は僕の刻んだ鼓動の檻にいれられて
覚えていられない程の僕の存在に
あの頃の僕がいなければ
過ちなんて言葉は
きっと僕の欠片なんだ
そんな僕と戒める僕は、緩める僕を赦さない
意味の存在を悩む暇を持てあます今日この頃
掴めた事は僕がいることだけ。




