↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
84/94

第84話 南氷監獄城ヴァルゼク攻略戦


ゲートランド城での壮大な

開戦宣言の余韻も冷めぬまま、

常夏衆、玩秋組、近衛兵団、冒険者ギルド

の総力を結集した『三季連合軍』は

冬の精霊の領土の最南端へと

怒涛の大進撃を開始していた。


眼前に立ちふさがるのは、

絶対零度の吹雪と

漆黒の氷結晶によって築かれた

極北の絶対要塞——第一の旗艦城

『南氷監獄城ヴァルゼク』


「総員、攻撃開始ィッ!!」


グラッド王の大号令とともに、

連合軍の怒号が極寒の空を突き破る!



ヴァルゼクの巨大な氷門からは、

冬の軍勢が誇る精鋭兵と、

山のように巨大な氷結ギガント軍団が

雪崩のように押し寄せてきた。


「ハハハ! 雑魚どもが

 湧いて出てきたぜっ!」


先陣を切ったのは、

大盾と『魔法の木の棒』を

豪快に振り回す重騎士ザード!


その隣では、

マリーが光速で次々と相手を

戦闘不能にしていく。


またレイスは、冥界から

「元冬の兵士」を召喚する。


城の中の構造、相手の弱点、

相手の言われたくない黒歴史まで

全て知っている兵たちの霊だ。

やり方が実にレイスらしい。

マリーいろんな意味で感心する。


レイスの召喚兵は確実に敵の足止めを図り、

そこへロドンが長剣を閃かせて

敵の首魁を一刀両断していく。


「ニノ! 精霊様!

 雑魚の相手に時間を取られるな!」


ロドンとザードが背中を合わせ、

押し寄せる巨兵の群れを力任せに

押し返しながら叫んだ!


「ここは俺たちに任せて先に行けぇッ!!」


「ロドン! ザード! 無茶するなよッ!!」


ニノは二人に視線の合図を送り、

コハル、秋華、照紅、炎夏、

シルエッタ、カゲロウを引き連れて、

打ち破られた城門の奥——

城の内部へと突入した。





城内に足を踏み入れた

ニノたちを待っていたのは、

複雑に入り組んだ氷結迷宮と、

影から躍り出る冬の暗殺忍者集団、

そして幾重にも張り巡らされた強力な

氷の封印結界だった。


「チッ、鬱陶しい罠やな!

 一気に焼き払ってやるわ!」


炎夏が灼熱の炎を拳に纏わせて前へ出ると、

シルエッタが

「炎夏様、サポートいたします♪」と

可憐に寄り添う。


カゲロウも炎夏とシルエッタの

援護に入る。


「ニノ殿!ここは拙者たち『夏の衆』

 に任せて先に行くでござる!」


ニノたちは頭を下げ、

暗殺部隊の死角を突いて

最上階への階段を

一気に駆け上がっていった!





たどり着いた広大な氷の謁見の間。


その中央、

氷の処刑台の上に据えられた玉座から、

一人の男が冷酷に立ち上がった。


冬の二魔皇が一人——

『絶対零層のイグニス』


「ククク……

 仲間を犠牲にしてここまでたどり着いたか。

 だが、無駄だ」


イグニスの両瞳が蒼白く輝き始める。

超チートスキル『全知の氷眼(ラプラスアイ)』の発動である!


「ふふ、見苦しい魔族ですわね」


秋華が優雅に扇を広げ、

紅葉の刃を舞わせる舞闘術を放つ!


照紅も

「ウチの調律術、受けてみんさいッ!」と

魂の波動を叩き込むが——!


「——次に右の扇を返し、

 三歩下がる。そして、

 お前は左へ回り込み……

 心の中で『当たれ』と祈る」


イグニスは攻撃が放たれる前に、

まるで未来の映像を巻き戻すかのように

最小限の動作で全てを回避。


それどころか、

二人が攻撃の体勢に入った瞬間の

隙に完璧なカウンターの氷結晶弾を打ち込み、

秋華と照紅を吹き飛ばした!


「きゃああっ!?」


「ぐああっ……!

 なんなんじゃアイツ!

 未来予知ってそんなに

 完璧にわかるんかいっ!」


「くそっ……!

 みんな、下がってろ!」

 コハル!とりあえず防御結界だ!」


「了解っしょ!」


傷だらけになりながらも、

ニノは立ち上がり、

コハルに魔力供給する。


「とりま、完璧に守れば負けないっしょ!☆」


魔力供給を受けたコハルの手から出た

温らかな春の光が円環を描き、

倒れた秋華や照紅、ニノを包み込むように

強固な防御壁を展開する。


しかし、

飛来する極寒の氷刃が、容赦なく

結界に衝撃を加える。


「(だめだ……

 防戦に回っても、結界が

 どこまで耐えれるかわからない。 

 どこかで勝負に出ないと…

 無心になるんだ……

 『思考を空っぽ』にするんだ……!)」


ニノが魔力供給を維持しながら

必死に雑念を捨てようとした瞬間——

イグニスは冷酷に嘲笑った。


「無駄だと言っているだろう?

 『空っぽにしよう』というその

 『意志』そのものが、私には可視化された

 思考の波として届いている。

 貴様のあがきなど、全てお見通しだ」


「くっ……ッ!?」


さらにイグニスが指を突き立てると、

絶対零度の冷気が空間を支配した。


「ここですね!!」


イグニスが叫ぶ。


その瞬間、ニノとコハルを結んでいた

魔力の供給空間が、パキンと音を立てて

凍りついて断ち切られる!


「あ……れ……? ニノからの魔力が

 ……届かない……!?」


コハルが青ざめた顔で胸を押さえる。

魔力供給が封じられ、

結界を維持するコハルは、

早くも限界を迎えつつあった。




未来の行動も、思考も、

無意識になろうとする足掻きすらも

読まれる絶対の絶望。


「終わりだ、精霊ども。

 貴様らの絆など、

 私の眼の前では無力——」


イグニスが完璧なフィニッシュの

一撃を放とうとした、次の瞬間であった。



——ドゴォォォォォォォンッ!!!!



背後の重厚な氷結晶の壁が、

まるで超大型ミサイルでも

打ち込まれたかのように

爆音とともに粉砕された!


「「「えっ!?」」」


吹雪と煙塵が舞い散る中、

重厚な鎧の戦士がドサリと踏み込んできた。


「ハハハハハハッ!!

 手こずっているようだなニノォォッ!!」


そこに立っていたのは、

第一関門の軍勢を一人で(?)

あっという間に全員なぎ倒し、

壁をぶち破って追いついてきた

重騎士ザードであった!


「ザ……ザード!?

 お前、先に行けって……

 もう突破してきたのか!?」


「ハハハ! 雑魚掃除など一瞬よ!

 ここは俺に任せろ!!!」


ザードは豪快に胸を叩くと、

盾の裏から手にした

「魔法の木の棒」をひっ掴んだ。


商売道具の「魔法の木の棒」に、

ザードが全身の筋肉を膨張させて

『神話級強化魔法』をどんどん注入する。

挿絵(By みてみん)

毎度のことながら本人はただ力を

込めているだけと思っているのだが、

一本の棒が太陽のごとき黄金と

漆黒の眩いオーラを放つ

「神の撲殺兵器」へと変貌を遂げた!


「(な……何という強化魔術!)」


イグニスは即座に『ラプラス・アイ』を発動し、

ザードの未来の行動を読み取ろうとした。


——しかし、


「ひ……っ!?」


イグニスの顔面から、

見たこともないほどの

冷や汗が吹き出した。


ガタガタと膝が震え、

蒼白かった顔が恐怖で歪む!


「な……何だこれは……ッ!?

 こんなことは……

 私の人生で初めてだ……ッ!!」


イグニスは目を見開き、

あまりの異常事態に叫び散らした!


「一切の動作の未来が見えぬ……!?

 こいつ……まさか何の作戦も構えもなく、

 『反射』だけで攻撃するというのか!?」


未来の行動が一切読めない!


「(それならば強制的に数刻先を見る。

 私がいない!?やられたのか!?

 いや、もう一度、何?

 今度は奴はまだ攻撃していない!?

 見るごとに未来が変わる…だと??)」


焦ったイグニスは、動作ではなく

ザードの脳内の『未来の考え』を読み取ろうと、

全神経を集中させて脳内思考の解析へダイブした!


しかし——

イグニスの脳内に直接響き渡ったのは、

地獄のような大音量の連呼であった。


『俺は最強! 俺は最強! 俺は最強!

 俺は最強! 俺は最強! 俺は最強ーーーッ!!!!』


「(『俺は最強』

 を脳裏で連呼しているだけ……だと……!?

 考えなど何一つない……! ただ己が最強だと

 叫びながら反射のタイミングで

 攻撃しようとしているのか!?

 そんなのミジンコと同じではないか!!)」


「ウオォォォォッ!

 俺は最強ぉぉぉッ!!」


思考ゼロ! 100%完全反射!

神様ですらわからないタイミグでの攻撃。

神話級強化を施された「魔法の木の棒」が、

そこそこの速度で振り下ろされる!

しかし、速度という概念も彼には関係ない…


——バゴォォォォォォンッッ!!!!


「ぐぎゃあああああああッ!!???」


イグニスの『全知の氷眼(ラプラスアイ)』が、

顔面ごと「魔法の木の棒」によって

木っ端微塵に粉砕された!


更に激しい衝撃波とともに

重厚な城の壁をブチ破り、

イグニスは遙か彼方の空へと吹っ飛んでいった!


煙を吐く「魔法の木の棒」をひょいと肩に担ぎ、

遥か彼方の空に消えた星を見上げながら、

ザードはニカッと歯を見せて笑った。


「今日もいいホームランだったぜ!!」


「ザード……あのな、

 マジでお前の体、どうなってんだよ!?」


ニノが苦笑いしながら立ち上がると、

絶対の未来予知が崩れ去ったことで

冷気の呪縛が解け、コハルや周囲の魔力の

奔流が勢いよく復活する!


その直後——要塞の下層から、

割れんばかりの天地を揺るがす

大歓声が響き渡った!


「ウォォォォォォォッ!!

 助かったぞーッ!!」


「炎夏様!

 三季連合軍万歳ッ!!」


下層の牢獄を制圧した炎夏が、

救出した仲間たちを従えてニカッと八重歯を見せ、

不敵に口端を上げた。


「……ふっ、

 どうやら下の方から歓声が上がってるな。

 炎夏様たちがすでに、下の牢獄の仲間たちを

 救出してくれていたみたいだ」


ニノは頼もしく微笑むと、

この最深部フロアに残されていた

最後の牢獄へ向き直り、力強く手をかざした。


「よし……最後だ!

 このフロアの仲間たちも、

 一気に救い出すぞ!!」


「「「おうっっ!!!!!」」」


最深部の牢獄が打ち砕かれ、

捕らわれていた全ての仲間たちが解き放たれる。


どっっっかぁぁぁぁぁん!!!!


またしても、激しい爆音とともに、

城が破壊される音が響き渡る!


ニノたちは

春の調律の結界に包まれて守られながら、

漆黒の監獄城が一瞬にして打ち砕かれ、

その跡地に黄金色のヒマワリの花園が

咲き誇っていく美しい光景を見つめていた。


次元の狭間の時と同じく、

炎夏が気に入らない冬の要塞を、

夏の花の代名詞である

「ヒマワリ」の花園へと完全に上書きし、

見事に制圧してみせたのだ。


暖かな風にそよぐ

大輪のヒマワリの群生を見渡し、

ニノは穏やかに呟いた。


「これで少しは見栄えが良くなったな」


第一の旗艦城『南氷監獄城ヴァルゼク』は、

万雷の大歓声と咲き誇るヒマワリの花々とともに

完全に崩壊したのだった。


ラプラスアイは、

考えれば考えるほど難しいのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。