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第75話 異世界の異次元から異世界へ(その2)


「「「おおお……ッ!!

 召喚に応えてくださった!

 異世界より『勇者様方』が

 降り立たれたぞぉぉぉッ!!」」」


視界一面を埋め尽くす、

数百人の人々による

怒涛の土下座と歓声。


刀を構えたまま固まるカゲロウ、

開いた口が塞がらないニノと照紅、

そして呆然と城門を見つめるエルザ。


あまりのギャップと思考の追いつかなさに、

4人は完全にフリーズしていた。


「……は?? ゆ、勇者……!?」


カゲロウの困惑の声が虚しく響く中、

土下座する群衆の先頭から、

一人の男が静かに立ち上がり、

ニノたちへとゆっくり歩み寄ってきた。


全身に重厚で美しい銀の甲冑を纏い、

腰に飾りの施された大剣を差した男——

騎士団長カイルである。


カイルはニノたちの前で足を止めると、

胸に右拳を当て、

凛とした所作で深々と頭を下げた。


「……異界より降臨されし勇者様方。

 不躾なお願いとは重々承知しておりますが……

 ぜひ、我が国の女王様に

 お会いいただきたいのです」


「じょ、女王様……!?」


ニノが戸惑いながら声を上げると、

重々しく鎧を鳴らしてカイルが道を開けた。


「ささ、こちらへ。案内いたします」


拒否する間もなく案内されるがままに、

ニノたちは城内へと足を踏み入れた。


足を進めるごとに、

4人の緊張は高まっていく。


重厚な石造りの廊下、

眩いばかりのシャンデリア、

そして洗練された装飾。


その通路の両脇には、

隙間なく整列した騎士たちが

ズラリと並んでいた。


ニノたちが一歩進むごとに、

両脇の騎士たちが次々とガチャリと

重い音を立てて片膝をつき、

最敬礼で4人を迎える。


「……すごいけぇ…本当に『勇者』として

 歓迎されているみたいじゃ……」


照紅が声をひそめて囁く。


「……油断しないでください。

 これだけの歓迎を受けていますが、

 騎士たちの表情にはどこか不自然さがあります……

 彼ら自身、何らかの術式で操られている

 可能性もあります。

 この歓迎そのものが罠という

 可能性も捨てきれません」


エルザが剣の柄にそっと手を置き、

元・冬の四天王としての冷徹な眼差しを

光らせながら低く返した。

カゲロウも無言で頷き、視線を鋭く巡らせる。


「だが、

 ここで暴れるのは悪手でござるな。

 まずは相手の懐に入り、

 状況を探るのが上策……」


ニノは静かに頷き、

仲間たちの背中に押されるようにして、

無言でカイルの後に続く。


やがて、廊下の最奥——

ひと際巨大で精巧な彫刻が

施された大扉の前へと到達した。


カイルが静かにその扉を押し開く。


「勇者様方をお連れいたしました。……

 女王の間へどうぞ」


促されるまま、

ニノを先頭に4人は広大な謁見の間へと

足を踏み入れた。


部屋の奥、一段高い王座にひとりの

少女が静かに座っていた。


ニノたちが歩み寄る姿を認めるや否や、

彼女はしとやかに王座を立ち、

優雅な動作で階段を下りてくる。


そしてニノたちの眼前まで歩みを進めると、

胸にそっと手を当て、深々と頭を垂れた。


その顔が、

大きな窓から差し込む陽の光に

照らし出された瞬間——。


「「「「……ッ!????」」」」


ニノ、エルザ、カゲロウ、そして照紅。

4人全員の息が止まり、

まるで時が停止したかのように

その場に凍りついた。


輝く太陽のような金色の髪。

春の息吹を宿したような温かな瞳。

そして、

全身から漂う圧倒的な生命と植物の脈動。


「(……ウソ……だろ……!?)」

ニノの瞳が限界まで見開かれる。


『春の精霊』——そして、

自らの絶対の相棒である

『春の調律師』の権能を司る真なる主。


「(……コハル……様……っ!?)」

エルザの胸に狂おしいほどの激痛が走る。


かつて同じパーティーで旅をし、

そして冬の軍勢の呪術によって

闇落ちしたとはいえ、自らの手で

刃を突き立ててしまった、

忘れもしないあの思念体の姿。


「(……コハル殿……!?

 なぜこのような場所に……!)」

カゲロウの手が、刀の柄の上で激しく震える。


共に笑い、

共に旅をしたかつての仲間の顔が、そこにあった。

何度全裸を見られたかわからない深い友情(?)



「(……コハル……! 渋谷の街で……

 一緒に遊んだ、あのコハルやけぇ!?)」

照紅の目頭が一気に熱くなる。


あの日、右も左も分からないまま、

思念体として東京に現れた彼女に

「コハル」と名付け、アイスを食べ、

笑顔を交わし合ったあの大切な友達。



感情を抑えきれなくなったニノは、

一歩前へ踏み出し、なりふり構わず叫んでいた。


「春の精霊様……

 いや、コハルだよね!?

 忘れちゃったのかよ!!

 コハル!! 俺だよ! ニノだよッ!!」


「……えっ……?」

挿絵(By みてみん)

目の前で叫ぶニノに対し、

少女は困惑の表情を浮かべ、

痛ましそうに小さな首を傾げる。


その瞬間、

両脇の騎士たちがガシャンッと一斉に

柄へ手をかけ、ニノを取り押さえようと動いた。


「無礼者ッ! 女王殿下に向かって——」


騎士たちがニノへ襲いかかろうとした寸前、

その間に影のように割り込んだのは

カゲロウであった。


カゲロウは素早くニノの肩を押し留め、

耳元で低く急ぎ足に囁く。


「ニノ殿、一旦落ち着かれよ。

 まったく情報がないゆえ……

 下手な行動は全て命取りになるでござる」


「カゲロウ……っ」


冷や汗を拭ったカゲロウは、

すぐさま女王と殺気立つ騎士たちに向かい、

手を開いて深々と一礼してみせた。


「……申し訳ござらん。

 拙者たち、何が何やら分からぬまま召喚され、

 未だこの世界に慣れておらぬのでござる。

 どうか、非礼をお許しくだされ」


その冷静で筋の通ったカゲロウの言葉に、

身構えていた騎士たちも一瞬顔を見合わせ、

殺気を収めた。


「「……それは……その通りだな。

 無理もない……」」


「「勝手に召喚したのは我らだしな。

 こちらも少し浅はかだったか。申し訳ない」」


と納得したように呟き、

静かに元の直立敬礼の姿勢へと戻っていく。


女王もまた、

申し訳なさそうに眉を下げ、

胸元で手をキュッと握りしめた。


「……そう、ですよね。

 突然の見知らぬ世界への大召喚……

 困惑されて当然です。

 一方的に巻き込んでしまい、

 大変申し訳なく思っております……」


女王は儚げな瞳をニノたちに向け、

痛切な声音で語り始めた。


「申し遅れました。

 私はこの国の女王、セフィリアと申します。

 本来であれば手厚く歓迎し、

 穏やかな時を過ごしていただきたいのですが……

 我が国、いいえ、この世界は今、

 滅びの淵にあります。

 北の果てに鎮座する『魔王』の手により、

 各地が冷酷に侵食されているのです」


セフィリアの口から語られる

魔王の残忍さと凶悪さ。

幾多の騎士団や英雄たちが挑むも、

圧倒的な力の前に誰一人として

生きて戻らなかったこと。


そして、あまりの強大さに、

古代の大召喚陣を使い『伝説の勇者』に

頼らざるを得なかったという惨状。


セフィリアは涙を浮かべ、

再び4人に向かって深く頭を垂れた。


「重ねてのお願いとなり、

 胸が痛むばかりですが……

 どうか勇者様方、魔王を倒し、

 我が国をお救いください……」


しとやかに頭を垂れる

「コハル」の姿を見つめながら、

ニノの横でカゲロウが低く息を吐き、

思考を巡らせる。


「(……魔王か。

 今は少しでも情報が必要……)」


「(倒す以前に、敵の正体を突き止めるべく……

 会いに行く価値はあるでござるな)」


ニノもカゲロウと視線を交わし、

溢れ出る疑問と固い決意を胸に秘めて、

静かに頷くのだった。



私が優秀なせいか(←?)

来年度の仕事の計画が半日で完了しました。

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