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俺じゃなく取り憑いたギャル霊が異世界で無双する件 〜俺はただの星脈調律師ですが、何か?~  作者: うみの はるまき


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7/12

王国と決戦ですが、何か?

――歴史に刻まれるレベルの「勘違いタコ殴り」を経て、

俺たちのパーティーに常夏衆の『忍者カゲロウ』が、

一時的に加わることとなった。


カゲロウの目的は、冬の精霊に幽閉された主である

『夏の精霊』を救うための手がかりを掴むこと。


そして俺たちの目的は、この国を汚染している冬の精霊に

加担する王族や近衛兵を成敗すること。


「王のいる『王の間』まで、敵のエンカウントを

最小限に抑えて案内するでござる!」というカゲロウの提案は、

初見ダンジョンに挑む俺たちにとって願ってもない有能な

ナビゲーションシステムだった。


「そういうことなら、ウチらとガッチリ共闘

 (チームアップ)で決まりっしょ☆」


コハルの軽い一言でパーティーが結成された俺たちは、

カゲロウの案内のもと、王の間へと続く大廊下を

ハイスピードで駆け抜けていた。


当然、行く手を阻むように城の警備兵たちが次々出現してくるが、

――そこからのカゲロウの速度は、文字通り『次元が違った』。


「ハッ、常夏衆の速度、とくと見よ!でござる!」


カゲロウが不敵に叫んだ瞬間、彼の身体が陽炎のようにブレた。

次の瞬間には、前方を固めていた重装歩兵三人の背後に

カゲロウがすでに出現している。


手元から放たれたのは、ただのクナイではない。

灼熱の魔力を纏わせた忍術『サウナ針』

目にも留まらぬ超高速の移動と、

物理法則を無視した忍術の同時入力コンボ


それが一切の遅延ラグなく完璧に噛み合い、

警備兵たちの武器と盾だけが、火花を散らして

一瞬で廊下に弾き飛ばされた。


「なっ……!? バカな、今いつすれ違った――」


兵士たちが状況を認識するより早く、カゲロウはすでに

次のターゲットへ向かって影のように跳躍している。

そのスピーディーかつチート級の無双ぶりに、

真後ろを走っていたエルザが瞳を大きく見開いた。


「……っ! カゲロウ殿、お見事です……!!」


エルザは走りながら、心からの感嘆の声を漏らした。

近衛騎士団という最高峰の武が集まる組織にいた

彼女だからこそ分かる。カゲロウのそれは、

単なる身体能力の高さではない。


これは極限まで練り上げられた固有の隠密システムと、

一寸の狂いもないコマンド入力を組み合わせた

「数々の戦局を乗り越えてきたレベル」のチート技なのだ。


「すさまじいスピード……! さらにそこに絡みつくような

 忍術を交えた戦い方、まさしく一騎当千の強者。

 カゲロウ殿の実力、見くびっておりました!」


「フッ、近衛の誇りにそう言っていただけると、

 今まで修行した甲斐があったというもの。

 全裸になるともっとスピードアップできるでござるがな!

 あ、そうなると、またタコ殴りにされるでござるか!?w」


・・・シーン・・・


「(しまった!渾身の自虐ネタをはずしたでござる!!)」


カゲロウは「全裸」をネタにした自虐ネタで盛大に滑った。

しかし今は戦闘中。これは滑ったのではなく、

そう、誰も聞いていなかったに違いない。


『・・・滑ったわね。クソ全裸』

 注1:クソ全裸=カゲロウ(命名:ルナ)


『次にその汚い言葉でお姉様に話しかけたら、

 ギャグじゃなくて、てめーの存在自体を世界から滑らせて(消して)

 やるからな。真面目に戦えクソ全裸!そしてお姉さまの盾となって〇ね!』


「(なにっ!?地獄少女が聞いていたでござるかっ!?)」

 注2:地獄少女=ルナ(命名:カゲロウ)


カゲロウはルナの超長距離監視システムに心底恐怖した。


彼なりに、重苦しい空気を和らげようと気を利かせたつもりなのだが、

今は緊迫した戦闘中。

結局のところ、圧倒的に空気が読めていない。

この致命的な「お調子者属性」さえなければ、

常夏衆の頂点に君臨していたかもしれない逸材なのだが……



しかし、カゲロウの活躍は、

エルザの闘志に完全に火をつけた。


「それっ! 私も遅れは取りません!」


エルザが勇敢に踏み込み、曇りのない美しい剣筋で、

カゲロウが体勢を崩した敵の装甲を完璧な峰打ちで叩き割る。

実力者同士、言葉を交わさずともお互いのスキルを認め合い、

攻略スピードはさらに加速していく――。


「そちらもな、エルザ殿。

 曇りのない美しい剣筋、さすがでござる!」


だが、王の間の手前の大廊下。

その中央で、これまでとは次元の違う重圧ボスオーラを放つ

魔導装甲の精鋭重騎士――が立ち塞がった。

さらにその背後には、今回の裏切りを先導した近衛兵の幹部たちが、

冷酷な笑みを浮かべて控えている。


「エルザか。見習いの分際で、

 世界の『新時代』に逆らうとは愚かな。

 ……おい!その侵入者どもを成敗しろ!」


幹部の命令を受け、

魔導装甲重騎士がずしりと一歩前に出る。


「我が纏うは『完全魔法防御装甲』。

 あらゆる魔導、属性魔法、精霊の力、紫外線をも100%カットし、

 虚無へと還す絶対の盾。

 貴様らの小細工など通用せぬ。

 一歩たりともここから先は通さん!!」


魔導装甲重騎士の威圧的なセリフを聞き、

カゲロウが俺の耳元で囁く。


「(に、ニノ殿、これはマズいでござる!

 あ奴の防具は歴史のデータベースにもある伝説の魔導殺し!

 いかにコハル殿の魔力が規格外であろうとも、

 「魔法無効」で弾かれれば一巻の終わり!

 ここは拙者がおとりとなり、持久戦に持ち込んで

 装甲のエネルギー切れを狙うしか――)」


「えー、マジ固そうでウケる!

 とりま試せばよくね?☆

 ――ニノ、チャージよろしく!」


「おう、好きなだけ持っていけ!!」


コハルが俺の腕に抱きつく。俺が大地(星脈)から吸い上げた

純粋な魔力エネルギーが、コハルの体へと給電テザリングされた。


「ウチらの道を塞ぐとか、

 絶対!!無理っしょーーー!!☆」


ドバガァァァァァァンッッッ!!!!!


コハルの手から、

世界の法則を書き換えるような純白の閃光が放たれた。




「……な、に……?」




魔導装甲重騎士は、絶叫することすらできなかった。




彼の纏う『絶対魔法防御装甲』は発動すらしていなかった。

防御システムが魔法を無効化するプロトコルを走らせる以前の問題。




そもそも、それが「魔法」なのか「何なのか」を

認識することすらできない、



完全な未知のナニカ。




世界の全ての概念が通用しない絶対的な領域の力に直撃し、

無敵を誇るはずだった装甲は、何が起きたのか理解できないまま、

一瞬で木っ端微塵に粉々に砕け散った。


「ギャァァァーーー!? 装甲がぁぁぁ!!」


ワンテンポ遅れて爆風に吹き飛ばされ、

防具をすべて失って全裸になった魔導装甲重騎士が、

気絶し廊下の床を無様に転がる。


その瞬間・・・

『オイッ、コラッ!!!またお約束の全裸かよ!?

 この城は露出狂のオフ会会場かっ!?

 どいつもこいつもお姉様の目を汚しやがって

 クソ虫以下のミジンコ野郎!!

 〇ね!! タイタンフットォォォ!!!』


ドォォォォォンッッ!!!


空間の壁を突き破り、

城下町側から飛んできた半透明の巨大な

「光のタイタンフット」が、

全裸で横たわる魔導装甲重騎士に無慈悲に降り注ぎ、

彼を床ごとスタンプ(踏みつけ)した。


「ぶふぉっ!?」


という情けない声を残し、床にめり込んで

ピクピクと痙攣する魔導装甲重騎士の中の人。


「ふっ、コハル殿

 ……な、な、なかなか、や、や、やるではないか……

 いやいや!!もう本音で話すでござる!!

 マジでござるか!?強すぎるやん!!でござる!!

 魔導装甲重騎士がっ木っ端みじん!?

 魔導装甲重騎士がっ木っ端ミジンッ!?」


カゲロウがペルソナをかなぐり捨てて驚く。

忍者の体幹でも腰を抜かす寸前である。


「エヘヘ、また信者が増えたっしょ☆」


『(……ねえ、ニノ虫。

 注3:ニノ虫=ニノ前リョウタ(命名:ルナ)

 ちょっと聞きたいんだけど

 ……コハル様って、一体何者よ……!?)』


脳内回線から、コハルの規格外ぶりに本気で引いている

ルナのまともな質問が飛んできた。

(俺が一番知りたいよ)

と心の中で返事を返しておく。


そんな中、魔導装甲重騎士を一撃で大破させられた

近衛兵の幹部たちは、一様に腰を抜かしてガタガタと

震えていた。


「ば、化け物め……!

 だが、エルザ! お前たちがいくら強くとも、

 城内の近衛兵全員を敵に回して生き残れると思うな!

 出会え! 侵入者を包囲しろ!」


幹部が必死に叫び、廊下の左右から無数の足音が響く。

絶体絶命――と思われた、その時だった。


「そこまでだ、裏切り者の幹部ども!!」


大廊下の四方から突入してきたのは、

敵ではなく、剣を抜いた大量の

『エルザと同じ志を持つ正義の近衛兵たち』だった。


彼らは侵入者である俺たちではなく、

自分たちの上官へ向けて一斉に刃を突きつけたのだ。


「な、何ごとだ!? なぜ貴様らが我らに剣を向ける!?」


狼狽する上層部に対し、突入してきた一般兵の隊長が、

怒りに震える手で一枚の羊皮紙を叩きつけた。


「往生際が悪いぞ! 貴様らが冬の精霊側と交わし、

 国民を欺いていた『売国契約書』のデータ、

 すでに城下町中にばらまかれ、国民全員が知っている!」


「な、なんだと……っ!? あの隠しログがなぜ……!」


狼狽する上層部を横目に、

俺はその羊皮紙のログを盗み見て――

あまりの胸糞悪さに吐き気がした。


それは、ただの政治的な裏切りなんて

生ぬるいものではなかった。


要するに、こういうことだ。

冬の精霊側から王族へ、こんな『悪魔の裏取引』

が持ちかけられていたのだ。


【間もなく、この世界を支えている

 防衛システム『陽だまりの残響』を

 完全崩壊させ、貴様らの王国を支配する。

 ただし、我々に協力するのであれば、

 お前たち王族の身の安全と、

 一族の繁栄だけは永久に保障してやる】と。


自分たちだけがぬくぬくと生き残るという

最高の利益(保身)を約束された王族どもは、

「協力の証」として、とんでもない代償を冬の精霊に貢いでいた。

生贄として『さらった子供たち』や『国民から盗んだ魔力』を

すべて差し出していたのだ。


つまりこいつらは、自分たち一族の

安全パイを手に入れるためだけに、

国と国民の命をまるごと冬の精霊側に

売り飛ばしていたのである。


ドォォォォォォォン!!!!!


その時、城の外――はるか下の城下町から、

地鳴りのような凄まじい怒号と爆発音が響いてきた。

窓の外を見ると、松明を持った数万人の領民たちが

城門を打ち破り、怒濤の勢いで城へと押し寄せてくるのが見えた。

完全なる大炎上。

王族たちの血も涙もない売国行為を知った国民による、

大規模なクーデターの勃発だった。


「フッ、常夏衆のハッキング能力と隠密の

 ネットワークをナメてもらっては困るでござる。

 潜入時に王族の隠し金庫で見つけた最悪の裏証拠、

 すべて街の掲示板にアップデートし、

 一斉送信しておいたでござるよ」


カゲロウが不敵にニヤリと笑い、

俺たちに向かってビシッと「グーサイン」を決めた。

有能すぎる!

お前が一番の特大レールガンを裏でぶち込んでいたのか!


「あれ? エルザ? なぜここに?」


上層部を拘束した一般兵の中にいた顔見知りの同僚が、

エルザに気づいて目を丸くする。


「皆さんも、なぜ……。あぁ、よかった……!

 上層部の裏切りに気づいていたのは、

 私だけではなかったのですね……!」


エルザの瞳に、安堵の涙がじわりと浮かぶ。

「もうすでにややこしいことになっておるわい!」

とパンクしかけていた彼女だったが、

正義のシステムが正常に稼働し、

国民が立ち上がったことに救われたようだ。


しかし、感動的な同期シンクロも束の間、

大廊下の最奥――『王の間』の巨大な扉が、

内側から不気味に赤、青、緑、黄の光を放って激しく振動を始めた。


「ハッハッハ! モブ兵士や家畜(領民)どもが

 集まってクーデターを起こしたところで、

 我ら四兄弟のチート能力の前には全員が灰と化すのみよ!」


バリバリと空間が凍りつき、

扉を内側から爆破して姿を現したのは、

それぞれ火、水、風、土の絶対属性を操る、

冬の精霊との契約を交わした張本人、

王の息子である四兄弟だった。


一般兵や押し寄せる国民たちがその圧倒的な「魔圧」に怯む中、

俺たちはついに、この城の最高戦力と対峙することになるのだった。

いろいろとアイデアが浮かんできますが、

大半は「クソ全裸と地獄少女」のやりとりです。

本当にありがとうございます。

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