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時空石を求めて(その1)


ここは渋谷。


若者と熱気がひしめくスクランブル交差点を抜け、

通りを二本挟んだ、若干騒がしいマンション街。


広島の玩秋組総本家から移動してきたばかりの、

二ノ、照紅しょうく紅葉もみじの3人は、

ニノがかつて暮らしていたアパートの

一室へとやってきていた。


埃の被った部屋に入り、

ニノは真っ先に洗面所のカガミと、

部屋の隅にある『パスワード1234』の

Wi-Fiルーターへ目を向けた。


コハルが幽霊としてニノに取り憑き、

あの夜、推しのゲリラ配信を見て叫んでいた、

あの思い出の場所だ。


……だが、


「……やっぱり、ダメか」


部屋の空間を研ぎ澄まされた魔力視線でスキャンしてみたが、

あの夜、俺とコハルを真っ逆さまに呑み込んだ

『異世界への青い光の穴』は完全に塞がっていた。


「……そりゃそうじゃろ。

 一回バグで開いた穴が、

 何ヶ月も開きっぱなしなわけがなかろうが」


煙管キセルをふぅーっと吹き出しながら、

照紅が冷ややかに言い放つ。


「ですね……。

 一時的な接続エラーはすでに自動修復されてる。

 ここから異世界へログインし直すのは不可能かと……」


紅葉は俺に気を遣ってか、言いにくそうにしているが、

大丈夫。俺も同意見だ。



部屋の中にコハルが使っていた

スマホそのものは残っていなかったが、

あの夜、衝撃で飛び散ったのであろう

ストラップやアクセサリー類が、

床のあちこちに散乱していた。


「このアクセサリー類どうします?」


紅葉が床からジャラジャラとした

アクセサリーの束を持ち上げる。


「とりあえず全部秋丸に見せー。

 一応鑑定じゃ」


照紅の指示で、

紅葉がすぐに広島の総本家にいる秋丸へテレビ電話を繋いだ。


画面が切り替わり、ジャムがベッタリ塗りたくられた床を

半泣きで拭き掃除していた秋丸の顔が映し出される。



『あ、姐さん!?なんの用ですか!?

  今、手が離せないんですがね!!』



秋丸が反抗的に訴えかけたその時、

紅葉がアクセサリーの束の中から一つ、

不自然な気配を放つ小さなお守りを手にとった。


「あれ? このお守り……えっ!?

 これって、どこの国の文字ですか!?

 もしかして……」


「見してみい……!

 ほう!これはゲートランドの文字じゃけぇ!!」


照紅の目が一気にギラリと光る。

コハルが現世のどこかで手に入れた、

ゲートランドの文字が刻まれた本物のお守り。


「秋丸っ!

 ゲートランドの文字のお守りが見つかったけぇ!

 今すぐ渋谷に来いっ!」


『えっ!? 姐さん!?

 今からですかっ!?それは………』



ツーツーツー……。



秋丸の悲鳴を途中でぶち切り、

照紅は迷わず通話を終了した。


「とにかくそのゲートランドの文字で書かれたお守りは、

 かなりの重要な手がかりじゃけえ!!!!」







それから時間を置き、

大急ぎで駆けつけてきた秋丸がようやく俺たちと合流した。


開口一番、照紅の雷が落ちる。


「早う来いというとるのに、

 夜行バスで来るアホがおるか!?」


「いや、組のみんなが

 『駅すぱーと で調べるとバスの方が18分早い』

 言いよるからでして……」


俺が悪いか?と文句を言いたげな秋丸。


しかし……


ネオンや高層ビルの街頭モニターが

眩しく揺れる、夜の渋谷。


すれ違う誰もが思わず振り返るほどの端正な顔立ちに、

仕立てのいい黒スーツをビシッと着こなした秋丸が、

ポケットに片手を突っ込んだまま俺たちに振り返る。


夜行バスで揺られてきたとは

思えないほど完璧なシルエットと圧倒的なオーラ。


あまりにも渋谷の街並みに馴染みすぎていて、

通り過ぎる若者や女性たちの視線を独り占めにしている。


そんな極上のイケメンが、静かに唇を開いた。


「姐さん方、ニノ兄さん、

 まずは俺の馴染みの店に行きましょう。

 何か手がかりがあるかもしれません」


立ち振る舞いからセリフの響きまで、

文句なしに最高にかっこいい!!









「……で、中華料理屋かいっ!!」


照紅が湯気を立てるギョウザの看板を見上げ、

ジト目でツッコミを入れる。


「普通は、ムードがあるバーだとか

 思うじゃないですか!!」


紅葉もすかさず呆れ顔で乗っかった。


「静かなバーと正反対や。

 めっちゃ騒がしいけぇ……

 秋丸!!お前、そういう所やぞ!!」


「はぁ?……はい??

 (姐さん、中華料理嫌いやったっけ??)」


「そういう所やぞ」という照紅の

『お前がそれだけのイケメンでありながら

壊滅的に女にモテん理由はそれじゃ!』という

姉御肌な説教の意図は、鈍感な秋丸には

さっぱり通じていなかった。



だが、

店に入りチャーハンとギョーザを

注文すると同時に、秋丸が店主へ

お守りを見せながら手際よく聞き込みを開始。


街の裏事情に通じた店主の口から、

即座に有力な情報を引き出してみせたのだった。


「(『……中華料理屋かいっ!!』とは言ったが、

 ちゃっかり情報はGETしとる……。秋丸はホンマに

 有能なんかアホなんかわからん奴じゃ……)」


湯気を立てるチャーハンとギョウザを前に、

照紅と紅葉は全く同じ呆れ顔で、

同時に心の中で呟いていた。


「……なるほどな。

 渋谷の裏通りにある

 『あやしくない屋』という店か」


なんちゅう名前やねん!

と、つっこみたくなる怪しい店だ。


秋丸の謎の顔の広さと有能(?)ぶりが噛み合い、

俺たちはそのまま渋谷の裏通りにひっそりと佇む

非常に怪しい『あやしくない屋』へと直行した!


「……夜分すみませーん。

 ちょっといいですかぁ……?」


ドアノブに手をかけ、

ごく普通に入店しようとしたニノと紅葉、秋丸を

豪快に追い抜き、照紅だけが一気に店内に雪崩れ込んだ!


「突入じゃぁぁぁッ!!」


照紅が高下駄でドアを蹴り破り、

店内へ強行突入!


ドガァァァァンッ!!


「な、何だお前たちは!?

 一元さんお断りだぞ、さっさと帰り——」


言い終わるより早く、

照紅のキセルがショーケースを粉砕する!


ガッシャーーーコンッ!!


「な、何するんですかっ!?

 け、警察に連絡だ!!!」


だが、そのごく当たり前すぎる至極まっとうな一言が、

(なぜか)照紅の理不尽な怒りにさらに火をつけた!


「だれに向かって

 口きいとんじゃあぁぁぁッ!!」


ゴッッッガッッシャアァァァンッッ!!!


キセルから放たれた衝撃波と高下駄の一蹴りが合わさり、

頑丈な木製のカウンターが真ん中で爆発するように

真っ二つに砕け散る!


飛び散る木屑とショーケースの強化ガラスの破片が

店内に激しく降り注いだ!


「ダメだ! 話が通じんタイプの人だ!

 とりあえず謝れ!!」


店長らしき人物が叫ぶ。


「完全に俺ら悪くないのに謝るんですか!?」


店員の言うことは完全に正しい。が、


「なんやけぇ!!!???次はお前ら……!!!!」


「すみませんでしたぁぁぁ!!」


照紅がセリフを言い終わるを待たずに

本能の叫びに従って額を床に擦り付け、

爆速で土下座する店主と店員。


暴風のように暴れ回る照紅を横目に、

俺は散らかった瓦礫に困惑しつつ、

手に持ったお守りを店主に見せながら

静かに問いかけた。


「……えっと、お騒がせしてすみません。

 ちょっと教えてほしいんですが、

 このお守りをどこで手に入れたんですか?」


「えっ??? どこだっけ?」


と、首をひねるとぼけた店主に、

すかさず隣の店員が声をひそめて囁く。


「て、店長。あそこの

 100円ショップやなかったですか?」



ガッシャーーーコンッ!!



陳列棚が3つまとめて粉々になり、

破片が飛び散る。


陳列棚に飾られていた怪しげな骨董品や、

効能の分からない謎の薬瓶、

そして異世界のガラクタと思しき怪品たちが、

床へと派手に散らばった。


照紅はその中の木刀を拾うと、

ブンブン振り回しながら迫る。


「……どこの100円ショップや?」


照紅がギラリと睨みつけると、

二人はいよいよ観念したように

ガタガタと震えだした。


「お前ら「青く光る石」も知っとるじゃろ?

 どこから異世界の品を仕入れてるんや!?」


「わ、わかりました! 言います!

  ……実はある日、店の前で『青い石』を拾いまして。

 早速宝石店に持ち込んだんですが

 『ただの奇妙な石で宝石ではない』と言われまして…」


「ふむ、それで?」


「悔しくて店に戻って適当にいじっていたら、

 急に石が発光し出したんです!

 そしたら……その光があたった壁の部分が、

 急に異世界へと繋がっちまいまして!」


「光が当たった場所が穴になるかぁ……

 その通りや。嘘はついとらんな」


「はい! 俺らはそれから向こうの

 闇の商業ルートの人たちと顔見知りになって、

 異世界の珍しい物をこちらの富豪達に捌いて

 金を稼いでおりました」


「で、向こうで売りに出ていた

 『青い石』をもう一つ購入したんで、

 青い石は計2個あったことになります」


「2個あるなら1個よこせ!!」


そう言いながら、照紅が店内を見回すと、

店員が申し訳なさそうに縮こまった。


「……1つは俺がどこかで落としたみたいで…」


店員が店長に申し訳なさそうに言う。

店長は「もういいよ」というジェスチャーを取る。


「で、もう1つは1億円の値がついたんで、

 昨日富豪に売りました 」


「「「えっ!?」」」


まさかのの想定外の事態に

4人は固まるのであった。

4日目です。果たしていけるか!?

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