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俺じゃなく取り憑いたギャル霊が異世界で無双する件 〜俺はただのエネルギータンクですが、何か?~  作者: うみの はるまき


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4/7

第4話:光の女神ですが、何か?

こうして俺たちは、無事に?入国を果たしたのだが、

ゲートランド城下町を行き交う人々からの視線が、

痛いほど俺たちに突き刺さる。


「ニノ殿、やはりそのパジャマ姿では少々怪しまれ、目立つようです。

 まずはこの世界に馴染むため、衣服を整えましょう」


エルザの至極まっとうな提案で衣料店へと駆け込み、

俺用に異世界の簡易な普段服と、初心者用の軽いチェインメイル、

護身用の短剣を購入し、装備してみる。

か、かっこいい・・・まさに異世界に来たぁ!って感じ。

かなり感動を覚える。

いつでもどこでも寝られる男、ついに冒険者(風)へクラスチェンジ完了だ。


あとはコハル用に用意された、ワンピースみたいな素朴な麻の服を彼女に渡した、

その瞬間だった。


「なにこれ!? ダサすぎ!!」


コハルは両方の頬をぷくーっと風船のように膨らませ、

素朴な茶色の服を、俺の胸元どすっと押し返してきた。


「おいコハル! 郷に入っては郷に従え!

 その金髪ミニスカにピンクのカラコンでは120%不審者なんだよ!」


「ムリムリ、ウチのポリシーが死んじゃう!

 それ着るくらいなら不審者でいいわ☆」


結局、コハルは現世の渋谷スタイルを一切崩さず、

俺だけが真面目に異世界の軽装備に身を包んだ状態で、

再び城下町へと繰り出すことになった。

エルザも「やれやれ・・・」といった様子。


・・・俺だけやと、あかんやん。


結局、さっきより二度見される確率上がって目立ってるじゃねえか。

入国前より何倍も不審で不気味な凹凸コンビが爆誕してしまった。


・・・俺の感動を返してほしい。


そんな俺の虚しいツッコミを置き去りにして、

エルザの案内で行きつけの居酒屋へと向かい、

賑やかな大通りを歩いていた、その道中だった。


――ふと、大通りの喧騒の裏側、薄暗い路地裏の奥を見た瞬間。


脳内のアラート(警告灯)が激しく明滅した。

耳の奥で、サーバーが過負荷で悲鳴を上げているような、

キィィンという高周波の電子ノイズが響く。

地面を通じて足の裏からゾクゾクと這い上がってくる、

まるで『データがそこだけ異常に破損している』かのような、

ねじ切れた不快感。


大地の混乱、

何かが騒がしく歪んでいるかのような、強烈に嫌な波長だ。


「……っ、なんだ……? 今の、すげえ気持ち悪いノイズは……」


「どしたの、ニノ? ケモ耳娘に目がバグった?」

「え!?ケモ耳!?どこっ?どこっ?」


えっと、コホン。


「ケモ耳違ウ。……あの薄暗い路地裏のオク、

 なんか感じマス。嫌なカンジデス。」

「ナンデ片言ヨ?」


俺は自分の足元を見つめる。

ひいおばあちゃん譲りの『星脈調律師』の血が告げている?

不気味な違和感に眉をひそめていると、

エルザが「どうされました?」と振り返る。


俺は首を振って「いや、なんでもない」と、

そのエラーログを一時的に保留フォルダへと移した。



案内されたのは、

多くの冒険者や兵士で賑わう活気ある居酒屋だった。

厨房で作られた見たこともない異世界料理の数々が、

テーブルの上へと次々とデプロイ(配膳)されていく。

大ぶりのオーク肉の丸焼きや、

光るキノコのハーブ煮込み――。


「ウワァ!

 何これ、お肉の串焼き? マジ、ジューシーで超美味いんだけど!

 こっちのスープもスパイス効いててマジ神〜☆」


コハルは「マジ飯テロ〜☆」と大はしゃぎで、

デプロイされたごちそうを片っ端から胃袋へとインプット(爆食)していった。

ポカポカの生身の体になったことで、

完全に食欲のシステムも正常に稼働しているらしい。


そんなコハルの豪快な食べっぷりを感心したように見つめていたエルザが、

ふと真面目な顔でこちらに問いかけてきた。


「……失礼ですが、お二人はどちらの国から来られたのですか?」

「渋谷」


俺が言うより早く、コハルが骨付き肉を咥えたまま即答した。


「シ、シブヤ……?」


エルザは聞いたこともないその音節を反芻し、

深く腕を組んで納得の表情を浮かべた。


「世の中は広い。私のまだ知らぬ神秘の国が、海の向こうには存在するのですね。

 あの圧倒的なお力、衣服の奇抜さ、全てに合点がいきました」


(いや、ただの日本の若者の街なんだけど……

 世界観のスケール勝手に広げないでくれないかな……)


俺がツッコミを保留した、その時だった。

どたばたと居酒屋の扉が荒々しく開き、

一人の兵士が顔を真っ青にして飛び込んできた。


「大変だ! また原因不明の『神隠し』が発生したぞ!

 今度はエルフの子供たちが数人、

 一瞬にして煙のように姿を消したそうだ!」


その言葉が店内に響き渡った瞬間、居酒屋の活気が一気に凍りついた。


「そんな、また子供たちが……!」

 エルザが悲痛な顔で拳を握りしめる。


だが、その一報を聞いた瞬間、

俺の脳裏に、この居酒屋へ来る道中で通り過ぎた、

あの薄暗い路地裏の違和感が鮮烈に蘇った。


――耳の奥で響いていた、サーバーが過負荷で悲鳴を上げているような

高周波の電子ノイズ。地面を通じて足の裏からゾクゾクと這い上がってきた、

大地の混乱、何かが騒がしくねじ切れているかのような、あの嫌な波長。


「ニノ殿!どうなされました!?」


急に冷や汗でびっしょりとなった俺の顔を見てエルザが驚く。


「なんだか……呼んでるんだよ。あの路地裏が」


俺が立ち上がると、コハルは食べる手をピタッと止め、

ピンクのカラコンをキラリと輝かせた。


「行くっしょ、ニノ!」


居酒屋を飛び出し、俺の直感が示すままに薄暗い路地裏の奥へと走る。

行き止まりには、古びたレンガ倉庫が二棟、左右に並んで佇んでいた。

足の裏から伝わる大地の混乱は、完全にこのエリアを指し示している。


「あっちの倉庫か……? いや、こっちか?」

俺が二つの倉庫を見比べてログを解析しようとした、


その瞬間。


「よーーーしっ! ツヨツヨビーム!!☆」

「ちょっと待てコハル、話を聞――」


ズドォォォォォォォォォンッ!!!!!


俺の心臓から一瞬で魔力が高出力テザリングされ、

コハルの指先から放たれた極太の光線が、

左側の、完全に無関係な空き倉庫を、

正面扉ごと木っ端みじんに大爆破した。


幸いにも中には誰もいなかったようで、

ただの木屑とレンガが派手に夜空を舞う。


「げほっ、ごほっ……! お前いきなり何やってんだよ!!

 まだ、どっちの倉庫かわからないんだぞ!!」

「え? てか、どっちでもよくね?」

「よくねえよ!! 勘で無関係な建物を爆破する奴があるか!!」


俺のツッコミが立ち込める煙の中に木霊する。

だがその時、爆破された空き倉庫のすぐ隣にある、

本物のレンガ倉庫の扉が勢いよく開き、

中から明らかに『北斗の〇』のやられ役のような風貌の手下たちが、

武器を片手に血相を変えて飛び出してきた。


「ヒャッハー! なんだ今の爆発音は!? 敵襲かぁっ!?」


あ、そっちの倉庫だったんだ。……


っていうか、

悪党の手下達は、爆発にビビってセルフでアジトから釣られて出てきた。


「あそこだ! あの不審な三人組がアジトを狙いやがったぞ!」

モヒカンたちの叫び声に、俺はすかさずコハルとエルザへ指示を出す。

「ほら見ろ、あっちが本命だ! 突入するぞ!」

「はいっ! 貴様らの悪行、ここで断罪する!」


エルザが鋭く剣を抜き、本物の倉庫の中へと猛然と駆け込んだ。


薄暗い倉庫の奥には、檻の中に閉じ込められた、

行方不明のエルフの子供たちの姿があった。

その前で、肥え太った悪徳商人がガタガタと震えている。


「ひ、ひぃぃっ! な、何者だ貴様らはぁっ!

 せっかく今回の上物も、

 あのお方にお喜びいただけるはずだったというのに……!

 や、やれ! 我が商会が誇る最強の用心棒、

 剣聖の弟子をなめるなよ!」


商人が悲鳴を上げると、

その背後から無数の傷を持つ大男――

ベテランの用心棒がギラリと光る大剣を構えて前に出た。


「フッ、お嬢ちゃん。俺をただの用心棒と思うなよ?

 俺はかつて、西の果ての『断絶の渓谷』で狂暴なサラマンダーを

 三日三晩に渡って追い詰め、その首を切り落とした男だ。

 さらに、北の氷結戦場では氷狼の群れを愛刀の一振りだけで

 三十頭を瞬時に細切れにし、東の砂漠では巨大ワームの口内に

 自ら飛び込み、内側から切り裂いて生還した!

 人は俺を『不滅の銀狼』と呼び、

 時には『マルムシ商店街』に――」


「うるさい、悪党が語るな!」


「くっ……!?」


エルザが敢然と打ちかかる。だが、大男の容赦のない

重い一撃がエルザの剣を弾いた。


凄まじい風圧と衝撃。

近衛騎士候補生として人並み外れた実力を持つはずのエルザが、

大男のたった一振りの前に大きく後ずさりし、その場に膝をつく。

それほどまでに、この用心棒の戦闘力は本物だった。


前置きが長い用心棒。誰もまともに聞いちゃいない、だが!

エルザの一撃前の『時にはマルムシ商店街に』の続きだけ非常に気になる!


「ハハハ! 口ほどにもない!

 おい、そこの金髪の小娘。お前が隣の倉庫を消し飛ばした術士だな?

 だが俺の間合いに入ったのが運の尽きだ。

 我が剣聖直伝の、魂ごと塵に還すS級最強必殺技の錆びにしてくれるわぁぁぁ!」


用心棒の大剣が、ドス黒い魔力をまとって膨れ上がる。


「危ない、コハル様逃げて――!」


エルザの悲鳴が響く中、男のS級最強必殺技が、

無防備に突っ立っているコハルの脳天めがけて一閃された。

大気を引き裂く暗黒の衝撃波がコハルを完全に飲み込み、

倉庫の床が爆音とともに激しく弾け飛ぶ。


「ハハハハ! 見たか! これが不滅の銀――」


「いったーーーーーい!!! 何すんのよ、マジで!!」


「へっ……!?!?」


煙の中から現れたのは、髪の毛一筋すら傷ついていないコハルだった。

ただ、ちょっと頭を叩かれたかのように、

両手で頭を押さえてぷくーっと頬を膨らませて涙目になっている。


「ウチの超お気に入りのヘアピン傷ついたらどーすんの!?

 これ渋谷で買ったガチお気に入りなんだけど!

 マジありえない、お返しだし!」


コハルが怒りに任せて、両手を腰の後ろへと引くお馴染みの構えをとった。


「おいコハル待て! ……いや、やれ!!」


俺がコハルの背中にそっと手を添え、

2人の正義感が同期テザリングされた瞬間、

怒りの最大出力パッチが適用される。


「波ぁ、動ぉ〜〜……」

「ひ、ひゃいっ!? い、いや俺の話はまだ『西の渓谷の裏話』が――あと

 『プリプリ陶芸の森』での――」


「――けんっっっ!!!☆」


ドゴォォォォォォォォォンッ!!!!!


純白の戦略兵器レールガンが倉庫の奥へと炸裂した。

まばゆい閃光が収まった後、そこに残されていたのは、

檻ごと鍵だけが綺麗に消滅して、ぽかんと座り込んでいる子供たちと――

背後のレンガ壁が、波動砲の凄まじい熱線によって、

綺麗にまん丸にくり抜かれて夜空が透けている、

シュールな光景だった。


用心棒と悪徳商人にいたっては、あまりの恐怖と衝撃の風圧で床に転がって

ガタガタと震え、完全に精神データがデリートされていた。


「みんな、怪我はない!?」

エルザが急いで檻のあった場所へ駆け寄り、怯える子供たちを抱きしめる。


その時だった。

「エルザ殿! 先ほどの大爆発はいったい――って、な、なんだこれはぁっ!?」


さきほどの爆発音を聞きつけ、

城門からここまで猛ダッシュで追ってきたあの二人の門番たちが、

息を切らせて倉庫に飛び込んできたのだ。

そして彼らが目にしたのは、丸く美しくくり抜かれた壁、

気絶した悪徳商人、救出された子供たちの前で、頭をなでながら

「よしよし、もう大丈夫っしょ☆」

とへらへら笑っている、直視できない金色の魔力(余熱)

をまとったコハルの姿だった。


さらに、門番の一人が、コハルが最初に間違えて木っ端みじんに破壊した、

隣の空き倉庫の焼け跡に目を留めた瞬間、その顔色を完全に変えた。


「な……これは、他国で厳重に禁止されている禁忌の『麻薬ポーション』の

密造設備ではないか!? ただの空き倉庫だと思っていた場所が、

悪の温床だったとは……!」


「あ、あのくり抜かれた本拠地だけでなく、

隣の隠し工場まで一瞬で見抜き、同時に粉砕されるとは……!

やはり間違いない、悪を一瞬で見透かし融かす、光の女神様だぁぁぁ!」


・・・話術スキルを要する展開が目の前で繰り広げられる。

つっこみたい気持ちはあるが、そのままにしておこう。

大地もそう言っているように感じる。


門番たちはガチの涙を流し、

その場に崩れ落ちるように両膝をつき、コハルを崇拝し始めた。

それを見たエルフの子供たちも、「めがみさま……?」とおずおずと

コハルを見上げ、小さな手を合わせ始める。


そんな中、俺は床でピクピクしているあの自称・銀狼の大男を

見下ろしながら、顎に手を当てていた。


「(結果オーライにもほどがあるだろ……。っていうか、

御託が長い戦士だったな。エルザが遮った『時にはマルムシ商店街……』の続きだけは、

地味にめちゃくちゃ気になるな……。あと最後の『プリプリ陶芸の森』)」


そんな俺のどうでもいい脳内エラーログを置き去りにして、

コハルは門番や子供たちに囲まれながら、

嬉しそうに両手でピースサインを作っていた。


「えへへ、超悪くない気分だねぇ。

 もっと拝んでもいいんだよぉ?☆」


「お、おぉ……光の女神様……!」


ガチの涙目で五体投地を続ける門番たちと、

完全に調子に乗っているギャル神様。


……あーあ、もう完全に既成事実化しちゃったよ。


「ほらな、知らんぞ。エルザ、

 お前が最初に勝手に女神様ってことにしたから・・・

 俺はもう何があってもフォローせんからな!」

「そんな!ニノ殿!!」


エルザの叫びを置き去りにして、

倉庫の中にはぽかぽかとした陽だまりのような暖かさと、

気の早い熱狂だけが満ちていくのだった。


適度なボケ、ツッコミがなかなかいい感じに書けました。

プリプリ陶芸の森とか。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


まだ始まったばかりの作品ですが、

皆様の応援がこれからの執筆の大きなモチベーションになります。

「続きを読んでもいいよ」という方は、ぜひ【ブックマーク登録】と、

下部にある【☆☆☆☆☆】での応援をよろしくお願いいたします!^^/

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