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俺じゃなく取り憑いたギャル霊が異世界で無双する件 〜俺はただのエネルギータンクですが、何か?~  作者: うみの はるまき


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第三話:城を破壊しましたが、何か?

エルザの案内で、俺たちは国境都市『ゲートランド』の

巨大な城門前へと向かっていた。


エルザの少し後ろを歩きながら、俺は胸の奥で引っかかっていた

エラーログを確認するべく、声を潜めて隣のギャルに尋ねた。


「なぁコハル。

 ちょっとセンシティブな内容なんだけど聞いていいか?」


コハルは、明らかに久々に歩くの超しんどぃ~という表情で

ピンクのカラコンをこちらに向けた。

「えー?なにー?『戦士死ぬ内容』? じゃ、いや。戦士なんて知らんし」

「センシティブ!! 扱いが繊細な話題って意味だよ!」


全く通じていないギャルに溜息をつきつつ、

俺は本質的な問いを口にする。


「お前、あっちの世界では幽霊だったのに、

 この異世界に来てからは肌を合わせるとポカポカして、

 生き返ったみたいに生身の体になってるだろ?

 前の世界では……なんで死んで幽霊になっちゃったの?」


「……それが、記憶がまったくないんだよねぇ」


コハルは「ウケる〜」とでも言いそうな、

あっけらかんとした顔で首を横に振った。


「気付いたらさ、渋谷にいて、師匠に捕まって、

 ギャル道をたたき込まれて、

 ウチらマジ最強☆って感じで生きてたからラッキーみたいな?」


「意味がまったくわからんが……その、師匠って?」

「ウチもよく知らんし。

 ただ、その師匠ってギャルはさ、ニノみたく

 『ウチの姿が普通に見えた』んだよねぇ。

 だからいっつも一緒に渋谷で遊んでたの」


コハルは楽しそうに笑っているが、

俺のエンジニア脳は不穏なバグの気配を察知していた。


死んだ記憶がない幽霊。

そして、幽霊である彼女をハッキリと視認し、

なぜかギャル道を叩き込んだという日本の謎の師匠――。


「ニノ殿、コハル様。あそこにハッキリと白い霜が降りているでしょう」


俺がその奇妙な違和感を頭の隅の保留フォルダに移した瞬間、

前を歩いていたエルザが、悲しげに遠くの巨大な城を見つめて声を落とした。


「今から3000年も前の超古代の大戦で冬の精霊が勝利し、

 春、夏、秋の三精霊様は封印されました。

 それでも、夏と秋のお二方が最期にのこしてくださった

 抵抗の結界『陽だまりの残響レゾナンス・サンシャイン

 のおかげで、このゲートランドは何千年も冬の完全支配を免れてきたのです。

 ……ですが」


エルザが切実な声で、凍える我が身を抱きしめた。


「その『陽だまりの残響』も、3000年という歳月を経て、

 徐々に力を失っていっているのです。

 冬の精霊の支配は年々強まり、確実に世界を蝕んでいます。

 作物は枯れ果て、街の外には今までに出現してことのない凶悪な

 魔物が出現し周辺の村を襲うようになりました。

 更に最近は原因不明の『神隠し』まで多発している……。

 私たちはただ、凍えて怯えることしかできないのです」


エルザが切実な声で凍える我が身を抱きしめる。

その悲痛な表情から、この世界のシステムがどれほど

限界を迎えているかを俺が察した、まさにその瞬間だった。


城門の前に立ち塞がっていた衛兵の一人が、

こちらの姿を認めて鋭い声を張り上げた。


「おい、そこまでだ! 止まれ! ・・・

 あれ?近衛騎士候補生のエルザ殿ではないか!?」


城門の前に立ち塞がった二人の厳めしい衛兵が、

エルザの姿を見て色めき立った。

だが、その視線はすぐに周囲の不自然な空気に泳ぐ。


「エルザ殿、まさか……他の者たちは……。

 魔物討伐に出た一個小隊はどうなったのだ?」


「……全滅、しました。私を遺して、全員が……」


エルザが沈痛な面持ちで拳を握りしめると、門番たちは一瞬で顔を

青ざめさせ、絶望に肩を落とした。


「そんな、あの精鋭たちが……。いや、しかしエルザ殿がご無事だったのは

 不幸中の幸い。……して、その後ろにいる珍妙な衣服パジャマの男と、

 奇抜な衣服の女は?」


「我が命の恩人です。凶悪な魔物の手から、私を救い出してくれました」


「な、なんと……! エルザ殿の命の恩人ならば、

 我らにとっても大恩人! 深く感謝いたします!」


衛兵たちは深々と頭を下げた。一個小隊の全滅に落ち込みつつも、

恩人には礼を尽くす。それも彼らの役割だ。

だが、門番の仕事として例外は認められない。

彼らはおもむろに、一個の透き通った丸い石を取り出した。


「大恩人とはいえ、入国審査の手順は省けませぬ。

 王国に害をなさぬ者は青く光る『真実の魔石』です。

 さあ、こちらに手を」


言われるがまま、俺が先に石に触れてみる。

すると、石はピカッと綺麗な青色に発光した。

「よし、問題なし! 次の方、どうぞ!」


お次はコハルだ。

ド派手なネイルの指先で、興味なさげにツンと石に触れる。

その瞬間――。


「――ッッッ!?!?!?!?」


パッ、と石の内部から溢れ出したのは、薄い黄色――いや、違う。

それはあまりにも眩しすぎて、

まともに石を直視することすらできない、

圧倒的な『金色ゴールド』の烈光だった。

門前の白い霜が一瞬で蒸発し、周囲が真昼のような輝きに包まれる。


「こ、これは、き、金色……!?

 このような光、3000年の歴史でも聞いたことがないぞ……!」

「どう判断すればよいのだ!? 入国させてよいものか、それとも……!」


門番たちの様子を見ていると、

初めて出現したバグカラーを前に、

完全に処理落ちして迷っている姿が容易に見て取れた。


そんなフリーズした門番たちを見て、

コハルはピンクのカラコンの目をパチくりとさせ、

完全に勘違いした怪しい笑顔を浮かべた。


「あー、わかったしー、

 要はツヨツヨのところを見せればいいっしょ!?☆」


コハルは楽しそうに言いながら、

深く腰を落とし、両手を後ろに引くお馴染みの構えに入っていた。――

思いっきり、街のシンボルである城の方向に向けて。


「ゲーセンで見たことあるんだよねぇ・・・」

「っておい待てコハル!! そっちに向けたら・・・あ・・・」

「波動拳っっっ!!!☆」


ドゴォォォォォォォォォンッ!!!!!

吹っ飛ぶお城の先端。


バキバキに割れた魔石を抱えて、衛兵たちが涙目で腰を抜かしている中、

一番に我に返ったのは、あの真面目なエルザだった。


「な! えっと……ひ、ひかえおろう!

 このお方をどなたと心得る! ひ、光の女神様であるぞ! 頭が高いッ!」


あまりの理不尽な破壊力に脳のキャパがバグったのか、

エルザは涙目で門番たちを一喝し始めた。


俺はそっとエルザの耳元に口を寄せて、小声で囁く。

「お、おいエルザ。そんな嘘ついていいのか?

 あとあと、めちゃくちゃ『ややこしいこと』になるような

 気がするんだけど……」


「すでにややこしいことになっとるわい!!!!!」


ガチギレ顔でこっちを振り向くエルザ。

完全にキレ味の鋭いツッコミマシーンと化している。

そんな俺たちの焦りを置き去りにして、

魔力を急速充電テザリングし終えたコハルは、嬉しそうに胸を張った。


「あはは! 超いいじゃん! 女神って、悪い気はしないねぇ。

ほれほれ、ニノもエルっちも、私を拝むと大吉みたいな☆」


――拝むか!!!


始まったばかりの異世界生活は、

女神様とご一緒させていただくことになりました。

エルザ!どーなっても知らんからな!!

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