表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
2/59

指差したらレールガンが出ました


「……痛っ……つ, つううう……」


背中をコンクリートで

強打したかのような鈍い痛みに、

俺 ―― 二ノ前リョウタはうめき声を

上げながら目を覚ました。


頬に触れるのは、

自宅のフローリングの感触ではない。

妙にひんやりとした、

水分を含んだ柔らかい土だ。

慌てて上体を起こし辺りを見回した俺は、

その光景に息を呑んだ。


頭上を見上げれば、

ネオンパープルや蛍光グリーンに

怪しく発光する巨大なシダ植物や、

大蛇のようにのたくる未知の樹木が

鬱蒼と生い茂っている。


空はどんよりとした不気味な紫色だ。


どこをどう見ても、

東京のワンルームマンションではない。


「どこだよこの森!?

 俺の部屋は!?」


パニックに陥る俺の横で、

「いててて……」と

頭を押さえながら立ち上がる影があった。


金髪ミニスカギャル霊――

だったはずのコハルだ。


だが、いつもなら半透明で背景が

透けていたはずの彼女の体が、

なぜか今は生身の人間のように、

やけにハッキリとした4K画質で

そこに存在していた。


コハルは自分の生足をぺたぺたと触り、


「ウソ、ウチ実体化してんだけど……」


と呆然としていたが、次の瞬間、

カッと目を見開いて猛烈な勢いで

俺に詰め寄ってきた。


「あのね! 大体さぁ! 一切無害のウチを、

 ちょっとうるさかったみたいな?理由で

 除霊しようとするとか、

 マジなくない!? ふつう!!」


コハルが激昂しながら、俺の鼻先に向け、

人差し指をビシッと突き刺すように指さした。


その、瞬間だった。


俺の胸の奥――

今まで経験したことがないほどの

膨大なエネルギーが、目に見えない巨大ストローで

一気に中身をチュウチュウ吸い上げられるような

強烈な感覚が走った。


あまりの喪失感に

視界が一瞬真っ暗になる。


「ビキィィイイイイイイイィン!!!!!!」


鼓膜をぶち破るような凄まじい

高周波音が響き渡る。


コハルが俺を指さした人差し指の先端から、

極太の、まるでレールガンのような

純白のレーザー光線が音速を超えて

撃ち放たれたのだ。


放たれた閃光は、俺の耳元をかすめ、

背後の鬱蒼とした森の木々を数百本まとめて

一瞬で消し飛ばしながら、

直線上のすべてを文字通り『デリート』していった。


あまりの衝撃波に、

俺はパジャマ姿のまま地面を数メートル転がった。


「……は?」


自分の指先を見つめたまま、

コハルがぽかんと綺麗に口を開けて固まる。


そりゃそうだ、俺だって意味が分からん。

……脳内処理限界寸前。


更に、そのレーザーが突き抜けた

遥か直線上の茂みの奥から――。


「ギ、ギギェェエーーーーッッ!??」


真っ二つに引き裂かれた

体長四メートルはある巨大な大蜘蛛の魔獣が、

ドサササッと崩れ落ちるのが見えた。


さらにその蜘蛛の足元で、

見事な金髪をポニーテールに結んだ、

銀色の軽鎧を着た少女が、

折れた剣を握りしめたまま、

腰を抜かしてこちらを凝視していた。


「詠唱も、魔法陣の展開もなく……

 世界を貫く光を放たれた……。

 もしや、光の女神様……!?

 この『エルザ・フィン・エチェバレリア』、

 光の女神様の御力をこの目に焼き付けました……!」


「……ねえニノ、

 いまウチの指からなんか出たよね?

 つーか、あそこで腰抜かしてるコスプレ女子、

 なんかウチのこと『光の女神様』

 とか呼んでんだけど………そうかっ!!

 そういうことかっっっ、じゃん!!」


と、言いながらコハルは、

ビッと人差し指を立てて真上に手を突き出した。


天を突く『天下無双の一番』ポーズ。


そのまま「感無量……!」と言わんばかりに目を閉じ、

恍惚とした表情でブルブルと肩を震わせている。


『ついに私の時代が来たっ!ココだったか!』


……絶対にそう確信している顔だ。



「幽霊がいきなり女神にランクアップするかぁ!!

 今お前が俺を指さした瞬間、俺の体の中から何かが、

 ごっそり根こそぎ抜き取られましたけど!?

 危うく俺がリアルに『仏様にランクアップ』

 するところだったわ!!」


確実に走馬灯だった。あれは。


忘れもしないメインサーバーが

クラッシュした一番の思い出のシーン。





とりあえす、この世界が

確実に今までの世界でないことを俺も感じていた。

何が起こってもおかしくない状況だ……

まずは落ち着いて、今までのことを冷静に思いだし…


「ビキィィイイイイイイイィン!!!!!!」


再度、白の光線が森の木々を

数百本まとめて一瞬で消し飛ばす。


『何が起こってもおかしくない状況だ……』

と、クールに決めたが、

異世界?じゃなく身内の行動が

一番想定外やがなっ!!


「こ、こらっ!コハル!

 勝手に2発目を出すなっ!!

 森がむちゃくちゃだぞ!」


「だって、これツヨツヨで

 面白いじゃん!☆」


「そのビーム出すとき、

 俺の……なんというか…

 よく分からんが、

 体から何か抜き取られる感覚があるんだよ!」


「『抜き取られる』感覚かぁ……

 ウチもココに来てから

 ニノの近くにいないと、

 アンテナが圏外になるっていうか……」


コハルは俺との距離を詰めると、

俺のパジャマの袖をぎゅっと掴んできた。

その瞬間、

俺の体の中から急激に失われていた何かが、

コハルの手のひらを通じてじわっと

戻ってくるような不思議な感覚がした。

しかもその部分は実際ぼんやりと光っている。


「その、ひ、光は、光の女神様の

 『魔力』のご加護ですか!?」


エルザと名乗った女剣士が、ひざまずき

そっと目をとじ、胸の前で両手を固く組んだ。

深く、静かに、意識を祈りへと没頭させていた。

挿絵(By みてみん)

それを見たコハルは再度、

ビッと人差し指を立てて真上に手を突き出した。

天を突く『天下無双の一番』ポーズ。


「もう、わかったから!!」

「えーーーっ!けちっ!」

俺が無理矢理妨害に入る。


街中でこんなポーズしている人いませんよね?

さらに自分の関係者ですよ!

俺の方が恥ずかしい!


「命の恩人であられる女神様も、

 そちらの『星脈調律師』様も……

 どうか、どうか我が領地へお越しいただき、

 最大限の礼を受け取ってくださいませ!」


……『星脈調律師』?

なんだそれ、俺のことか?

まあいいや。

非常事態だったわけだし、

何か勘違いしているのだろう。



彼女のすぐ背後には、

先ほどのコハルの極大ビームによって

綺麗な断面を残して真っ二つに絶命した

『ダークタランチュラ』の巨躯が転がっている。


だが、この世界の『常識』を知るはずのエルザが、

なぜここまで激しく取り乱し、平伏しているのか——


その理由は、彼女が震える声で紡いだ

次の言葉で痛いほど理解できた。


「あ、あの魔獣は……一国を容易く滅ぼす危険度を誇り、

 王国のS級冒険者すら束になって敵わぬ

 【漆黒の暴君】ダークタランチュラ……!

 我が近衛騎士候補生の一個小隊が手も足も出ずに

 全滅させられ、私も死を覚悟したというのに……!


「それを、よもや愛らしい指先一つで

 一瞬で屠るなど……!!

 降臨された本物の神様でなければ、

 絶対にあり得ぬ所業にございます……!!」


「え、マジ? ウチ、

 あの虫ケラ秒でオワコンにしたよね? 」


「え?あの蜘蛛、

 そんなヤバい奴だったの?」




通常なら、

脳内が理解できない「不安と混乱と安堵」で

起き上がれなくなってもおかしくない状況だ。

エルザの精神は実はすごいのかもしれない。



「ねえニノ、とりま街行くっしょ?☆

 ウチ、お腹空いたかもー。

 異世界の飯って何があるかな? ☆」


コハルが、俺のパジャマの袖を引いたまま、

能天気な笑顔を向けてくる。


「エルザさん、

 この近くに街ってあります?

 もしよろしければ案内してくれると

 助かります」


「御意にございます!

 我が命に代えても、

 お二人を安全に城下街まで

 ナビゲートいたします!」


「あと、以後『エルザ』と

 お呼びください!」


こうして、俺たちはエルザの案内で

城下街に向かうことになった。


――こうして、俺と、実体化した

最強ギャル神?による異世界ライフが

幕を開けたのだった。


お読みいただきありがとうございます!

また読みに来て下さいね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ