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21-3 無意識の強者たち(その3)

「よし、ナイスホームラン♪」


自分よりも遥かに大きな大盾を

足元に置いた小柄な少年

――ザードは、満足そうに肩に担いだ

『ただの木の棒』をポンポンと叩いた。


王都ゲートランドを丸ごと消し去るはずだった、

四天王ヨルダの極大光線。


それがガキーン!という打撃音とともに

遥か北の空へと綺麗に跳ね返されていく残光を、

バルコニーに駆け込んできた新摂政グラッドや

近衛騎士団長アルバド、そして城の重臣たちが

目玉を飛び出さんばかりに見開いて眺めている。


――その頃、

極北『深冬邪党みふゆじゃとう』の氷の宮殿。


「うふふ! アタシの美しき冬の極冷閃光で、

 王都ごと氷漬けになって絶望なさ……って、え???」


高飛車に高笑いを上げていた四天王ヨルダの視界に、

北の空から猛スピードで逆流してくる

『自分が放ったはずの極大光線』が映り込んだ。


「は……? え? なんで戻ってきて――」




ズッバババババババ

バガァァァァァァンッッッッ!!!!!!!!




「きゃああああああああああっっっ!!??!?」


跳ね返された超絶破壊のエネルギーが、

そのまま氷の宮殿の前面にクリーンヒット。


轟音とともに外壁と豪華なバルコニーが

一瞬で木っ端微塵に吹き飛んだ。


煙が充満する中、氷魔道王ジゼルが紫のフードを

深々と被り直しながら冷たく呟く。


「……ヨルダ。挨拶のつもりが、

 手痛いお返しを喰らったようですね」


「な……何!?

 何が起こったのよぉぉぉぉぉぉッッ!!??

 何でアタシの閃光が跳ね返ってきてんのよぉぉぉッッ!!」


ヨルダは頭から氷の粉を被り、

髪をなりふり構わず振り乱しながらキーキーと悲鳴を上げた。


悔しさと屈辱のあまり、

ポケットから取り出したシルクの高級ハンカチを

ガチガチと前歯で噛みちぎり、

ビリィィッ!と引き裂く。


「キーッッ! 許さない……

 絶対に許さないわよ!!

 愚かな人間どもぉぉぉッッ!!」


冷酷な氷剣王ロドンが

「……無様だな」と吐き捨てる横で、

ヨルダのヒステリックな叫びが

破壊された宮殿に虚しく響き渡っていた。




――一方、王都ゲートランド。


城内を包む、あまりにも深すぎる静寂。

そんな中、バルコニーではポカーンと口を

開けたまま腰を抜かしている近衛兵たちに向かって、

ザードが嬉しそうに『木の棒』を自慢していた。


「ねえねえ見てよ!

 これ、子どもの頃に拾ったんだよね!」


「こ……子どもの頃……!?」


近衛兵がひきつった顔で尋ねると、

ザードは無邪気な笑顔で自慢げに胸を張る。


「そうそう!

 いやー、さっきみたいな攻撃も余裕余裕!

 パーフェクトに全部跳ね返す!!

 ほんと魔法の棒だよっ!」

 

「意外とこういう珍しい魔法アイテムって、

 そこらへんに落ちてるもんだな〜!

 超ラッキーだったよ♪

 けど、たぶん一生分の運を使っちゃったなぁw」


「お、落ちて……魔法アイテム……!?」


……ざわ、ざわ…

…………ざわ、ざわ…


近衛兵たちの間に、

波紋のように動揺が広がっていく。


(落ちているわけがないでござるっ!!

 幼少の刻から今この瞬間に至るまで、

 無自覚に極大強化魔法を重ねがけし続けておったと

 いうのでござるかぁぁぁッッ!!)


後ろで見守っていたカゲロウは、

もはやツッコむ気力すら失い、

ただただ天を仰ぐばかりだった。


ザードの手の中にあるのは、

どう見ても昔拾ったただの木の棒だ。


近衛兵たちが

「ま、魔法アイテムかぁ……」

と完全に勘違いして青ざめる中、

病室の窓から恐る恐る空を見上げていたルナは、

涙を浮かべた瞳をパチクリとさせた。


「……ふふっ」


小さな、鈴が鳴るような笑い声が、

ルナの口元から零れ落ちた。


恐怖と自責の念で絶望の底にいたはずなのに、

あまりにも緊張感のない小柄な少年の無邪気な自慢話に、

肩の力がふっと抜けてしまったのだ。


(あ……ルナ殿が、笑われた……)


カゲロウはその光景を目にし、

深く胸を撫で下ろした。


彼らの規格外すぎる異常性はさておき、

暗闇に閉ざされていたルナの心に、

小さな光が灯ったことだけは間違いなかった。






大騒動が一段落し、

一行は病室へと戻った。


今まではお城の救護班が必死に

治癒魔法をかけてくれていた。

が、ある程度傷が回復したということで、

シルエッタが治癒役の交代を買って出てくれた。


「私、傷を癒やすのが子どもの頃から得意で、

 今はこうして神官としてパーティーに参加してます♪

 では、今日からは私が傷を癒やしますね~♪」


そう言って可愛らしく首をかしげると、

シルエッタはルナの手にそっと自らの手を重ね、

同時にカゲロウの傷ついた肩にも優しく触れた。


「はい、痛いの痛いの、飛んでいけ~♪」


次の瞬間、

二人を包み込んだのは

柔らかな桃色の光だった。


(な……なんだ、

 この感覚は……!?)


カゲロウは自身の体内で巻き起こった

『現象』に、目を丸くした。


単に傷の痛みが消えたのではない。

先の激戦で焼き切れ、

修復不能と言われていたはずの自らの体内魔力回路が、

まるで「最初から傷など負っていなかった」かのように、

寸分の狂いもなく元の完璧な状態で繋ぎ直されているのだ。


さらには、ルナの心身を蝕んでいた

エルザの闇の残渣やトラウマまで、

綺麗さっぱり消滅している。


「こ、こ、こ、これは!

 傷を癒やしているのではござらん……っ!!」


シルエッタは果たして何をしているのか!?

乞うご期待をお願い致します。

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