表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『百升ノ音(ひゃくしょうのおと)』  作者: こうた
第一章 印を押した夜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/19

第十七話 六日目の配信

画面が暗転した。


神谷透は、しばらくスマートフォンを握ったまま動けなかった。


白石レナ。


失踪したはずの彼女が、動画の中で助けを求めている。


それなのに――


配信日は「六日目」。


まるで、何事もなかったように続いている。


「……生きてる。」


黒田蓮が呟く。


「いや……。」


佐伯ミオは首を振った。


「違います。」


「これは、生きている人間の配信じゃない。」



---


透はもう一度、動画を再生する。


最初の数秒。


レナはいつもの笑顔だった。


机の前に座り、日本酒を置いている。


「こんばんは。」


「今日も100日チャレンジ六日目です。」


声は明るい。


しかし目だけがおかしい。


笑っているのに、助けを求めている。


「今日はちょっと変なことがあって……。」


レナがカメラを見る。


「昨日から、部屋に誰かいるんです。」


コメント欄が流れる。


> 「怖い話?」




> 「演出でしょ?」




> 「続きは?」




レナは首を振る。


「違う。」


「本当にいる。」


その瞬間。


画面の端に何かが映る。


濡れた着物。


白い手。


レナは気付いていない。


しかしコメント欄が一気に変わる。


> 「後ろ!」




> 「振り向いて!」




> 「誰かいる!」




レナが振り返る。


そこには誰もいない。


そして、彼女は安心したように笑った。


「ほらね。」


「誰も――」


その瞬間。


画面の奥から声がする。


「ここにいるよ。」



---


透は動画を止めた。


「……。」


三人とも言葉が出なかった。


あまりにも自然だった。


編集ではない。


本当に、その場に何かがいた。


「レナさんは……。」


蓮が呟く。


「毎日、配信してるんですか?」


ミオはスマートフォンを確認する。


顔色が変わった。


「違います。」


「この動画……。」


「投稿時間がおかしい。」


「何日前ですか?」


透が聞く。


ミオは震える声で答える。


「未来です。」


「投稿時間……明日の夜になっています。」



---


その瞬間。


酒蔵の少年が透を見る。


「だから言った。」


「時間が違う。」


透は少年を見る。


「どういうことだ?」


少年は悲しそうに答える。


「ここでは、百日が普通じゃない。」


「外の一日と……。」


「中の一日は違う。」



---


ミオが古い帳面を開く。


「だから記録が……。」


「明治の人たちも、百日目の日付が合わなかった。」


帳面には奇妙な記録があった。


実際には三ヶ月しか経っていないのに、


本人たちは百日過ごしたと言っていた。


逆に、


一年以上経っているのに、


外では数日しか経っていなかった例もある。


「この場所は……。」


透が呟く。


「時間を食べる。」



---


その時。


酒蔵の外から、大きな音がした。


ドンッ。


誰かが扉を叩いている。


一回。


二回。


三回。


村長の声が響く。


「帰る時間だ。」


「六日目が終わる。」


少年が怯える。


「早く逃げて。」


透は少年を見る。


「君たちは?」


少年は首を振った。


「僕たちは……ここから出られない。」


「でも。」


少年は透の手を見る。


黒い染み。


「あなたはまだ完全じゃない。」


「だから……。」


「まだ選べる。」



---


扉が大きく揺れる。


ミオが叫ぶ。


「出口は!」


少年は奥を指差した。


「昔の逃げ道。」


「でも……。」


少年の顔が暗くなる。


「そこには、最初に逃げようとした人がいる。」


「誰?」


少年は答えた。


「僕のお父さん。」



---


三人は暗い通路へ走る。


背後で酒蔵の扉が開く音。


そして村長の声。


> 「六日目終了。」




> 「次は、七日目。」




透たちは知らなかった。


この時点で、


SNS上では新たな異変が始まっていた。


100日チャレンジ参加者の動画。


そのすべてに――


同じ時間。


同じ場所。


同じ声。


「乾杯。」


という音が入り始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ