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第8話 義妹からの優雅な見舞い状

三日後、王都から見事な封書が届いた。


 香油の匂いまでついた薄青色の便箋。差出人はリディア。文面はどこまでも優しい。


 雪峡はお寒いでしょう、どうか無理をなさらないで。王都は私がちゃんと守っております。春の冬道契約は、私が帳場で無事に取り仕切りますから、お義姉様はゆっくりお休みになってくださいませ。


 読むほどに、指先が冷えていく。


 便箋の封蝋には、銀松印が混ざっていた。


「見舞い状にしては、ずいぶん親切だな」


 ヨナスが横で言う。


「ええ。わざわざノイパスの印を使っているあたりが」


 私は封書の内側を光にかざした。紙に薄い透かしがある。王都の紙商会ではなく、街道局専用の文書紙だ。しかも文末には、冬道契約入札の日取りがさりげなく書き添えられていた。


「王都に戻るなら、その日しかないと言いたいのでしょうね」


「来いということか」


「いいえ。来ても無駄だと、先に言いたいんです」


 リディアは昔からそうだった。先に席へ座り、あとから優しい顔で「譲ってくださってありがとう」と言う。


 けれど今回は、手紙そのものが証拠だった。


 私は返事を書かなかった。その代わり、封蝋の欠片を証拠袋へ入れ、冬道契約入札の日付を手帳へ太く書く。


 逃げるつもりはない。


 今度は私が、帳面を持って王都へ戻る番だ。


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