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第7話 宿帳庫に眠る旧街道記録

ノイパスの宿帳庫の奥には、使われなくなった旧街道記録が箱ごと積まれていた。


 私はイルゼと一緒に埃を払い、一冊ずつ開いていく。十年前、雪崩で閉鎖された南斜道の宿泊記録。橋の補修日誌。馬蹄鉄の交換記録。細かい字の列が、静かに過去を語り出す。


「ここだわ」


 閉鎖直前の帳簿に、見覚えのある銀松印があった。正規の封鎖印ではなく、仮通行の臨時印として使われたものだ。


「閉鎖されたあとも、印だけは残っていたんですね」


「印が残れば、偽の便も通せる」


 ヨナスが低く言う。


 さらに頁をめくると、ある年を境に南斜道の監視人名がごっそり消えていた。かわりに王都迎賓館の補助予算が減っている。


 私は古い宿泊票を抜き出した。筆跡は違っても、数字の癖が同じだ。王都で見慣れたオスカーの字に近い。彼は宿帳そのものを書かない人だったはずなのに、ここには修正の跡がある。


「王都側の人間が昔から噛んでいた」


「ああ」


「しかも南斜道を完全に捨てたわけじゃない。閉じたふりをして、夜だけ開けていた」


 宿帳箱の底から、破れた頁の欠片も見つかった。迎賓館で消えた冬道宿帳と同じ紙質、同じ罫線幅。


 私は欠片を掌で揃える。


 王都で消えた宿帳は、ノイパスの記録を消すためにも使われていた。


 つまりこの宿場は、最初から証拠隠しの終点として選ばれていたのだ。


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