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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第四幕 王都の闇編

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第19話 解析と神父

「ノエラ嬢は今日はおやすみらしいよ」


 放課後の部室に入ると、レイヴンがそう言ってきた。


「どうやら昨日の疲れが出たのか体調を崩してしまったらしくてね」


 今日一日、ノエラは学園に来ていないらしい。

 そう言いながら、レイヴンはリーネの前に座った。


 しかし、リーネは小さく笑った。


「あなたはまだノエラを理解していないみたいですね」


「うん? どういうことだい?」


「きっとノエラは体調なんか崩してませんよ」


 リーネは確信したように続ける。


「どうせ、昨日持って帰った二つをずっと調べているんでしょう。本当に寝ないでずっと」


「いやいや、そんなわけはないだろう」


 レイヴンが苦笑いをしたその時だった。


 リーネのスマホに着信が入った。

 表示を見た瞬間、リーネはそれを耳に当てず、少し離したまま通話に出る。

 その動きが不思議だったのか、レイヴンは怪訝そうに目を向けてきた。


『大変なことがわかりましたわ!』


 開口一番、ノエラが大声でそう言ってくる。


(やはりノエラはこうでなくては)


 レイヴンの方を見ると、まさかというように驚き目を見開いていた。


(まだまだノエラの理解が足りないようですね)


 それを見て、リーネは薄く笑って、ノエラとの会話を続けた。




「ともかくすぐに来てくださいまし!」


 ということで、呼び出されたリーネはレイヴンとともに部室を出てノエラの家へ向かうことにした。

 ユランシエル家に着いて案内された部屋へ入ると、ノエラは机にかじりつくようにしてなにやらブツブツと言っていた。


「本当にずっと調べていたみたいだね……」


 レイヴンが小さな声でそう言う。

 軽く見ただけでも、目の下には薄く隈ができていて、髪も乱れていた。

 おそらく一睡もせずに調べ続けていたんだろう。


「ノエラ。来ましたよ」


 部屋に入ってきたことにも気が付かないようだったので、声をかけると、ようやくノエラは顔をあげて振り返った。


「……待ってましたわ!」


 第一声がそれだった。

 目が血走っている。隣にいるレイヴンが若干引いているのを見て、リーネは少しおもしろくなりながら、ノエラに近寄った。


「ずいぶんと楽しそうですね」


「ええ! こんなものを見せられたんですもの! 楽しくもなりますわ!」


 ノエラは二つの魔石らしきものを見せてきた。


「昨日の狼から得た魔石と、殿下の魔道具の魔石ですけれど」


 一度言葉を切る。

 それだけで、部屋の空気が少しだけ変わったように思えた。


「同じものだとわかりましたわ」


「同じもの……ですか?」


「ええ、ああ、別に二つに割ったとかそういうわけではありませんわ。単純に同じ生物からとれたものということがわかりましたわ」


「ふむ、つまり、殿下の魔道具の魔石もあの狼の魔物から取れたものだと?」


「ええ、そういうことですわ」


 そんなことまでわかるものかと、リーネは感心しつつ。

 しかし、同時に少し疑問をもった。


「それが大変なことなのかい?」


 リーネと同じ疑問をレイヴンが口にした。


「いえ、大事なのはこれからですわ」


 そういうとノエラは机から紙を一枚持ち上げた。


「調べてみると、この魔石は人工魔石に近い特徴があるんですの。ほんの少しだけですけれど」


「人工魔石の特徴……」


「ええ。これが魔力を流した時の反応で……普通の天然魔石はこれ、人工魔石はこれ……そしてこの魔石はこちらですわ」


 ノエラが紙に書いてあったグラフを指し示してきた。

 正直、リーネが見てもさっぱりわからないが、ともかくノエラは自信満々にグラフについて説明してきた。


「というわけで、この魔石は半人工魔石とでも言うのでしょうか。まったく、こんなもの見たことがありませんわ!」


 興奮するようにそう言って、ノエラは言葉を締めた。


「ふむ、しかし、その半人工魔石はいったいどういうものなのでしょう? なぜあの狼の魔物からそんなものが入手できたのか……」


「それはわかりませんわ……推測すらさっぱりですの……」


 ノエラの表情は少し悔しげだった。


「……あの大きな魔物のやつでしたら、もうちょっと何かわかったかもしれませんのに」


 あの大きな魔物というのは、リーネが死神の力で討伐したあの魔物のことだろう。


「それがあればもう少し詳しいことがわかるんですか?」


「ええ、おそらくあの大きな魔物のやつはもう少しこの魔石の特徴が顕著に出ていると思いますの」


「ふむ……」


 リーネは袖の内から、黒く濁った魔石を取り出した。


「で、あるならば調べましょうか」


 ノエラの目が一気に見開かれる。


「それ、ありますの!?」


「実は確保していました」


「でしたら早く渡してくださいまし!」


 ノエラが勢いよく身を乗り出す。

 けれど、リーネはすっとそれを再び袖の中にしまった。


「今はまだ駄目です」


「なんでですの!?」


 今にもリーネに掴みかからんばかりにノエラが詰めてきたが、リーネはため息をついて返した。


「ノエラ、鏡を見ましたか?」


「魔石を……えっ? 鏡ですの?」


「ええ、それに……匂いも……」


「……うっ」


 自覚があるのか、ノエラの勢いが一気に失速した。

 そこでようやく、ノエラはもう一人の来客に気がついたらしい。

 ぱちぱちと瞬きをしたあと、ぎこちなく顔を向ける。


「……レイヴン様、いらっしゃったんですの?」


「挨拶はしたんだけどね」


 レイヴンが非常に気まずそうに答えると、それ以上に気まずそうにノエラは顔を背けた。

 とても人前に出る姿ではないと気がついたのだろう。


「少々、お待ちくださいまし!」


 それだけ言い残すと早足で部屋を出ていく。

 扉が閉まると、さっきまでの熱気が少しだけ引いたように思えた。


「……換気でもしようか」


 レイヴンが気まずそうにそう言った。


「女の子の部屋をいじるのはよくないですよ?」


 リーネが扉を指さしながらそう言うと、レイヴンは気まずそうに扉の外へと出ていったのだった。



「ところで、殿下の言っていた神父というのは、アリアさんの言っていた神父のことではないでしょうか」


 空気が綺麗になった後、再びレイヴンを呼び戻し、リーネがそう言った。


「僕もちょっと気になったけど、しかし、そうであるとしたら妙じゃないか?」


 レイヴンはすぐに眉をひそめる。


「それなら、なぜ人身売買組織に売られた神父が、教団に関わっていることになるんだい?」


「ええ、ですから、人違いというのが濃厚でしょうね」


 しかし、リーネはそう言いながら自分の言葉を全く信じていない。


「あるいは、売られたあとで何かがあったのか」


「ええ。その可能性もありますし、もしくは……いえ、これはやめておきましょう」


「……まだわからない、か」


「ええ」


 リーネは頷いた。


「ひとまず、アリアにはまだ黙っておきましょう」


「その方がいいだろうね」


 レイヴンも短く同意する。


「確かでもない話を持っていって、不安だけ増やしても仕方がないですからね」


 生きている可能性がある、それはいいことだ。

 しかし、それ以上に悪い予感がしているのも事実だった。


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