表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第四幕 王都の闇編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/131

第14話 北門と森

 それから約束の日はすぐにやってきた。


 外出用の服に着替えて北門へ向かうと、レイヴンは既に来ていた。

 門の前には第二騎士団の隊列も整っている。馬車と馬、それに鎧の擦れる音。

 朝の空気は冷たいのに、そこだけは妙に張りつめて見えた。


「おはようございます」


「ああ、おはよう」


「ノエラはまだ来ていないようですね」


「そうだな。とはいえ、まだ集合時間までもう少しある。すぐに来るんじゃないか」


 答えながら、レイヴンは門の方へ視線を向けた。

 リーネもつられて騎士団の方を見る。


「定期討伐にしては、思ったより人数が多いですね」


「軽く聞いてみたけど、やはり魔物が強くなっているようだ。念には念をということで、本来より多めの編成だそうだよ」


「なるほど」


 商会で聞いた話と一致する。

 魔物が強くなって、討伐が難航している。その現場が、いよいよ目の前まで来たわけだ。


「リーネ様! お待たせいたしましたわ!」


 振り向くと、ノエラがこちらへ駆けてきていた。

 いつもの貴族の令嬢というスタイルから一変、作業着の上から道具袋を提げ、背中の鞄は見ているだけで重そうだ。

 とてもではないが、貴族の令嬢には見えない。


(ずいぶんと持ってこられましたね)


「重そうですね」


「重いですわ。この子がいなかったら大変でしたわよ」


 そう言ってノエラは馬の背中を撫でた。


「準備万端という感じですね」


「もちろんですわ! リーネ様のために、できる限りのことはするつもりですから」


 ノエラが胸を張る。

 こういう時の頼もしさは、さすが専門家というところだろう。


 その時、隊列の方から聞き覚えのある声が響いた。


「リーネ殿!」


 シリウスが大きく手を振りながら駆け寄ってくる。

 乗馬服の上に簡単な鎧、腰には剣。いかにも張り切っている格好だった。

 後ろには、当然のようにグレンが控えていた。


「来てくれたか! 来てくれると信じておったぞ!」


「見学すると連絡は出したでしょう?」


「うむ。今日は余の勇姿を見せてやろう」


(ええ、そう言ってくださると思っていましたよ)


 昔のままの口ぶりに、少しだけ気が抜けそうになる。

 ただ、その後ろに立つグレンの視線は、まるで逆だった。


 グレンの目が、リーネ、レイヴン、ノエラの順に流れていく。

 値踏みするようでいて、あくまで職務として見ている目だ。

 敵意まではなさそうだが、歓迎もしていないようだった。


(警戒されてますね)


「殿下、出発のお時間でございます」


「分かったわかった。リーネ殿、馬車に乗るか?」


「ふむ、馬でお願いします」


「ほう、乗れるのか」


「最低限くらいは」


「では余の隣を走ると良い!」


「それは色々と勘違いされそうなので遠慮します」


 軽く受け流して、リーネは用意された馬の方へ向かった。

 大人しい牝馬で、歩幅も穏やかだ。


(ふむ、馬に乗るのは久しぶりですね)


 何かの時のためと祖父に仕込まれていたが、実際に乗るのは久しぶりだ。

 それでも、なんとか乗ることはできた。


 ノエラも無事に乗り、レイヴンはいつものように危なげがない。

 その間にも、シリウスだけは目に見えて機嫌が良さそうだった。


「では出発する!」


 隊列がゆっくりと動き出す。

 北門を抜けてしばらくは、街道の両脇に低い草地が続いていた。

 けれど、その先に見える森は思っていたよりも深く、暗い。


 道中、シリウスは何度かこちらに寄ってこようとしたのがわかった。

 だが、そのたびにグレンが視線を向け、殿下も咳払いひとつで黙る。


(きちんと止まるあたり、昔よりは成長しておられるのでしょうか)


「リーネ嬢」


 馬を寄せてきたのはレイヴンだった。


「乗り方、悪くないな」


「お褒めいただいて光栄です」


「祖父殿の教育か」


「ええそうですね。何かあっても逃げられるようにしておけとのことで」


「あぁ……随分と心配をかけていたみたいだな」


「生憎と国から逃げることに使うことはありませんでしたけどね」


 リーネの言葉にレイヴンが小さく笑ったのがわかった。



 森が近づくにつれて、空気が湿ってきた。

 馬の足音も、さっきまでより地面に吸われるように鈍い。

 明るい朝だったはずなのに、木々の影に入るだけでずいぶん色が変わる。


「ここから先は警戒態勢に入る」


 前方からグレンの声が通った。


「殿下とご同行の方々は中央へ。前衛と後衛はそのまま間隔を詰めろ」


「了解した。それじゃあ、行こうか」


 隊列の空気が一段階変わった。


(ここからですね)


 リーネは静かに息を整えた。


(さて、魔物はどんな感じなんでしょうね)


 今日の討伐はただでは終わらない。なんとなくそんな感覚を持ったリーネだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ