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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第四幕 王都の闇編

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第9話 支度と反応

「リーネ様、来ましたわよ!」


 リーネが家でのんびりとしていたら、ノエラが満面の笑みで現れた。


「ノエラ? どうしたんですか? こんな時間に。パーティまでにはまだ時間がありますよね?」


「パーティの準備には時間がかかるものですわ!」


 ノエラの後ろからアリアも顔を出した。


「すみません、リーネさん。ノエラさんに誘われて……」


「アリアまで来てたんですか」


(朝から賑やかですね)


 仕方ないので二人を部屋に通す。

 ノエラは早速荷物を広げ始めた。化粧道具らしきものや、髪飾りらしきものや、よく分からない瓶やらが次々と並べられていく。

 ちなみにノエラは貴族令嬢にしては珍しく、自分でこの手の道具を扱えるらしい。


「わざわざこんなに準備してきたんですか」


「当然ですわ。リーネ様が初めて出る大きなパーティなんですもの、手は抜けませんわよ!」


「……初めてではないんですけど」


「あら、そうでしたの?」


「子供の頃に何度か。あんまり覚えてないですけど」


(覚えていないのは、楽しくなかったからでしょうね)


 ノエラが袖をまくった。


「では始めますわよ。アリアさんはアクセサリーの仕分けをお願いしますわね」


「はい!」


 アリアが嬉しそうに小箱を開け始める。リーネは椅子に座らされ、ノエラに髪を櫛で梳かれた。

 ずいぶんと仲良くなったものだ。これもきっとノエラの遠慮しない性格のおかげだろう。


「リーネ様、もう少し背筋を伸ばしてくださいな」


「伸びてますよ」


「もう少しですわ」


 この通り、リーネにだって遠慮はしないのだから。


 言われた通りに少し伸ばす。

 鏡の中の自分は、いつもと変わらない顔をしていた。


(普段と何が違うんでしょう)


「リーネさん、これはどうですか?」


 アリアが小さなイヤリングを差し出してきた。淡い銀色の石がついている。


「いいんじゃないですか」


 正直、光っているなぁくらいにしか思わなかったリーネは曖昧に頷く。


「いいですわね、ドレスの色とも合いますわ」


 ノエラが頷いた。アリアが嬉しそうに笑う。


「リーネさん、すごく綺麗です」


「まだ髪を整えただけですよ」


「それでも綺麗です」


(お世辞にしては目が本気ですね)


 ノエラが髪を結い上げ始める。手際がいい。普段から自分でやっているのだろう。


「リーネ様、頭を動かさないでくださいな」


「はい」


「お手洗いも今のうちですわよ。ドレスを着てからだと大変ですからね」


「分かりました」


 言いつけられるがままに動く。

 いつの間にか、自分のことなのに自分の出番が一番少ない気がしてきた。


(まあ、お任せしておきますか)


 ドレスを着せられ、髪を整えられ、化粧をされ、アクセサリーをつけられる。

 最後にノエラが少し離れて全身を眺めた。


「……ええ、上出来ですわ」


「ありがとうございます」


「リーネ様」


 ノエラが鏡越しに目を合わせてきた。

 いつものいたずらな顔だ。


「レイヴン様の反応が楽しみですわね」


「あー、私だと認識できないかもしれませんね」


「そういうことではないんですが……」


「ふむ?」


(意図がよくわかりませんね)


「リーネさん、本当に綺麗です。お姫様みたいで」


「アリアまで言うんですか」


「だって本当ですから」


(ふむ、ここまで言われるということは見た目は問題ないということですね)


 時間になり、玄関へ降りる。

 家を出たところでレイヴンが既に来ていた。礼装に身を包み、馬車の横で待っている。


「お待たせしました」


「いや……」


 顔を伏せていたレイヴンが顔を上げて、リーネを見つめた。

 呆気に取られたように、しばらく沈黙が続く。


「リーネ嬢……なんだよね?」


「はぁ? それ以外の誰に見えると?」


「いや……すまない。ちょっと驚いただけだ。見違えたよ。びっくりした」


(先ほどから、同じようなことを言われますが、そんなもんでしょうか?)


 正直、リーネ自身はよくわからない。

 ただ、レイヴンの珍しい反応も見れたので良しとしておく。


「なるほど、自分の主の顔すら見分けがつかなかったらどうしようかと思いましたが、安心しましたよ」


「……うん、それでこそリーネ嬢だね」


 レイヴンが苦笑いをしながらリーネの手を取った。

 リーネはその手を握り返した。

 その手はなんだか、いつもより冷たく感じた。



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