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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第四幕 王都の闇編

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第8話 ドレスと試着

「そういえばリーネ様、ドレスはお持ちですの?」


「ドレス?」


 ダンスレッスンの翌日、部室でノエラがそんなことを言い出した。


「来月のパーティ用に決まっておりますでしょう」


「……あ」


 完全に頭から抜けていた。

 ステップや姿勢のことばかりで、肝心の着るもののことはすっかり抜けていた。


「お持ちでないんですのね?」


「祖父の家の衣装部屋に、母が遺したものがいくつかあったはずですけど」


「お母様の。何年前のですの?」


「十年以上は前でしょうね」


「でしたら無理ですわ。流行は十年で別物になりますの」


(そういうものですか)


 リーネとしては別にどうでもよかったのだが、ノエラの顔が真剣だったので、なるほどそういうものらしい。


「ご一緒しますわ。お店に心当たりがありますの」


「いえ、自分で適当に」


「適当に、で済ませようとなさいましたわね?」


「……お願いします」


 ここで粘ったら倍の時間がかかると、付き合いの長さで察した。




(なぜノエラとアリアが、揃って待ち合わせ場所に立っているんでしょうね)


 休日の校門前。待ち合わせ場所には、なぜかノエラと一緒にアリアまで立っていた。


「リーネ様、おはようございますわ」


「おはようございます。なぜアリアがここに?」


「先に待ち合わせていましたの」


「あ、はい。ノエラさんから声をかけていただいて……」


 アリアが申し訳なさそうに肩をすぼめている。


(いつの間にか仲良くなっていたと?)


 しかし、商会で顔を合わせた際に「私とも友人になれるかもしれませんわね」とまで言っていた相手だ。

 リーネが何もしなくても、ノエラの方から動いていても、不思議ではない。


「まあ、いいでしょう。それで、どこに行くんですか」


「中央通りのアルテミス、と申しますの」


「聞いたこともありませんが」


「貴族がよく利用するお店で、品揃えで言えば王都で一番ですわ。予約を入れておきましたの」


「予約まで」


「当然ですわ。飛び込みでドレスを選ぶ貴族など、聞いたことがありませんわよ」


(どうやら私は、貴族の流儀というものをよくわかっていなかったようですね)



 アルテミスは、思っていたよりも控えめな構えだった。

 看板も小さく、知っていなければ通り過ぎてしまいそうな店だ。


「いらっしゃいませ、ユランシエル様、ミゼリオール様。お待ちしておりました」


 深々と頭を下げて、店員がちらりとアリアの方を見た。


「……そちらはお連れ様でございますか?」


「友人です。見学で」


「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」


 奥の部屋に案内される。


「本日お持ちしておりますのは、こちらの五着でございます」


 ハンガーラックに並んでいたドレスは、最初から五着しかなかった。


「……ノエラ、選んだんですか」


「事前に十数着の中から候補を絞らせていただきましたわ。リーネ様のお好みは存じておりますもの」


「私、自分の好みを話した覚えがないんですが」


「それくらい観察すれば、わかりますの」


(……まあ、付き合いは長いですからね)


 そんなやり取りをしている間に、アリアが端から順にドレスを眺めて、目を丸くしている。


「リーネさん、これ全部リーネさんのために用意したんですか……?」


「そうみたいですね」


「すごい……」


「面倒なだけです……」


 服に興味のないリーネとしては、ため息しか出ない。

 もっとも、今さら逃げられる段階でもなかった。



「では一着目ですわ」


 最初に渡されたのは、深い赤のドレスだった。

 着替えて出ていくと、ノエラとアリアが顔を見合わせている。


「……強すぎますわね」


「赤がすごく目立ちます」


「そうですか?」


「リーネ様より先に、ドレスに目が行ってしまいますわ。それは困りますの」


「では、却下で」


「ええ、却下ですわ」


 次は白。


「綺麗ですけど、少し寂しい気がします」


「アリアさんのおっしゃる通りですわ。リーネ様は黙っていると涼しげに見えますから、色まで静かだと少し冷たく見えてしまいますわ」


「随分な言われようですね」


「褒めていますのよ?」


「まあ、良しとしましょう」


 次は緑、それから紫と続いた。

 四着目を脱ぐ頃には、リーネはすっかり諦めていた。


(なんでドレスってこんなに疲れるんでしょうね?)


「最後の一着ですわ」


 手渡されたのは、淡い青のドレスだった。

 他の四着より装飾は控えめで、生地の色合いが光の加減で少しだけ変わって見えるらしい。


「……あ」


 着て出ていくと、ノエラが珍しく言葉を切った。

 アリアも口元を押さえたまま、何も言わない。


(そんなに違いますか)


 鏡を見ると、そこには相変わらず疲れたような表情をしたリーネ。

 しかし、そのどこか儚げにも見える姿が、ドレスと相まってとても綺麗に見えた。


(……変な相乗効果ですね)


「これに決まりですわね」


「私も、それが一番いいと思います」


「リーネさん、すごく似合ってます」


「そうですか。ではこれにしましょう」


「もう少し驚いてくださいな」


「どうせ元々これが本命だったのでしょう?」


「あら、わかっておいででしたの」


 つまり、これまでのはただの着せ替え人形だったというわけだ。


(まあ、ノエラにはお世話になっていますし、これくらいの茶番なら許容範囲としましょう)



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