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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第四幕 王都の闇編

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第7話 ダンスと練習

「ダンスが踊れない?」


「……ええ、まあ」


「ダンスが踊れない!?」


「二回言いましたね」


 オカルト研究部の部室。ダンスパーティの話をしたら、ノエラがとんでもない声を上げた。


「リーネ様は侯爵令嬢でいらっしゃるのに社交ダンスの一つも踊れないですって!? これは由々しき事態ですわ!」


「そんな大事ですか」


「大事も大事ですわ! パーティでダンスを断るなんて、貴族として……いえ、女性としてあり得ませんわ!」


(そこまで言いますか)


 リーネとしてはダンスなんて飾りみたいなものだと思っていたのだが、どうやらノエラにとっては一大事らしい。


「いえ、しかし、いつ踊る機会があったのかって話ですよ。祖父もそういうことに興味なかったですし」


「それは……まあ、事情は多少は理解できますけれど……」


 ノエラが腕を組んで何やら考え込んでいる。


「レイヴン様とご一緒なんですよね?」


「ええ。はい? あー、まあ、そうなるでしょうね?」


 まったく考えてはいなかったけれど、流石に見ず知らずの人とダンスを踊っている自分は全く想像できない。

 レイヴンだったら、まあ、なんとかなるんじゃないかと思うけれど。


「なるほど……レイヴン様と……ふーん」


 ノエラが意味ありげに口元を隠した。


(何か言いたいのでしょうか?)


 よくわからずに首をひねるリーネ。

 そんなリーネを見て、ノエラはにこにこと笑っている。


「……それで、どうしましょう。踊れないのは事実なんですけど」


「決まっていますわ」


 ノエラが立ち上がった。


「私がお教えしますわ! ノエラ・ユランシエルのダンスレッスン、本日開講ですわよ!」


「本日……?」


「善は急げと申しますもの!」


 部室の机を端に寄せ始めたノエラを見て、リーネは呆けて見るしかなかった。


(この行動力だけは本当にすごいですね)


「さあリーネ様、お手をどうぞ」


「はあ」


 言われるがままにノエラの手をとる。


「私が男役をしますから、リーネ様は私の肩に手を置いてくださいな」


「……こうですか」


「もう少し軽く。そう、添えるだけですわ」


 ノエラの手がリーネの腰に回る。思ったよりもしっかりとした手だった。


「基本はボックスステップですわ。前、横、閉じる。後ろ、横、閉じる。これだけです」


「簡単そうに聞こえますけど」


「簡単ですわよ。ほら、まず右足を後ろに」


 一歩下がる。

 次に左足を横に。

 右足を閉じる。


「そうそう、いい感じですわ。次は前に」


(なるほど、確かにこれだけなら……)


「ではそのまま続けますわよ。はい、後ろ、横、閉じる……」


 何度か繰り返す。足の動き自体は単純だった。

 ただ。


「リーネ様、下を見ないでくださいな」


「足元が気になるんですが」


「相手の顔を見るのが礼儀ですわ。というか、下を見ていると体が丸まって姿勢が崩れますのよ」


(面倒ですね……)


 元々、運動能力はほとんどないに等しいリーネだ。

 足元を見ずに正しい位置に足を置くのは、思った以上に神経を使う。


「……っと」


「あらあら」


 リーネの足がノエラの足を踏んだ。


「すみません」


「いいですわよ、最初はみんなそうですもの。もう一度いきますわよ」


 何度か踏んで、何度か謝って、何度かやり直す。


「……こんなに難しいとは思っていませんでした」


「リーネ様にも苦手なものがあるんですのね」


「私は運動能力の低さには定評がありますからね」


「でも筋はいいですわよ。体の軸がしっかりしていますもの」


「姿勢だけは気をつけろと祖父に言われたのが役立ちましたか」


「ええ。あとは慣れですわね。音楽に合わせて自然に動けるようになれば」


 ノエラがリーネの手を取り直した。


「もう少し練習しましょう。せめて基本だけでも体に覚えさせませんと」


「ですね」


 それからしばらく、部室で二人きりのダンスレッスンが続いた。

 途中からノエラが鼻歌でワルツの旋律を口ずさみ始めて、それに合わせて踊るようになったら、少しだけ足が滑らかになった気がする。


「……ふふ」


「なんですか」


「いえ、リーネ様とダンスを踊る日が来るとは思いませんでしたわ」


「私もですよ」


(……まあ、悪くないですね。こういうのも)


「リーネ様」


「はい」


「レイヴン様とのダンス、楽しみですわね」


「……なんですか急に?」


「いえいえ、別にですわ。ずいぶんと仲良くなったものだなと思いまして」


「まあ、仲は悪くありませんけどね」


「今後にも期待できますわね?」


(ふむ、ノエラが何を考えているのかわかりませんが……)


「なんでしょう、ノエラの期待は裏切りたくなりますね」


「酷いですわ!?」


 そんな軽口をたたきながらも、ノエラのダンスレッスンはその後も続いたのだった。


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