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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第四幕 王都の闇編

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第6話 推測と提案

(妙に引っかかりますね)


 アリアを見送ったリーネはまっすぐ学園へ向かっていた。

 何か用事があるわけではない。ただ、このまま一人で帰ると、さっきの話が頭の中で変に膨らみそうだった。


(天然魔石が減っている。それ自体はまあ、そういうこともあるのでしょうけど)


 問題は、その減り方だろう。

 王都周辺の魔物が強くなっている。騎士団の討伐が難航している。しかも討伐のための魔道具にも魔石を使う。


 そうなると、市場に流れる量が鈍るのも当然だ。

 ただ、それで終わる話にも思えなかった。


(もしも天然魔石が足りなくなったとしたら……)


 叔父が手を出していた人工魔石の事業を思い出す。

 あれは叔父が勝手に妙なことをしていただけだと思っていたが、天然魔石そのものが足りないのなら、その需要は確実にあるはずだ。


(騎士団まで困っているのなら、なおさらですね)


 考えすぎかもしれない。

 とはいえ、確認しないことには始まらなかった。



「失礼します」


 生徒会室の扉を開けると、部屋の中で一人書類と格闘していたレイヴンが顔を上げた。


「おや。今日は出かけていたんじゃなかったかい?」


「ええ。戻ってきたところです」


「無事だった報告……ということであれば、わざわざここには来ないよね」


(相変わらず察しがいいですね)


「レイヴン様以外に適当に話せそうな相手がいないので」


「それは光栄だな。いいよ話そうか」


 レイヴンはペンを置いて、向かいの席を目線で示した。

 リーネは素直に腰を下ろす。


「あなたも知っての通り、カルド商会に行ってきたんです。アリアの付き添いで」


「ああ、孤児院の件だね」


「ええ。そちらはうまくいきましたよ。で、その帰りにノエラと会いまして」


「ノエラ嬢が?」


「天然魔石の仕入れで来ていたみたいです。最近、出回る量がかなり減っているそうで」


「……なるほどその件は僕も少し聞いているよ」


 やはり、業界だけの話ではないらしい。


「カナックさんの話だと、本来は騎士団が討伐した魔物から取れた魔石をカルド商会で扱っているそうなんですが、最近はそちらも大変みたいなんですよ」


「大変?」


「王都周辺の魔物が前より強くなっていて、討伐が難航しているとか。しかも騎士団はその討伐で魔道具も多く使うそうです」


 そこで、レイヴンの表情が少しだけ変わった。


「魔物の異変か」


「噂くらいは聞いていましたか?」


「うん。ただ、商会にまで話がいっているとなると、思っていた以上に重い事態なのかもしれないね」


 リーネは小さく頷いた。


「レイヴン様」


「なに?」


「騎士団の装備にも魔石は使いますよね」


「もちろん。武器の強化も、防具の補助も、魔道具もだ」


「だったら、騎士団の方も足りなくなるはずですよね」


「……そうだね」


「それでも討伐は止められない」


 そこで一度言葉を切った。


「仮にです。天然の魔石が足りなくなったとしたら、どうすると思います?」


「他国から買い取るか……いや、でもすぐに供給できるわけでもないし……そうなると人工魔石とか……」


 言いながら、レイヴンは顔を上げた。


(やはり頭によぎったようですね……)


 別に人工魔石自体が悪というわけではない。

 ただ、私たちに限っては、叔父のせいであまりいいイメージがないのも事実だ。


「あり得ると思う。表向きは天然魔石の買い付けでも、足りないなら代替は必要だからね」


(やっぱりそこに行き着きますか)


 窓の外に目を向ける。

 今日はいい天気だったが、今の気分はあまり晴れやかではない。


「もしも、別々の話につながりがあったとしたら……叔父の件、そして天然魔石の不足……それに……」


 もう一つ数えようとしてやめた。これはまだ憶測の域を出ない話だ。


「騎士団が叔父の会社から人工魔石を買っていたとしたら……そこに何か裏があったとしたら」


「……うん」


「気のせいならそれでいいんですけど」


 よくよく考えてみたら、あれだけやらかしていた叔父が、リーネが断罪するまで何も罪に問われなかったのは不自然ではないだろうか。

 そこにはひょっとして何か力が働いていた可能性があるのではないか。


「もちろん、憶測ですけどね……」


 リーネ自身も考えすぎだとは思う。暇すぎて、変に気になったことをつなげてしまっただけだと思う。


(でも、どうせやることはないです)


 暇つぶしにはなる、そのくらいの感覚だ。


「レイヴン様、騎士団まわり、少し見てもらえますか?」


「装備の調達先とか?」


「その辺りですね。あとは魔物の異変について、表に出ていない話があるなら聞いておきたいです」


「わかった」


 そこまではすぐだった。

 ただ、レイヴンは頷いた後もしばらく黙っていた。


「……でも、それとは別に」


「別に?」


「ちょうどよく、もっと表から入る方法もある」


 そう言って、机の端に置かれていた封筒を持ち上げた。


「来月、貴族向けのダンスパーティがあるんだ。生徒会長として僕も顔を出さなきゃいけない」


「ほう」


「騎士団の上の人間も来るし、魔石関連の商人も集まる。露骨に探るには向かないけど、話を拾うには悪くない場だと思う」


 なるほど、とリーネは思った。

 裏から探るのも必要だが、表でしか見えないものもある。


「侯爵令嬢の看板にも、たまには働いてもらうわけですね」


「そういうこと」


「いいですよ。行きましょう」


 即答すると、今度はレイヴンの方が少し驚いたようだった。


「もっと嫌がるかと思った」


「情報が欲しいのは事実ですからね。面倒でも、そのくらいは我慢しますよ」


「助かるよ」


 そこでレイヴンが、少し言いにくそうに付け足した。


「ただ、一つだけ問題があるんだけど」


「なんですか?」


「パーティだから、たぶん一曲くらいは踊ることになる」


「……踊る?」


「むしろ踊らない方が目立つかな」


 それは困る。

 目立たないために行くのに、そこで目立っていては意味がなかった。


「私、社交ダンスなんて習ってませんよ」


「本当に?」


「本当です。そんな機会はありませんでしたし」


 両親が亡くなってからは特にそうだ。

 祖父はそういう場を無理に求めなかったし、叔父に至っては最初から期待していないようだった。


「……それなら、練習するしかないね」


「誰とですか」


「ノエラ嬢あたりに頼めば、喜んで引き受けてくれそうだけど」


(それは、すごく張り切る顔が見えますね)


 大変力になってくれるとは思う。

 思うのだが、それはそれで少し面倒そうだった。


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