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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第四幕 王都の闇編

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第4話 商会と再会

(改めて見ると大きいですね)


 カルド商会の建物を見上げて、リーネはそう思った。

 以前は気にもしていなかったが、王都の商業区にある三階建ての建物は外壁まできれいに手入れされていて、長く続いている商会なのだろうとすぐにわかる。


「……」


 そしてそんな建物を見上げる隣のアリアはやけに静かだった。


「緊張してますか?」


「し、してないですよ!」


(嘘が下手ですね)


 アリアの手が少し震えている。まあ、無理もない。これから話すのはこれほどまでに大きな商会の代表。

 しかも、それだけではなく、自身の生みの親でもあるのだから。


「大丈夫です。リーネさんと一緒なんですから!」


 生暖かい視線で見られていることに気がついたのか、アリアはそう言ってリーネに笑顔を作った。


「ふむ、まあ、番犬くらいの役割は果たしますよ。それじゃあ、行きましょうか」


「あ、はい……よしっ!」


 アリアは気合を入れると、扉を開けて中へ入っていった。

 リーネもすぐにその後を追うと、すぐに従業員らしき人が出迎えてきた。

 名前を告げると、そのまま二階の応接室へ案内される。


「お待ちしておりました」


 応接室にはカナックが既に座って待っていた。

 立ち上がりリーネに軽く会釈してから、すぐアリアに目を向ける。


「……っ!」


 そして、酷く驚いたような表情を一瞬だけ浮かべた後に、すぐに笑顔を作った。


「……アリア……さんも、よく来てくれましたね」


「……はい。お邪魔します」


 アリアの返事はどこかぎこちない。

 カナックの方はビジネススマイルをしているが、先程の驚きの表情をリーネは見逃さなかった。


(お互いにどう接していいかわかっていないみたいですね)


 リーネは黙って、出されたお茶に口をつけた。


「……それでは、早速ですが」


 カナックが資料を広げた。


「まず、孤児院の建物についてですが、屋根と外壁の修繕を優先したいと考えています。それから寝具や食料の定期配送も、今より増やせないかと」


「はい」


 アリアは机の上に広げられた資料を一生懸命に読み取っている。

 それはまるで何かから目を逸らしているかのように見えた。


(心ここにあらずという感じでしょうかね)


 多分、アリアの内心が複雑すぎて、資料にも集中できていないのだろう。

 ただ頷くだけになってしまっている。

 もちろん、カナックが変な提案をしてくることはないだろうが、さすがにこのままでは良くない。


「アリア」


 リーネが声をかける。


「仕事の話よりも先にすることがあるんじゃないですか?」


「えっ。あ、いえ……」


「カナックさんも、驚いたのはわかりますが、動揺しすぎです」


 リーネに見つめられたカナックは一瞬きょとんとした後、バツが悪そうに笑った。


「そう……ですね……私としたことが少し焦ってしまいました」


 申し訳ないと、アリアに頭を下げた。


「あ、いえ……私の方こそ……あ、あの!」


 意を決したように、アリアはペンダントを手に取り、カナックに見せた。


「これのことなんですけど!」


 それは、アリアが母親から受け継いだ半月のペンダントだった。

 カナックはそれを見て、懐かしそうな、寂しそうなそんな表情を浮かべた。


「はい。間違いありません」


 カナックもジャケットの下から同じようにペンダントを取り出して、アリアに見せた。


「……私の……お母さんと同じペンダント……」


 アリアは自分のペンダントとカナックのペンダントを見比べ、最終的にカナックの顔を見た。


「そちらは間違いなく私があなたの母親にプレゼントしたものになります」


「それはつまり……」


「……ええ、そうですね。私は血縁上ではあなたの父親になります」


「……ああ」


 聞いて、それが本当だとは理解していたのだろう。

 しかし、実際に本人の口からそう言われると、やはり動揺してしまうのも無理はない。


「……」


「……もちろん、すぐに受け入れられないということはわかっています。これまでのアリア……さんの境遇は聞いておりますし」


「それは……はい……すみません」


「ですから、少しずつお互いのことを知っていくことから始めませんか?」


 カナックはそう言って笑いながら、アリアのペンダントに自分のペンダントを重ねて見せた。


「……あっ」


 重なった半月のペンダントは一つの円の形になった。


「……そうして、いつの日かきっと私たちはもっと良い関係になれると……私はそう信じています」


「……はい」


 緊張していたアリアもようやく少しだけ笑顔を見せた。


(これは確かに若い頃にモテたでしょうね)


 二枚目の顔から、優しく、きざったらしいセリフ。

 完全に二人の世界に入ってしまっているようだった。


 そんな二人を見ながら、リーネは少し甘くなったお茶を飲んでいた。


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