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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第四幕 王都の闇編

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第3話 来訪と相談

(暇ですね)


 リーネはオカルト研究部の部室で一人、本のページをめくっていた。

 レイヴンに頼んだ調査はすぐに結果が出るものでもない。他に手がかりもない以上、今は特段やることもない。


(まあ、待つしかないんですけどね)


 なんとなく上の空の状態でページをめくっていく。

 そんな時、部室のドアがノックされた。


「リーネ嬢、いるかい? お客さんを案内してきたよ」


 ドアを開けて顔を出したのはレイヴンだった。その後ろに、見慣れた、しかし、ここでは見慣れない顔があった。


「……アリア?」


「こ、こんにちは、リーネさん!」


 いつものシスター服ではなく、白いブラウスに紺のスカートという格好をしたアリアが、レイヴンの後ろから顔を出した。


「おやおや、私の暇を潰しにでも来てくれたんですね。助かります」


「えっ? 暇……? あ、一応お願いがあったのは確かですが……」


 満面の笑みを浮かべたリーネにアリアは少し戸惑ったような表情をした。


「学園の外に立っていたところをたまたま見かけてね、リーネ嬢に用があるということだったから案内したんだよ」


「なるほど。実に品行方正の生徒会長様らしいですね」


「なんだか意味深だね……」


 レイヴンはリーネの言葉に肩をすくめた。


「まあまあ、案内ご苦労さまという気持ちはありますからね」


「それは本当かい? まあ、いいや。じゃあ、僕はこれで。用が済んだら一応連絡だけしてくれればいいからね」


「ええ、わかりました」


 レイヴンが去っていくのを見送って、リーネはアリアに目を戻した。

 アリアは部室の中を見回している。なんだか目が輝いているようだった。


「すごい本の量ですね……」


「オカルト研究部ですからね。怪しい本ばかりですよ。危ないやつもあるので注意してください」


「えっ……!?」


 リーネの言葉に、近づいて本棚を眺めていたアリアが驚いたように身を引いた。


「冗談です」


(怪しい本だらけなのは本当ですけどね)


「とりあえず座ってください。お茶、入れますから」


「あ、おかまいなく……!」


 アリアの言葉を無視してリーネがお茶を用意している間に、アリアは落ち着かなさそうに椅子に座った。

 やっぱり学園は落ち着かないらしい。


 リーネはお茶をアリアの前に置いて、向かいに座った。


「それで、どうしたんですか? 遊びに行くのでしたら歓迎しますけど」


「あ、いえ、遊びに行きたいのはやまやまなんですけど……」


 アリアはカップを両手で包んだまま、少し視線を落とした。


「実は、リーネさんにお願いがあって来たんです」


「お願い?」


「近いうちに、カルド商会に行くことになりまして」


「カルド商会に……」


「はい。孤児院のことで、カナックさんとお話することになって」


 カナックさん、とアリアは言った。お父さん、ではなく。


(まだそこは「さん」なんですね)


 知らされたとは聞いていたが、いきなり父親ですと言われても困るだろう。

 例の息子のこともあって、アリアとしてもどうしていいかわからないのかもしれない。


(こればかりは時間が解決してくれるのを待つしかないですね)


「どういう話をする予定なんですか?」


「孤児院の今後のことで、カナックさんが色々提案してくださるらしいんです」


 アリアはそこで少し言い淀んだ。


「でも、私、そういう話が全然わからなくて……こういうことは神父さまが決めてくださっていましたので……」


「なるほど。つまり私にも一緒についてきてほしいと?」


「……はい」


 アリアは申し訳なさそうに頷いた。


「まあ、一人で商会の会長と話すのは落ち着きませんよね」


「……はい」


(さて、どうしたものでしょう)


 すがるような目でリーネを見ている。


(とはいえ、迷う余地はありませんよね)


 なにせアリアは数少ないリーネの友人なのだから。


「まあ、隣でお茶を飲むくらいには付き合いますよ」


「本当ですか! ありがとうございます! リーネさんがいてくれるだけで安心です」


 アリアはほっと息をついた。断られるんじゃないかと不安だったのだろう。


「そうですか」


(まあ、どうせ暇ですからね)


 上の空のままここで本を読んでいても、どうせ内容は頭に入ってこない。

 それだったら友人の頼みくらい聞いてあげてもいいだろう。


「それで、いつですか?」


「明後日の午後です」


「わかりました。では、学園の門で待ち合わせましょうか」


「はい!」


 アリアはぺこりと頭を下げて、それから少し迷うように口を開いた。


「あの、リーネさん」


「はい?」


「カナックさんのこと……どう思いますか?」


「どう、とは?」


「その……信じていい人なのかなって」


 声が少しだけ小さくなった。


(まだそこが引っかかっているんですね。まあ、あれの父親と考えると不安なのはわかりますが)


 リーネの見たところではカナックは子どもの方と違って、かなりまともな大人に見えた。

 しかし、リーネはそれをアリアに伝えることはしなかった。


「さあ。それは私ではなく、アリアが決めることですからね」


「……そうですか」


「ただ」


 リーネはアリアの胸元に目を向けた。


「あの人も今でも持っていましたよ。半月のペンダント」


「……!」


 アリアの手が、無意識に自分の胸元に触れた。

 母の形見の半月のペンダント。その対になる片割れを、カナックが持っていた。


「……はい」


 アリアは小さく頷いた。

 その表情が少しだけ柔らかくなったように見えた。


「さて、せっかく来たんですから、もう一杯くらい飲んでいきますか?」


「はい! あ、でもあんまり長居すると、レイヴン様にご迷惑が……」


「大丈夫ですよ。それが彼の役割ですから」


「それはレイヴン様がかわいそうじゃないですか……?」


「大丈夫ですよ。むしろ、連絡がこないって迎えに来るまでゆっくりしましょう」


「いいんでしょうか……」


 リーネはお茶を淹れなおしながら、アリアをちらりと見た。

 苦笑いをしているけれど、さっきより、だいぶ肩の力が抜けているように見える。

 きっと、リーネが一緒にいてくれることで安心できたのだろう。


(……ちゃんとした親子の対面。見守らせてもらうとしましょうかね)


 少なくとも、部室で本を読んでいるよりはずっと面白そうだった。


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