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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第四幕 王都の闇編

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第2話 調査と噂

「残念ながら、あまりいい報告ではないんだ」


 やってきてそうそう、レイヴンは開口一番にそう言った。


「おや、あなたにしては珍しいですね」


 これまでレイヴンからは、かなり有用な情報をいくつも持ってきた。そんなレイヴンがこんな気まずそうにしているのは初めてのことだ。


「しかし、それでもわかったことがあるのでしょう? こうして報告に来たのですから」


「少しだけね。本当に少しだけど」


「楽しみにしていますよ」


 リーネがそう言うと、レイヴンは苦笑いを浮かべた。


「まず、死神教団についてだけど、他国での活動は確認が取れた。死神を信仰の対象とするカルト教団で、いくつかの国では危険組織として認定されているよ」


「以前にも言っていたことですね」


 ここまではレイヴンから既に聞いていたことだ。


「問題はこの国なんだけど……全く記録に残っていなかった」


 レイヴンは資料を何枚かテーブルに広げた。


「公的な登録には一切出てこない。死神ギルドにも聞いてみたんだけど、存在すら知らないようだった」


「へぇ、教会にまで聞きに行ったんですか」


「ああ、死神ギルドからすれば異端だからね。唯一、ギルドマスターが名前を知っていたくらいだ」


「それでもその程度だったということですか」


「少なくともこの国では、表立って活動している痕跡は全くなかったね」


「ふむ……しかし、我々は間違いなく人身売買組織の売り先に死神教団の名前を見つけているわけです」


「そうなると他国に売られたか……これは大変そうかもしれないね……」


 レイヴンはため息をついた。さすがに他国にまで調査を広げるのは大変だろう。

 しかし、リーネはにやりと笑って言った。


「レイヴン様、一つの可能性を忘れていますよ」


「一つの可能性?」


 なんだかわからないという様子のレイヴンに、リーネは意味深な笑みを浮かべて告げた。


「それは死神教団が誰かに意図的に隠蔽されているという可能性です」


「隠蔽って……それはまさかこの国の貴族とか……」


「もしくは王族とかですかね?」


「……こりゃ、いつもにまして凄いことを言い出したね」


 レイヴンは少し周りを見渡してから、リーネの顔を見た。

 リーネも一応この国の貴族の一人だ。それにも関わらず、王族を疑うようなことを言い出したので、同じ貴族のレイヴンとしては、思うところがあるのだろう。


「……さすがにそれは……いや、でも……」


 あり得ないと言おうとでもしたのか、しかし、レイヴンはなぜか言葉を濁らせた。


「おっと、レイヴン様の方でも何か怪しい事実でもあったんですか?」


 リーネは興味津々にそれをつっついた。


「ああ、これが……手がかりと呼べるかも怪しいんだけどね」


 レイヴンが困ったように頭をかく。


「第二王子が、死神教団がどうとか言っているらしいんだ」


「第二王子……ですか?」


 予想外の展開にリーネにしては珍しく呆気にとられたような反応をしてしまった。


 第二王子。元婚約者。両親が亡くなった後、あっさりとリーネのことを捨て去った人物だ。

 もっとも、リーネとしてはさほど気にしていない。王族として合理的な判断をしただけだろうとむしろ評価したくらいだ。


「あの、第二王子が死神教団と関係が?」


 リーネとしては、件の第二王子の人となりはよく知っている。少なくともリーネの知る限りでは怪しげな教団に関わるような子ではなかったはずだが……


「本人が教団に関わっているとかじゃないんだ。どちらかというと……ファンクラブみたいなものにハマっているらしくてね。死神かっこいい、みたいな。そのファンクラブの集まりを死神教団というらしくてね」


「……は?」


 思わず素の声が出た。


(なんですかそれは)


「王族周辺の噂を拾ったら出てきた話でね。でも、割と信憑性の高い話なんだよ」


「死神がかっこいい、ですか」


(まあ……否定はしませんけどね)


 本物の死神としてはなんとも言い難いが、面白い話ではある。


「しかし、手がかりとしてはちょっと弱いですね……」


「だよね。さすがにカルト教団と同じってことはないだろうし」


「ええ、少なくとも第二王子は知らないでしょうね」


 思い浮かべるのは第二王子の顔。

 これでも元婚約者だ、あまり顔を合わせたことはなくても、それなりに知っているつもりだ。

 今はあれからかなり時間が経っているとはいえ、おかしなカルトに協力するような子ではないと思うのだが……


「しかし、でも、一応、もう少し詳しく調べてもらうことはできますか?」


「そりゃ、できるだろうけど……」


 レイヴンは首をかしげている。

 レイヴンとしても関わりは薄いと考えているのだろう。だからこそ、最初にいい報告はないと言い切ったのだろうし。


「ええ、何もなければそれでいいのです。しかし、このタイミングでですよ? 死神教団という名前が出てきたこと。何やら不自然ではありませんか?」


「……偶然……と言ってしまえばそれまでだけど……」


「たとえば誰かがその名前を出して、それを第二王子が言葉だけ聞いて使っているとか」


 悪意なく、しかし、薄いつながりがある可能性だ。


「なるほど……確かに……そうなると王族の周りに教団に関わりがある人物がいる可能性があるということか……」


「まあ、ここまで言っておいてなんですが、大分こじつけだとは思いますがね」


 リーネはふふっと笑った。

 しかし、リーネは心のどこかでなにやら確信のようなものを感じていた。


(このタイミングで死神教団の名前が出てきたこと……ふふっ、まるで何かに導かれているみたいじゃないですか)


 それに少しは従ってみるのも面白いだろう。リーネはそんなことを考えていた。

 





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