第28話 こちらの動きを学習する指揮個体を、即興の連携変更で翻弄して最速討伐する
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前回(第27話)のラスト、突如として頭上から降ってきたのは、第7小隊を撤退へと追い込んだ「変異指揮種」。
知性を持ち、部隊の連係を学習する厄介な相手に対し、シエル率いる第2小隊がどう立ち向かうのか――。
ドォォォンッ!!
変異指揮種が着地で路面を砕き、雪煙を巻き上げながら突っ込んできた。
建物の2階はある巨体。
振り下ろされた丸太のような腕を、俺は紙一重でかわす。
路面が爆発するように砕け散る。
続けて横薙ぎに迫る左腕を、身を屈めて潜り抜け、脇腹へ両刃剣を一閃!
だが――硬い。
分厚い筋肉に阻まれて刃が浅い。
怪物は巨体を捻り、力任せに俺を弾き飛ばした。
「硬いな、こいつ!」
「なら、柔らかい場所を探すまでだよ!」
アンが大鎌を構えて左から詰める。
ラルクがハルバードを肩へ差し込み、巨体を外へ受け流そうとするが――怪物は力尽くで押し切り、ラルクを壁際まで吹き飛ばした。
「ラルク、平気か!?」
「問題ない、掠っただけだ」
アンが即座に背後へ回り込み、首筋を裂く。
だが巨躯の質量で押し返され、深追いせずに距離を取った。
『――右肩の動作に遅延を確認。左側との差、0.18秒です』
通信機から、ペイロの冷静な声が飛ぶ。
「0.18秒あれば十分だ。アン、まだ右肩ばかり狙うなよ。遅れた瞬間だけ拾うぞ」
怪物がラルクへ突進する。
ラルクが肩をハルバードで受け流し、右腕の戻りがわずかに遅れた瞬間――。
俺が滑り込み、右肩を両刃剣で深く切り裂いた!
さらにアンががら空きの脇腹へ鎌を走らせる!
怪物は黒い血を撒き散らしながら咆哮し、腕を振り回して俺たちを遠ざけた。
だが、すぐに追ってこない。
じっと、俺たちの立ち位置を観察している。
『――警告。直近の攻防で、対象は第2小隊の連携パターンを学習しています』
「学習……? 私たちの動きを読んでるの!?」
「なるほどな」
長年同じ3人で戦ってきたからこその黄金パターン。
数合打ち合っただけで、規則性を見抜かれたらしい。
「よし――なら、いつものやり方をやめよう」
「急だな」
「出来ないとは言わせないぞ」
「言ってろ」
ラルクが踏み込む。
左へ押し流すと読んだ怪物が左へ身体を開いた――その瞬間!
ラルクは柄を逆へ送り、巨体を右側へ無理やり押し戻した。
「――!?」
体勢を崩した怪物の内側へ、俺ではなくアンが突っ込み、脇腹へ鎌を引っ掛ける!
俺は怪物が警戒した位置をわざと外し、悠々と反対側へ回って無防備な左肩を切り裂いた!
『対象の回避予測に大きな乱れを確認!』
「そのまま続けろ! 決まった順番に戻すな!」
そこからは、完全な即興アドリブ合戦だった。
ラルクが崩した隙をアンが狩り、アンが作った道をラルクが使う。
俺は決まったタイミングでは飛び込まず、怪物が待ち構えた位置を外して急所だけを容赦なく削る。
型を崩しても、長年背中を預け合ってきた俺たちに迷いはない。
1人が動けば、残る2人が即座に新しい正解を作る。
怪物は必死に食らいつこうと暴れ回るが、思考が完全に追いついていない。
負傷した右肩を庇うせいで、重心がどんどん狂っていく。
『左脚への荷重が急増! 踏み直しに遅延!』
「逃がすな、固めろ!」
アンが鎌を脚へ掛け、ラルクが肩へ圧力をかける!
怪物が強引に腕を地面へ叩きつけ、全方位へ猛烈な回転を放った。
吹き荒れる白煙。
『対象、雪煙の奥から接近! 正面18メートル!』
ペイロの警告と同時に、白い幕を破って怪物が俺へ突っ込んできた!
俺は外へ逃げず、あえて内側へ潜り込む!
腕の下をすり抜け、怪物の胸元へ。
俺を追おうとした怪物の脇腹へ、死角からラルクのハルバードが突き刺さり、アンの方向へ押し出す!
アンは攻撃せず、あえて道を空けた。
鎌が来ると読んで身を捩った怪物は、誰もいない空間を警戒し――真正面の首元がガラ空きになった。
「正面をもらうぞ!」
「右は押さえる!」
「左脚も止めた!」
ラルクとアンが巨体の逃げ道を完全に塞ぐ!
正面から間合いを詰めた俺は、振り下ろされる左腕をかわして懐へ飛び込んだ。
踏み込みの遠心力をすべて乗せ、両刃剣を首筋へ叩き込む!
ズバァッ!!
前端が分厚い肉を裂き、回転した後端が寸分違わぬ傷口をさらに切り開く!
膝をついた怪物が、最後の力で首を持ち上げた。
剥き出しになった喉元へ――。
「これで終わりだッ!」
切っ先を顎下から一気に突き立て、横一文字に薙ぎ抜いた!
ドサァッ……!!
怪物の巨躯が崩れ落ち、二度と動かなくなった。
『……生命反応、完全停止。変異指揮種の討伐を確認しました』
ペイロの安堵した声が響く。
統率を失った周囲のハウラー級どもは、悲鳴を上げて散り散りに逃げ出していった。
「変異指揮種ってのも、大したことなかったな」
ラルクが息を吐く。
「……第7小隊は、これと奇襲同然で戦ったんだよね」
アンが呟く。
あらかじめデータを持って挑んだ俺たちと、何の準備もなく群れの中で遭遇した第7小隊。
条件が違いすぎる。
「本部に報告を上げてくれ、ペイロ。俺たちは周囲を警戒しながら戻る」
『了解しました』
「よし……これでやっと、温かいベッドで寝られるな」
「隊長、それ帰るまで言わない方がいいよ」
「今さら縁起を気にするなよ!」
「俺はまだ、美味い飯を諦めてないからな」
「ラルク、そこまでいくと執念だよ……」
俺たちはくだらない減らず口を叩き合いながら、自分たちの足跡を辿って帰還の途についた。
第28話をお読みいただきありがとうございました!
第2小隊の阿吽の呼吸と、型に囚われない即興のスイッチ戦術で、強敵・変異指揮種を見事に討伐完了!
第7小隊の無念を晴らし、これでようやく温かいシャワーとベッド、そしてラルクの美味い飯にありつける……はず!?
「変幻自在の連携バトルが熱かった!」「第2小隊のチームワーク最高」「次こそ本当に休めるのか……?」など、少しでも楽しんでいただけましたら、
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