〇消毒ビームを放つ聖女と、包丁を持った銀髪美女
オレの脳内で『オレの人生ハイライト(全2ページ少なっっ!)』が光が逃げ出す速さで再生し終わった時、イノシシの足元から、か細い悲鳴が聞こえた。
「嫌ぁぁぁぁッ! 近寄らないでぇぇ!!」
見ると、純白のフルフェイス防護服を着た背の高いスタイルの良い少女が、イノシシに壁際まで追い詰められていた。
「大腸菌! 黄色ブドウ球菌! サルモネラ菌! ああっ、目視できるレベルで菌糸がダンスしてるわっ! 不潔! 汚物! 消毒よ!!」
少女――シルヴィが、狂乱状態で杖を振り回す。
彼女はシェルターが崩壊して初めて外界に出たばかりの、純粋培養の箱入り娘だった。外界の空気に対する恐怖が、彼女の免疫システムを暴走させ、信じられないほど巨大な魔力を生み出していた。
「この空間ごと滅菌する! 『戦略級放射殺菌』ッ!!」
「待てバカ! お前もろともオレたちまで消し炭になるぞ!!」
後にシルヴィと聞くことになる少女の杖の先端に、太陽のような光が収束していく。
万事休すか。
そう思った瞬間、上空のガラス窓を蹴破って、一つの影が降ってきた。
降ってきた女が、背中に背負っていた巨大な「ミスリル製の鍋蓋」で、シルヴィの極太レーザーを真正面から弾き飛ばしたのだ。
レーザーは天井を貫き、施設を半壊させた。
「な、何するのよ! 消毒の邪魔しないで!」
「バカ言わないで! そんな高出力の熱線を当てたら、せっかくの最高級の『極上肉』が炭になっちゃうでしょうが!!」
怒鳴り返したのは、タンクトップにミニスカートという姿に、腰巻きの白い業務用エプロンを付けた銀髪美女――リズだった。
「素晴らしい……。野生の運動量で引き締まった赤身に、粘性の鎧が保温材になって蓄えられた分厚い皮下脂肪。完璧な『極厚タタキ』の素材よ!」
彼女は、巨大な中華包丁を時折キラッと輝かせながら、一般人ならその巨躯を視認しただけで気絶してしまうダンプカーサイズのイノシシを、まるでスーパーの特売肉を見るような目で見つめていた。
リズは、あの大融解の日に「有名ホテルレストランで自分のコースを出す」という夢を理不尽に奪われた。
その絶望と執念が、彼女の脳内から「恐怖」という感情を完全に消し去り、あらゆるものを「食材」に変換する戦闘狂へと変えていた。
「あんたたち! 突っ立ってないで手伝いなさい! 私たちの宴の幕開け……最高の『箸始め(はしはじめ)』を作るわよ!」
「誰が手伝うか! もうドロンするわっ!」




