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『暴走懐石マッド・キッチン ~古代魔獣を食い尽くす! 溶氷期(メルティング・エイジ)のグルメハンター~』   作者: 筆のキュイジニエ
最終章 その2:水菓子(みずがし)は、ハチミツ・ベアーと氷山シャーベットの死闘
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〇強酸ハチミツ・ベアー登場! 失われた「ラストオーダー」を取り戻せ 

 

 隔壁の向こうは、むせ返るような甘い匂いに満ちた「熱帯雨林エリア」だった。

「ひぃぃぃッ! ベタベタする! 大気中の糖分が私の防護服に付着して、カビと細菌の培養地になっちゃうぅぅ!」 

 純粋培養の無菌室インキュベーターで育ったシルヴィが、この世の終わりのような悲鳴を上げる。

 彼女にとって、高濃度の糖分は「世界で一番不潔なバイ菌の餌」でしかない。


「消毒よ! 虫歯菌(ミュータンス菌)もろとも、フッ素コーティングで皆殺しにしてやるわ!」

「落ち着けシルヴィ! レーザー撃ったら粉塵爆発……いや、砂糖爆発シュガー・エクスプロージョンが起きるぞ!」 俺が制止する間もなく、密林の奥から巨大な影が姿を現した。 

 全長8メートル。

 全身の毛穴から、沸騰する黄金色のシロップを滴らせた凶暴なグリズリー。 

『ハチミツ・ベアー』だ。


「ガアアアアアッ!!(訳:俺の蜜を舐めるな)」 

 ハチミツ・ベアーが腕を振り下ろす。

 飛び散ったシロップが岩に触れた瞬間、ジュワッと音を立てて岩を溶かした。

「強酸性のハチミツだと!? 糖度が高すぎて浸透圧で細胞の水分を全部持っていかれるぞ!」


「素晴らしいわ……!」

 リズが、愛用の巨大中華包丁を震える手で構えた。

「「「えっっ、どこが?」」」 


 彼女の目に、狂気と……ほんの少しの涙が浮かんでいる。

「あの日の……大融解ザ・メルトの日に、私が出せなかった懐石の最後の一品。……『水菓子』。この極上のシロップがあれば、私のコースが、やっと完結する……!」 

「「「・・」」」

 全身から陽炎のように立ち上る凄まじい気配に皆、息を吞んだ。


 失われたホテルレストラン、

 失われた同僚たち、

 失われたお客様たち

 そして失われた和洋中伊の師匠たちへの鎮魂、

 失われたそれらが織りなすトラウマ。

 彼女の料理への執念は、その哀しい過去を断ち切るための通過儀礼なのだ。


「あの日の理不尽な『ラストオーダー』は、今日ここで私が取り消す! この世界の絶望なんて、極上の砂糖スイーツで上書きしてやるわ! アッシュ、あいつの蜜腺タンクを撃ち抜くのよ!」


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