〇宴は終わらない! スイーツは別腹(※食材は凶暴なクマです)
巨大な釜のご飯を腹がはち切れるまで喰った俺たちは、甲板に大の字に寝転がっていた。
だが、マッド・キッチン号のエンジンは、まだ唸りを上げている。
「さて、懐石コースも完食したし。これで宴も終了か?」
俺が聞くと、リズがきょとんとした顔で俺を見下ろした。
「何言ってるの、アッシュ? まだ終わってないわよ。
懐石の最後には『水菓子』があるでしょ!」
リズが、油まみれの新しい地図をドサリと広げた。
「南の密林に『ハチミツ・ベアー』っていう、全身が極上の蜜でできた凶暴なクマがいるらしいの! それに、極北の『氷山シャーベット』を添えて……」
俺は深~くため息をつき、そして、たまらず笑い出した。
「まったく。お前らの胃袋は異世界にでも通じているのか。……そうだな。食後の美味いコーヒーも欲しいところだ。幻のコーヒー豆の魔獣でも探すか」
「フフッ。スイーツは別腹だからね! でも食べる前にしっかり歯磨き魔法をかけるのよ!」
シルヴィが防護服のヘルメットを被り直し、再び無菌バリアを張る。
「ヒャッハー! 知ってるボス、超高級な『ルアークコーヒー』ってのは、動物の腸内発酵されたフンから採集された未消化のコーヒー豆なんだぜ! 幻の魔獣に最高級の豆を食わせて、超強力な『便秘薬(下剤)』をブチ込んで大量生産させてやる!もともと世界一高価で希少な最高に芳醇な香りのする「コピ・ルアク」を幻の魔獣から作れたら闇市でボロ儲けできるに違いねえ! 俺は便秘薬弾の準備をするぜ!」
ジョーカーが極悪な笑みを浮かべ、対物ライフルの弾倉をリロードする。
「……お前が淹れたコーヒーだけは絶対飲まねえ!」
俺が疲労ツッコミを入れる中、リズは静かに愛用の中華包丁と下ごしらえに使う古びたペティナイフを月明かりで研ぎあげる。
世界は相変わらず沈み続けている。
だが、こんなにも美味いものを食べて、バカみたいに笑っていられるなら、このクソみたいな終末世界も案外捨てたもんじゃない。
「行くぞ! デザートの時間だ!」
「「「オーッ!!」」」
羽釜を引っ張るマッド・キッチン号が、海を切り裂いて爆走し始める。
終わらない狂気の晩餐会の食材を求めて、俺たちは水平線の彼方へ。
ごちそうさまは、まだ早い。
【まだまだ終わらないよ~最終章 その2へ続く】
次回(来週土曜)、最終章 その2:水菓子は、ハチミツ・ベアーと氷山シャーベットの死闘 です。
「常識と物理法則がメルトダウンしている」というアッシュの過労ツッコミを楽しみにしてくださると嬉しいです。
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