〇神獣を家電扱い!? ドームメルトダウンのカウントダウン
麒麟が角から高圧縮のプラズマ弾を乱射する。
黄金の稲穂が焼かれそうになるが、リズがミスリルの特大鍋蓋で完璧にはじいた。
「やめなさい! 籾殻が焦げて嫌な匂いがつくでしょ!」
「リズ、どうするんだ!? あいつは『雷』そのものだ! 俺の対物ライフルじゃただの避雷針だぞ!」
「倒す必要はないわ! アッシュ、知ってる!? 古来のひとびとが雷を『稲妻』という理由を! 雷の莫大な電気エネルギーは大気中の窒素を分解し、植物にとって最高の『天然肥料』になるの! つまりあいつの雷撃こそが、極上の米を育てる最後のスパイス! そして、最高の『超高火力IHヒーター』よ!」
「神獣を家電扱いかよっ!!」
俺の過労ツッコミを無視し、リズの料理コンボが炸裂する。
「ジョーカー! 『御釜』の準備は!」
「OKボス! 遺跡の最深部でヤバそうな封印の札がベタベタ貼ってあった『オリハルコン製の祭壇』、中身の怨霊を捨てて持ってきたぜ! どう見ても羽釜の形だ!」
「捨ててきたって(汗っ)呪われるぞ!!」
リズの指示のもと広場に設置された黒い釜へ、シルヴィが一瞬で刈り取り精米した米を放り込む。
「シルヴィ! お水! 不純物ゼロのピュアな『超純水』を注水ッ! 初手は米が一番水を吸うから、秒ですすいで捨てるわよ!」
「こき使わないでよ! 『極大聖水精製』! ああっ、アタシの魔力がお米の研ぎ汁に吸い取られていくぅぅ!」
シルヴィが白目を剥きながら魔法で水を注ぎ、リズが釜の中で竜巻を起こす勢いで米を研ぐ。
「おいリズ! 浸水に一時間かかるんだろ!? 雷帝相手に俺たちの体力が持たねえぞ!」
「安心なさい! 前回の『大王イカの極上天ぷら』の油を少し釜の底に塗っておいたわ! 油膜効果で浸水時間は10分に短縮よ!」
「料理の知恵がサバイバルに直結しすぎだぁ!」
そして10分後。
「さあ、麒麟! 仕上げよ! あなたの雷で、一気に炊き上げよ!」
リズが挑発すると、麒麟の怒髪天が天を突き、ドーム全体を揺るがす最大出力の落雷を放った。
「今よ! 『避雷針炊飯』ッ!!」
リズは鍋蓋を避雷針のように天高く掲げ、数千万ボルトの雷を真っ向から受け止め、「神の御釜」へとダイレクトに叩き込む!
バリバリバリバリッ!!
釜が激しく明滅し、オリハルコンの異常な熱伝導率で内部は瞬時に数千度の高圧状態へ。
だが、リズの顔が険しくなった。
「ダメよ! 雷の瞬間火力だけじゃ米が消し炭になる! お米のデンプンを最高に甘く『アルファ化』させるには、全体を包み込む持続的な圧倒的熱量(中パッパ)が足りないわ!」
その時、遠くの管理コンソールでジョーカーが親指を立てていた。
「任せなボス! このドームの『人工太陽』、出力リミッターの配線を直結させておいたぜ! 超巨大な電子レンジの完成だ! ポチッとな☆」
カチャカチャッ……ターン!
『警告。人工太陽、出力リミッター完全解除。――60秒後に核融合炉心融解へ移行します』
ブォンッ!!!
天井の人工太陽が赤色巨星のように禍々しく膨れ上がり、致死性の超高熱フレアを放ち始めた。
ドーム内の気温が急上昇し、周囲の海水が沸騰、海底ガラスに絶望的な亀裂が走る。
「ギャアアア! 太陽が爆発する! アタシの神聖な美白肌がプラズマ化しちゃう!」
シルヴィが泣き叫びながらSPF50,000の魔法障壁を展開する。
「ジョーカーてめぇ! ごはん炊くだけなのになんでオレ達滅亡の危機になってんだ!」
だが、リズだけは恍惚とした表情で鍋蓋を天に向けていた。
「……完璧よジョーカー!」
「「「はぁっ正気かぁぁぁっ!?」」」
「太陽の核融合の持続熱と、麒麟の落雷の瞬間圧力! 究極のハイブリッド・IH加熱! これで炊けない米はないわ! さぁ、蒸気抜きが始まるわよ!」
シュゴォォォォォォォォ!!!
釜の蓋が浮き上がり、暴力的なまでに甘く、食欲を刺激する白米の匂いが放たれた。
「完成よ! アッシュ! ジョーカー! ……ただし、あと十秒蒸したら3秒で逃げないと全員蒸発するけどね!」




