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16.「命のカウントダウン」

「そ、そんな……!? 残り……三十秒……!? いやああああッ!」

「しっかりするし、サク! これ飲むし!」

「サクサク、いくらでも掛けてあげるの! だから、お願い! 死なないで!」


 ルリが僕にハイポーションを飲ませて、ユミは僕の身体に掛ける。


 再生能力持ちの弊害で、僕にハイポーションは効かないって言ってるのに、必死な彼女たちはそんなのお構いなしだ。


「ハイポーションが効かないだなんて! あと二十秒……! だ、誰か! 回復魔法を使える人はいない!? 解呪魔法や解毒魔法でも良いわ!」


 本当、みんなの演技がすごいよね!

 引き攣った表情、頬を伝う涙。

 鬼気迫るそれは、見るものを圧倒する程だよ!


「回復魔法なら。多少の心得がある。『ウルトラヒール』」


 シアンが屈み、僕の身体に触れる。

 触れられた箇所が光を帯びて、すごく温かくなる。


 すごい! 最上級回復魔法を使えるだなんて!


「……駄目だ」

「そんな!?」


 頭を振るシアンに、ミシロが絶望の声を上げる。


「あと十秒、九秒……ああ、サク君! サク君!! お願い、神様!!」


 ミシロが僕に縋り付く。


 気付くと、何となくつられて僕も脳内でカウントダウンしてしまっていた。


 八、七、六、五……あれ? 

だんだん意識が遠のいて……

 真っ暗な闇の中に沈んでいく……


 僕の意識が、漆黒の中に完全に溶けてしまう。

 直前に。


「「「「「サクタロウ、ありがとう!」」」」」

「!」


 大勢が声を揃えて叫ぶのが聞こえて、僕の意識は舞い戻ってきた。


 少し離れた所に見えるのは、磨特裏ソウが死んだことで結界が消えてこちら側にやってきた、ビクトさんのクランの精鋭二十人の人たち。


どうやらメリカたちは解毒薬を彼らに飲ませていたらしく、それが効いて復活したようだ。


 それにしても、勘違いだよ、精鋭のみんな?


 解毒薬もそうだけど、そもそも磨特裏ソウの結界によって押し潰されそうになっていたのを助けたのもメリカたちだから。礼を言うなら、彼女たちに言わなきゃ。


「あれ? 二十秒!? 寿命が延びてる!?」


 ミシロが目を見張る。


「もしかして……!」


 何かに思い至った彼女は、振り返ると、精鋭二十人に対して叫んだ。


「精鋭の皆さん! もう一度サク君に感謝の言葉を述べて下さい!」


 よく分からない要望だったが、真剣そのものの彼女の声と表情に、彼らは頷いた。


「「「「「サクタロウ、ありがとう!」」」」」

「……駄目ね。増えない……。きっと、同じ人が二回言っても意味ないのね……」


 「じゃあ、私たちが……」と言いかけたミシロは、「ううん、それも駄目。御礼なんて何度も言ってるし、そもそも私たちだけじゃ人数が全然足りないわ……」と、何やら必死に頭を回転させている。


「そうだわ!」


 ミシロは、自分たちの配信用ドローンの横に投影されているコメント欄に向かって声を張り上げた。


「リスナーのみんな! お願い! サク君に対して、感謝の言葉を書いて! 恐らく、一人が『サク君ありがとう』って言えば、サク君の寿命が一秒延びるの!」


 リスナーの反応は早かった。

 〝了解〟などもなく、一瞬で大量のありがとうコメントが流れる。


〝サク、ありがとう!〟

〝ありがとうな、サク!〟

〝お前のおかげで世界は救われたよ! サク、ありがとう!〟

〝サク、ありがとう! 死ぬんじゃねぇよ!〟


「ほら、サク君、見て!」


 ドローンを近付けて僕にコメント欄を見せるミシロ。


 恐ろしいスピードで流れていくコメントを、僕は一万年の間に鍛えた動体視力で全て読み取っていく。


 すごい!

 心が温かくなる!

 熱くなる!

 頑張ってきて良かったって思える!

 僕もヒーローになれたんだって思える!


 意識がはっきりとして、全身に力が戻ってきた。


 その間に、感謝を伝え終えたリスナーたちは、更にその先へと行動しており、そこにメリカたちも助力してくれた。


「サク君! すごいわよ! 世界中からコメントが届いてるわ!」


 日本語に翻訳された大量のコメントたち。

それらを見る度に、僕の胸は熱く燃えていく。


 中には日本語で書いてくれる人もいた。

更には、自撮り動画でコメントしてくれる人まで現れた。


 そんなことが小一時間続いた後。


「すごいわ! 物凄い勢いで増えたわ! 良かった!」


 ミシロたちが僕に抱き着いた。


「ハッ! 一件落着だし」

「もう、心臓止まるかと思ったの!」


 多分、ありがとうって言われる度に僕の寿命が増えていって、そのおかげで助かった、という演技をしているんだよね、みんな?


 じゃあ、僕も乗っかっちゃおう!


「みんな、ありがとう! みんなのお陰で、生き延びられたよ!」


 よしよし、我ながら良い演技で乗っかれてるぞ、僕!


「ちなみに、寿命はどのくらい延びたの?」

「えっと、ちょっと待ってね。これは……!」


 ミシロは、にっこり笑って告げた。


「二百年よ!」

「それは良かっ――二百年!?」


 思わず、口をあんぐりと開けてしまった。

 本当は僕も笑みを返すつもりだったのに!


 演技って、難しい!

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