14.「決戦(その2)(※曇らせ回(前半部分))」
「ミシロ、ルリ、ユミ。みんなの『聖光』と『聖炎』と『精霊光矢』で、僕の身体を攻撃して」
「「「!?」」」
一瞬呆然としたミシロたちだったが、直ぐに顔を見合わせて頷いた。
「サク君が意味ないことを言うはずないわ!」
「ハッ! あーしも信じるし!」
「サクサクのためなら何でもするの!」
悲壮感漂う表情で、少し距離を取った彼女たちは僕に向けて構えた。
「『聖光』!」
「『聖炎』!」
「『精霊光矢』!」
光線と炎塊と光り輝く矢が僕の身体を貫き、燃やす。
「ぎゃあああああッ!」
痛苦に顔が歪み、悲鳴を上げてしまった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
「ごめんな、サク……ごめん……」
「ごめんなさいなの、ごめんなさいなの……」
ミシロたちは、仲間を痛めつけることへの罪悪感に耐えられず、大粒の涙を流す。
しかし、思わず攻撃の手が緩むのを、僕は許さない。
「ほら、大丈夫! 再生してるから! 死なないから! もっと! もっと激しく攻撃して!」
頬を強張らせるミシロたちは、歯を食い縛り、再び叫んだ。
「『聖光』!」
「『聖炎』!」
「『精霊光矢』!」
「ぎゃああああああああッ!」
彼女たちは青褪め、その頬を再び濡らす。
僕が全身で彼女らの攻撃を受け止めている中、悪魔は――
「サクタロウ君はやらせないよ! はあああああッ!」
「カモン! サクはきっとまた不思議な力を使って倒してくれるはずよ!」
「まだ借りは返し切れていないからな。『アイシクル』」
「悪魔とはね。相手にとって不足なしね」
「ええいっ! 鬱陶しいのう!」
――ビクトさん、メリカ、シアン、リンリンによる魔法剣・戦斧・氷魔法・魔力を纏った拳による殴打により、僕とミシロたちへの攻撃を防がれていた。
みんな、ありがとう!
だが。
「ほれ。そろそろ邪魔じゃ」
「がはっ!?」
「ぐぁっ!?」
「がぁっ!?」
「ぐはっ!?」
デコピン三連続と指弾により、吹き飛ばされた。
「待たせたのう。ほれ、死ぬのじゃ」
「!」
悪魔の漆黒光線が僕に迫る。
慌ててミシロたちが魔法の発動を止めるが、まだ再生しきれていない僕は動けない。
「果たして脳を破壊されても、再生出来るかのう?」
既に満身創痍の僕は再生に集中しており、身体の一部を増殖させることも出来ず、確実に頭部を貫かんとする死の光をただ呆然と見詰めることしか出来ない。
「サク君! いやあああああッ!」
ミシロの悲鳴が響き、悪魔が下卑た笑みを浮かべる中――
「ぐはっ!」
貫かれた。
「!」
突如現れて僕を飛び蹴りで吹っ飛ばしたレオの胸が。
「何で僕を助けてくれたの……!?」
身体を再生した僕が駆け寄ると、血塗れで地面に横たわるレオが苦し気に呻いた。
「……あのクソ女……新ダンジョン庁長官から……連絡があっただけだ……刑期を短くしたければ……てめぇらの力になれってよ……それがこんな……ことになるとは……思わなかったがな……かはっ!」
お守りとして貰った三羽鶴のおかげか身体のみならず服も再生する僕だけど、流石に失ったハイポーションまでは復活させられないので、代わりにミシロから受け取り、レオに飲ませつつ、その胸に開いた大きな穴にも掛けて傷口を塞ぐ。
「ありがとう。後ろで休んでて。直ぐ終わらせるから」
立ち上がり睨み付ける僕の視線を、空中に浮かぶ悪魔が涼し気に受け止める。
「何を企んでおるのか知らんがのう。儂には効かんのじゃ」
悪魔に向かって僕は跳躍した。
「じゃが、食らってやる義理も無いのじゃ。ほれ。今度は本気で撃ってやるのじゃ」
今までのものとは比較にならない程の巨大な漆黒光線に対して。
「『結合』:『聖光』『聖炎』『精霊光矢』!」
何度も身体で浴びて体内で精製出来るようになったミシロたちの技を一つにまとめて、聖炎を纏った大きな光線にした上で、巨大漆黒光線に対して〝斜め〟にぶつける。
「なっ!?」
漆黒光線の飛ぶ方向が少しだけズレた。
「大き過ぎて相殺出来なくても、ずらすことなら出来るから!」
悪魔の懐に到達した僕は、自身の左腕を切断するとその場で増殖、先端を限界まで先鋭化させ、尚且つ『聖光』『聖炎』『精霊光』を纏わせた上で、悪魔の全身に同時に叩き付けて、貫かんとする。
が、硬度が高過ぎて、傷一つつけられない。
「無駄じゃ。今まで散々攻撃をしてきてまだ分からんのかのう?」
呆れた物言いに、しかし僕は動じない。
「ミシロたちの攻撃は通じるはずだ! だから、唯一身体で受け止めなかったんだ!」
悪魔は嘲笑した。
「勘違いさせたなら悪かったのう。身体の内側に食らうと流石に無傷とはいかんからのう、過剰に反応してしまっただけじゃ。外側であれば、何の問題もないのじゃ」
「今度こそ死ぬのじゃ」と、悪魔が僕の顔面に手のひらを向けて、漆黒の魔力を生み出した。
刹那。
「ぐぁっ!?」
突如、悪魔の腹部から血が噴き出した。
「……何……じゃと……!?」
無敵の身体に内側から小さな風穴を開けたのは――
「さっき僕の腕を口の中に入れて、吐き出したよね? その時に、密かに僕の血液を体内に忍び込ませておいたんだ!」
「!」
それを使って、凝縮して硬度を増加、超小型の血の槍に変化させて、体内から外側へ刺突、体表に一ミリ大の穴を開けたのだ。
あと、二回目なので、流石に口内への攻撃(腕の侵入)は警戒しているだろうから、代わりに身体に対して増殖した左腕を叩き付けたのだが、それにより内部からの攻撃に気付きにくくした、というのもある。
「くっ! じゃが、その程度の傷、儂には痛くも痒くも――」
「いや、これでやっと入れるんだよ、左腕が! うおおおおおッ!」
「ぐああああああッ!」
極限まで尖らせて硬度と鋭さと切れ味を高めた左腕を突き刺して体内に侵入。
「一億倍!」
「がぁっ!?」
即座に体内で一億倍に増殖。
しかし。
「何の! これしき、儂には効かぬのじゃ!」
多少身体が変形したが、悪魔は耐えた。
だが。
「『聖光』『聖炎』『精霊光矢』!」
一億の腕が一斉に聖光・聖炎・精霊光矢を放出。
「ギャアアアアアアッ!」
内部から聖光で浄化され、聖炎で焼かれ、再び精霊光矢で浄化されていく悪魔。
「やったわ!」
地に落ちた悪魔は、下半身を完全に喪失しており、残った上半身も少しずつ光の粒子となって消えていく。
しかし、迫る死を前に、天を仰ぎながら、彼は、
「……見事じゃ。……じゃが……儂は〝分身〟を……世界各国に……送ってあってのう……。……さて……人類は……太刀打ち……出来るかのう……?」
「!」
不敵な笑みを浮かべた。




