10.「モンスター化呪いの元凶捜索」
<残り9日>
「え!? 嘘!?」
顔面蒼白になったミシロに、僕は首を傾げる。
「どうしたの?」
「サク君……残り時間が……あと十四日のはずが、九日になってるの……」
例の寿命の話らしい。
本当、すごく演技が上手いよね!
でも、僕に命を大切にして欲しいっていう気持ちからくるものだから、そのテクニック以上に、その熱い想いが僕は嬉しい!
「サクが、九日後には……そんなの嫌だ! 原因は!?」
「多分、モンスター化の呪いを解きまくったからだと思うわ……」
「サクサク! もう解呪しちゃ駄目なの!」
みんな、本当に優しいなぁ~!
こんなに素敵な仲間を持って、僕は幸せ者だ!
よ~し!
みんながこれだけ想ってくれるんだから、もっと頑張らなきゃ!
「って、あれ?」
ダンジョン専用携帯電話が鳴った。
こうやってダンジョン内にいても通話出来る優れものだ。
ネット通信が鍵となる配信用ドローンの技術を応用したものらしい。
「もしもし。あ、イシダタさん! 就任おめでとうございます! ……え?」
新ダンジョン庁長官に就いたばかりのイシダタさんの電話に、僕は目を丸くした。
※―※―※
「先日さ、めちゃくちゃ強い魔力を感知したんだよ! N市ダンジョンの一番下から」
レオの部下の一人である坊主頭の男が、アクリル板越しに語り掛ける。
留置場なんて初めて来た!
ただ、ここは通常の留置場じゃなくて、探索者専用のものらしい。
探索者だと普通の犯罪者よりも基本的にずっと強いから、対応出来るような機能を持った施設と人員が割り当てられているそうだ。
イシダタさんに「嘘かもしれないのですし、断っても良いですからね」と予め言われたけど、モンスター化の呪いの原因を探っていた僕たちにとっては、ありがたい情報だった。
「多分あれがモンスター化の呪いの原因だと思う! っていうか、あの怪しげな男が今いるのが、多分そこなんだよ! レオ様と会った時は、深淵の浅い層だったけどな」
その後、今度はレオの部下二人目の長髪の方にも面会したけど、同じことを言っていた。
「ハッ! あんたらの言うことを信じろってのかい? 悪党の言うことを?」
「どういう心境の変化かを聞かせるの! そうじゃないと信じられないの!」
ルリとユミの詰問に、彼らは気まずそうに白状した。
「……モンスター化の呪いを解くのに有益な情報を提供すれば、少しでも罪が軽くなって、刑期も短くなるかなぁ~って」
帰り道、ミシロはプリプリと怒っていた。
「本当、自分のことしか考えていないんだから!」
でも、それは逆に情報の有益性を示唆していた。
「だからこそ、信じられる気がする! 自分のためだったら、嘘なんかつかないんじゃないかな?」
「確かにそうね……」と、ミシロたちが頷く。
※―※―※
<残り8日>
「やぁ、サクタロウ君。久し振りだね。今日から宜しくね」
「ビクトさん、こちらこそ宜しく!」
ビクトさんが、ブリリアントファルコンの精鋭二十人を引き連れて、東京からN市ダンジョンに来てくれた。
「みんな、モンスター化の呪いの原因を突き止めるよ!」
「「「「「おう!」」」」」
士気は高い。
ちなみに、ビクトさんの婚約者であるヨノカさんもめちゃくちゃ来たがっていたらしいけど、ビクトさんが全力で止めたらしい。
危ない目には遭って欲しくないってことだよね!
優しいなぁ。
※―※―※
僕らは、上層・中層・下層・深層と一気に踏破。
ちなみに、僕たち四人とビクトさんの計五人で先行して進んでいたんだけど。
その途中で、
「サクさん! 自分も連れて行って欲しいっす! 今まで助けてもらった恩返しがしたいっす!」
カエに出会った。
「いや、でも深淵だよ? めちゃくちゃ危険だよ?」
「大丈夫っす! 自分、鍛えたっす! その甲斐あって、今ではS級になったっすよ!」
「S!?」
すごく頑張ったんだね!
努力して頑張っている人の気持ちには応えたい!
「分かった! じゃあ、お願いね!」
「はい! ありがとうございますっす! 自分、頑張るっす!」
笑顔を見せるカエ。
「でもまた人質になったりしないかしら?」とミシロが心配していたけど、きっと大丈夫だよ!
ということで、僕ら六人で進むこととなった。
なお、ビクトさんのクランの精鋭二十人には、僕たちとは少し離れた位置からついてきてもらっている。
これには主に三つの理由がある。
その一。僕らの背後を取ろうとした敵がいた時に、逆に挟撃できるように。
その二。僕らが近過ぎて気付かない脅威に、遠く離れた彼らなら気付けるだろうから。
その三。僕ら六人全体に対して攻撃がなされてピンチに陥った際には、その攻撃に巻き込まれない位置にいて、援護射撃して欲しいから。
まぁ、後は、万が一全滅しそうになったら、上の層へと助けを求めに行って欲しいから、とかもあるけどね。
何はともあれ、僕らは深淵へと足を踏み入れた。
下層の第三階層のボスであるキマイラが普通にフィールドモンスターとして出現する地獄の中、第一階層、第二階層、第三階層と攻略して、第四階層の最奥にあるボスエリアに到達した。
深層までと違い、人工的な空が存在する深淵では、ボス部屋ではなく特定の開けた場所(大抵は最奥)にボスが存在する。
そこには、
「ガアアアアアッ!」
ドラゴンがいた。
しかも、以前僕が倒したドラゴンブレスを吐かないタイプのドラゴンと違って、普通に炎を吐くタイプのドラゴンだ!
明らかに強敵だけど。
「はあああああッ!」
「『聖光』!」
「『聖炎』!」
「『精霊光矢』!」
「ギャアアアアアッ!」
魔法剣を使えるユニークスキル持ちのビクトさんと遠距離攻撃に大分慣れたミシロとルリとユミが、圧倒して討伐した。
っていうか、剣技だけじゃなくて魔法も使えるのって、格好良いよね!
しかも、刃に魔法を纏わせた上で攻撃することで、魔法効果も付与した斬撃を放てるようになる魔法剣も使えるだなんて!
「ボスは倒したけど……誰もいないし、何もない?」
深淵の最奥まで来ても、呪いの元凶は分からなかった。
と、その時。
「ヒヒヒッ! まさかこんな所までやってくるとは、予想外でしたよ」
「ご、ごめんなさいっす、サクさん!」
振り返ると、最後尾を歩いていたカエが、いつの間にか外套を身に着けフードで顔を隠した男に羽交い絞めにされてナイフを喉元に突き付けられていた。
肩越しに見えるのは、ビクトさんのクランの精鋭二十人。
でも、まだ距離があるし、一刻を争う事態である今、彼らに期待は出来ない。
が、それよりも、僕は男から目が離せなかった。
ブワッ……
全身の肌が粟立つ。
僕はこの男に――会ったことがある!
まさか、彼は――
「ヒヒヒッ! 人質の命が惜しくば、全員武器を捨てて、後ろを向き、両手を頭の後ろに組んで――」
「『聖光』!」
「『聖炎』!」
「『精霊光矢』!」
「ぐぁっ!?」
脅す男に対して、臆せずにミシロたちが魔法による遠距離精密射撃。
人質には決して当てず、犯人のみに着弾という恐るべきコントロールだった。
「この瞬間のために鍛えたのよ!」
ミシロが胸を張る頃には、細い光線と炎と光り輝く矢を食らった男は倒れていた。
「こ、怖かったっす! ありがとうございますっす、サクさん!」
何故か両手を広げて僕に抱き着こうとするカエに、「ちょっと! どさくさに紛れて何抱き着こうとしてんのよ!」とミシロが噛み付いた直後――
「御礼に殺してあげるっす」
「がぁっ!?」
――カエが僕の喉を手刀で突き刺した。




