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22.綻び

ドンッ――。


また花火の音が響いた。


今度は、空が白く明るむ。


「……っ」


何か手がかりは。


きっと、どこかにあるはず。


「結菜」


「分かってる。何とかしないと――」


ふいに、頭へ手が置かれた。


「こんな時に何を――」


「急いては事を仕損じる、とも言うだろう」


レインが軽く頭を撫でる。


「落ち着け」


「……」


大きく息を吸って、ゆっくり吐く。


「……うん。ありがとう」


「先ほど、魔力……霊力の通りが変だと言っていただろう?」


「うん」


「なら、その違和感を辿れないか?」


「……っ!」


そうだ。


おばあちゃんが言ってた。


『本来、巡るものが巡らず、歪んでる』


そういうところは、怪異が起きやすいって。


それに。


いつも公園でもやってる。


「――やってみる」


意識を周囲へ向ける。


霊力はどこから流れてる?


どこへ向かってる?


……焼きとうもろこしの屋台の辺り?


いや、違う。


もっと先。


これは――


「見つけた!」


勢いよく指を差す。


「三つ目! あの赤い提灯! あそこで歪んでる!」


レインが小さく笑った。


「大したものだ」


二人で赤い提灯に近づく。


「ここだけ、流れが途切れてる」


だけど、ここからどうする?


おばあちゃんだったら“穴”を作れる。


でも――


そのとき。


レインの指先から霊力が広がる。


「――間違いない……ここだ」


赤い提灯の横へレインの手が触れた。


「え?」


手が、消えた。


いや。


手首から先だけが、そこにない。


「ちょっ!?」


レインが腕を少し動かす。


見えないはずの手に引っ張られるように、袖だけが揺れた。


「――繋がった。これで戻れる」


「おばあちゃんの……穴?それにしては――」


「似てはいるが、あれとは違う。これは空間にできた“綻び”だ」


「綻び?」


レインが、何もない場所へ視線を向ける。


「空間に傷がつけば、元に戻るまで時間がかかり、ごく僅かな綻びができる」


つられて、視線を追う。


「普段お前が見ているものより、ずっと不安定だ」


視線を戻すと、レインが腕を引き抜いていた。


「だが、その綻びを正しく辿れば――」


「元の空間ってこと?」


「そういうことだ」


……正しく


……ん?


「正しく??」


嫌な予感がする。


「間違えたら??」


「さぁな」


「え」


レインは平然と続ける。


「間違えたやつは戻ってこなかった」


「――別のとこに飛ばされたのか、出てこれなかったのか。定かではない」


「……怖いんですけど!?」


「行くぞ」


レインが手を差し出した。


「信用できるか?」


……その言い方ずるい。


「……もう!」


差し出された手を握る。


「絶対離さないでよ!」


「無論だ」


レインが一歩踏み出す。


引かれるまま、赤い提灯の横へ足を進めた。


身体が、ぐにゃりと歪むような感覚。


「うわっ――」


「安心しろ。俺が辿る」


握った手に引かれるまま、身体を預ける。


……前を見ているはずなのに。


なのに、どちらへ進んでいるのかも、どれくらい歩いたのかも分からない。


そんな中を、レインだけが迷わず進んでいく。


――やがて。


ふっと、視界が開けた。


赤い提灯も、焼きとうもろこしの屋台も、ずっと後ろにあった。


「……戻った」


繋いだ手をぐっと引く。


「戻ったよ!レイン!!」


黒曜石みたいな瞳が、一瞬だけ見開かれた。


「……当然だ」


手を離しながら、じっと顔を見る。


「どうした?」 


「やけに慣れてる感じがしたんだけど」


レインは小さく息を吐いた。


「俺がこちらへ来る時も、似たような綻びを使っているからな」


「……え?」


足が止まった。


「ちょっと待って。そうやって来てたの?」


「あぁ」


……危ないじゃん、とか。


やっぱり来たらだめ、とか。


色々言いたいことがあるのに、なぜか言葉にならなかった。


代わりに出たのが――


「もっと早く言いなさいよ!」


……だった。


「言おうとしたが、いらんと言われた」


「……誰に?」


「お前に」


「……」


レインとの会話が頭によぎる。


『開けてるわけではないな。説明しよう』


『長くなりそうだから良いわ』


……言ってたわ!!!


いや、まだ立て直されるわ!


「私は良いわと言ったのよ?つまり!!

良いってことよ!」


「……」


「言ってる場合か?」


「……そうだね」


まずやるべきことが、一つ。


ポケットから袋を取り出した。


「――おことわり」


これで繋がりは切れた。


「……でも、変だね」


「あぁ」


「おむすび公園なら分かるの。こういうの起きやすいから」


「だが、ここは違う」


「うん。だから――」


閉じた場所を見る。


「何か原因がある」


まだ終わりじゃない。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


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