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第二十八節 2023/9/23 ホーム 対セレッソ大阪 1対0

「神戸の人にとって、大阪ってどういう存在なんですか?」

 唐突に小林さんが尋ねる。

「難しいな。親近感があるし仲間意識もある。関西の代表といえば大阪という認識もある。でも他の地方の人から一緒くたにされると腹が立つ」

「へぇー」

「神戸人は神戸を愛してる人が多い。それは街の規模とかじゃなくね。そんな中、大阪と一緒にされると、神戸は違う!と叫びたくなるね」

「なるほど」

「神戸人は自分の街が大好きで誇りがあるんだ。だけど、ヴィッセルみたいな弱いチームはその誇りが傷つけられるようで人気がなかった。オリックスも、イチローがいて強かった頃は街全体で盛り上がってたけど、弱くなってからは急に静かになった」

「でも、今は強い」

「そう。強いんだ。この旅を始めた時はこんなことになるなんて思っても見なかった」

 そして、私は思い切って、聞きたかった本題に入る。

「小林さんは最近大丈夫なの?」

「うーん。大丈夫と言いたいような。言いたくないようなって感じですけど」

 少し言葉をためてから、小林さんが言う。

「村田さんの手首の傷が、私の心に傷をつけました」

 私はどきりとするが、小林さんは言葉を続ける。

「それは悪い意味じゃないんです。あえて言うと、うっすらと傷をつけられた感じです」

「うっすらと」

「村田さんや、コンビニの人たちと、喋ってみて感じたんです。私の心って、小さな頃から変わってないんだって」

「それが、私にとってコンプレックスでもあり自慢でもあった」

「そんな心に村田さんは、多分初めて傷をつけた」

「でも、それは不快じゃなかった」

「筋肉って傷つけて、回復する時に大きくなるっていうでしょう」

「私の心に、初めてそれが起きたと思うんです」

「でも、人に心を変えられるのは何だか(しゃく)ですね」

 ぺろっと、小林さんが舌を出す。

 私は、そんな小林さんをみて安心した。

 多分、これからも小林さんの『死にたい』との戦いは続く。

 それでも、きっと乗り越え続けるんだろう。


 試合は相手を抑え込み1対0での勝利となった。


「いやぁ今日は大樹(だいじゅ)がよかった」

「本当ですね!」

「やっぱりアカデミー出身の選手が活躍すると嬉しいな」

「アカデミーってなんですか?」

「育成組織のことだよ。ザ・生え抜きの選手たちだね」

「なるほど」

「アカデミー出身の選手たちは試合後の神戸讃歌も全力だから気持ちいいね」

 帰り道にそんなことを喋りながら、私はこの旅の終わりの近さも感じ少し物淋しさを覚えていた。

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