第十八節 2023/6/25 アウェイ 対アビスパ福岡 3対0
「今日で折り返しですね」
「そうだね。旅を始めた時はヴィッセルがこんな順位にいるとは思いもしなかったよ。小林さんは勝利の女神だね」
「何だか恥ずかしいです」
小林さんの根源には、『低い自己肯定感』なんていう薄っぺらな言葉では表せられない自己が存在することへの疑念の様なものが、あるように思う。
それを、どうすればいいかは私には分からない。
私は、今まで自分に自信を持って生きてきた。
自分ならやれると思って、生きてきた。
でも、小林さんにはそれがない。
そんな人間が、どうして生きればいいのかが分からない。
だが、今の自分に重なる部分があるのは事実だ。
統合失調症になり、色んなことができなくなった。周囲からも、「休もう」「頑張らなくていい」と言われる環境。
何だか、自分が欠陥人間のように思えてくる。
小林さんは、この無力感と十何年、戦っているのかもしれない。
でも、小林さんと私は違う。私には、様々なことをやり遂げてきた経験がある。自分への自信がある。
「村田さん!」
私はハッとする。
「また、自分の世界に入り込んでましたよ」
「ごめんね。じゃあ応援しようか」
試合は相性のいい福岡相手に3対0と圧勝だった。
シュート本数こそ少ないものの力の差を見せた試合だった。
「今日はいい試合だったね」
「そうですね!いい試合でした。ところで村田さん、宿題はどうなってますか?」
「あぁー宿題か。まだ見つかってないね」
「別に大丈夫ですよ。死ぬまでに見つければいいんですから」
「でも、早めに見つけたいね」
「私は少しずつ見つかってます」
私はドキリとする。でも、思い直す。言語化すれば、自分で自分の問題に気づけるのではないかと。
「まだ、うまく言葉にできないですけど」
「まあ、どっちもゆっくりやろう。旅はまだ長いさ」




