職員室ってどこですか?
校門をくぐって、昇降口に向かう。
靴は……どこに入れていいのか分からないから、一旦そのままにしておこう。
職員室は……
どこだ?
右……っぽい感じがする。
左……っぽい感じもする。
その場でしばらくキョロキョロしていたら、様子を見ていたのか、女の子が話しかけてくれた。
「あ、あの……どうかしましたか?」
「しょ、しょしょしょ職員室って……ど、どこですか……?」
めちゃくちゃ声が上ずってしまった。
ただでさえコミュ障なのに、ずっとお喋りしてないから……
ほら~女の子もチラチラしながら黙っちゃったじゃん。
それは、俺が悪いよね……
「み、右に進んで、階段の昇って……渡り廊下を進んで……」
右に行って、階段昇って……初めての場所だから、結構ややこしい。
「もし、よかったら……一緒に行きますか……?」
「は、はい…お願いします……」
お言葉に甘えて、連れて行ってもらおう。
親切な方に出会えて良かった。
でも、終始無言で――気まずい。
顔もやけに赤くなってたし……体調とか、大丈夫なのかな~?
二人とも無言で少し歩いたら、目の前に目的地が見えた。
「ここが…職員室です」
「あ、ありがとうございます!!」
「ほ…ほわぁぁ……」
ん?
ちゃんと”ありがとう”を言葉に出したら、なんだか変な声が聞こえたぞ?
「も、もしかして……体調悪いですか? 顔、赤いような……」
「ち、違います!」
そう言って、足早に去ってしまった。
これってやっぱり……俺、なんか変なことになってるでしょ。
先生に何も言われないならいいけど……
そう願いながら、扉の前に立つ。
深~く深呼吸、そして――3回ノック。
職員室に入る時って、ホント緊張するよね……
「し…失礼します!! 1…1年生の吹上空良です!!」
こう言うのって、第一印象が大事だ……多分。
精いっぱいの元気で挨拶したら、驚いた顔をした先生がそそくさと中に案内してくれた。
「え~と、吹上空良くん……ですよね?」
電話と同じ声がする。どうやら、この先生とずっと連絡していたみたい。
「ちょっと想像以上の事態で大変驚いてますが……普通科で間違えてないですよね?」
「だ、大丈夫です……」
「普通科なのに、これは……どうやら、大変なクラスになりそうです……」
なんだか心配そうにしてるけど、どう言う意味だろう……
「コホン、少し脱線しちゃいましたが、気を取り直して……私、1年C組担任の――春日井萌々子です!! これから、1年間よろしくお願いしますね♪」
1年C組の担任……あ、俺の担任の先生か!!
というか1年C組なんだ、俺。
「心配しましたよ~ もう学校に行きたくなくなったのかな~って」
「す…すいません……」
「私と一緒に少しずつ、この学校に慣れていきましょうね♪」
春日井先生は、新卒1年目の先生なんだって。
ものすご~く笑顔で、元気いっぱいのパワーを感じる。
見た目のことは何も言われないし、気のせいだったみたい。
とにかく、優しそうな先生で良かった……
そこからは少し早口で……いや、めちゃくちゃ早口で簡単なオリエンテーションが始まった。
健康診断に体力測定、学生証用の写真撮影とかは後日、時間を見つけてやってくれるそう。
「――て感じでざっくりと説明したけど、何か質問とかあるかな?」
質問はない……と思う。
あったとしても……言える勇気なんて無いよ……
「じゃあもうすぐ朝のSTだから、一緒に教室へ行こっか!! ちょっと朝の準備するから、職員室前で待っててね~♪」
そう言うと、春日井先生はせかせかと、だけどルンルンしながら動き始めた。
なんだか”役得”って声も聞こえた気がするけど、邪魔にならないように、そ~っと外へ出よう……
――――
ふ~すごく緊張した。
緊張したけど、割と頑張ったと思うよ!!
教室での自己紹介も、こんな感じで……いいよね?
とにかく、先生が来るまで暇だな~
「吹上くん、久しぶり~ もう体調不良は大丈夫?」
後ろから、聞いたことのある声が聞こえる。
振り向くと――同じ中学の星ヶ丘玲奈さん。
熱が出た時以来に会ったけど、俺が変だったら、絶対に何か言われるよね……
「う…うん。今日初めて、学校に来た……」
「そっか~また同じクラスだからヨロシクね!!」
星ヶ丘さんは、そう言い残すとさっさと教室に行ってしまった。
中学の時と何ひとつ変わらない笑顔だった。
じゃあ……やっぱり、俺の気のせいだった。
みんなが見ていたのは、多分俺じゃない。ただただ、俺が自意識過剰なだけだったんだ。
安心したら、なんだかトイレに行きたくなってきたな~
まだ先生来ないし、ちゃちゃっとすぐそこのトイレに行こう!
――――
ふ~すっきり~♪
やっぱり私立の学校はトイレも綺麗だな~
さぁ手を洗って――ん?
俺の手って、こんなに洗練されたっけ?
そう言えば、声も少し高くなっている気がするし、身長も高くなってるような……
そうだ、鏡を見よう!!
何も変わってないはず――なのに。
鏡の中に居るのは、日本人離れしたゆがみのない鼻筋、吸い込まれるようにひかり輝く瞳、プルプルと潤いが溢れている唇、シミひとつないきめ細やか過ぎる赤ちゃん肌。
この世のものとは思えない――美しすぎる存在。
「だ、誰えぇぇぇぇ!!!!????」




