17.予想されていた結果
三ヶ月後。
王城の大広間には国中の貴族達が集められていた。
重苦しい空気が漂っている。
誰もが今日の発表を予想していた。
王座に座る国王はゆっくりと立ち上がった。
「これより王家に関する重大な決定を発表する。」
広間が静まり返る。
アイルは嫌な予感を覚えていた。
隣に立つシャーロットも不安そうな顔をしている。
「まず、シャーロット嬢についてだ。」
シャーロットが顔を上げた。
「王太子妃適性試験の結果を報告する。」
全員の視線が集まる。
「結果は――失格である。」
どよめきが起きたと同時に貴族達は納得していた。
最初から誰もシャーロットに期待などしていなかった。
「なっ!」
シャーロットが顔を真っ赤にする。
「おかしいです!私は頑張りました!」
「努力と適性は別だ。」
国王は冷静に告げる。
「王妃教育の大半を修得できていない。外交、歴史、法律、礼儀作法、政治知識、その全てが基準に達していなかった。」
「そんな・・・。」
シャーロットの顔から血の気が引いていく。
そして国王は視線をアイルへ向けた。
「次にアイル・ヨランド。」
アイルの身体が強張った。
「お前と側近達についてだ。」
側近達も顔色を変える。
「お前達は卒業パーティーでの婚約破棄騒動、その後の対応、そして国中に混乱を招いた責任を取らねばならない。」
「父上!」
「黙れ。」
国王の一喝にアイルは言葉を失った。
「貴族社会の信用を失墜させた。王家の権威を傷付けた。国内に深刻な混乱を招いた。」
その全てが事実だった。
広まった噂は止まらない。
魅了騒動。
王家への不信。
平民達と貴族達の対立。
国は未だ混乱の中にあった。
「よって。」
国王の声が響く。
「アイル・ヨランド及び側近六名から全ての爵位継承権を剥奪する。」
会場が騒然となる。
アイルは目を見開いた。
「父上・・・?」
「本日をもって平民とする。」
シャーロットが悲鳴を上げた。
「そんな!アイル様平民になるの!?」
側近達も青ざめる。
アイルは信じられないものを見るような顔をしていた。
「僕が・・・平民・・・?」
将来は王になるはずだった。
それが今。
一瞬で消え去った。
「異議は認めない。」
国王の宣言で全てが決まった。
アイルは力なく俯く。
もう何を言っても遅かった。
そして、国王は最後の発表へ移る。
「次期王太子についてだ。」
再び会場が静まり返る。
誰もが予想していた名前がある。
国王はゆっくりと口を開いた。
「第三王子バロン・ヨランド。」
バロンが目を見開く。
「前へ。」
バロンは静かに進み出た。
広間中の視線が集まる。
「余はお前を次代の王に相応しいと判断した。」
国王は真っ直ぐ息子を見る。
「責任感。判断力。人望。そして国を支える覚悟。その全てを備えている。」
バロンは静かに跪いた。
「ありがたき幸せ。」
国王は頷く。
「本日よりお前を王太子に任命する。」
大広間に拍手が響いた。
貴族達の表情は明るい。
久しぶりに希望が見えたのだ。
王家は立て直せる。
そう思わせるには十分だった。
アイルはその光景を見つめる。
かつて自分のものだった場所に、今は弟が立っている。
そして誰よりもその位置に相応しく見えた。
バロンはゆっくり立ち上がる。
その姿は堂々としていた。
誰も異論を唱えない。
それが答えだった。
こうして、王太子アイル・ヨランドは王位継承権を失い平民となった。
そして新たな王太子として。
バロン・ヨランドの時代が始まるのであった。




