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わたくしだけに魅了がかかっていた件  作者: 鈴木べにこ


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14/23

14.国王の考え


 アイルが俯く中、玉座の間には重苦しい沈黙が流れていた。


 国王の言葉は正しかった。


 アイルはディアナとの婚約を破棄した。


 だが、その先の事を何一つ考えていなかった。


 自分が王太子であり続けられる理由。


 その理由がディアナとアレスター公爵家にあった事すら理解していなかったのだ。


 そんな沈黙を破ったのは第一王子レオンだった。



「父上。」



 レオンは静かに前へ出た。



「私は一つ疑問があります。」


「申してみよ。」



 国王が頷く。


 レオンはアイルへ視線を向けた。



「お前はシャーロット嬢と結婚した後の事を考えていたのか?」


「もちろんです!」



 アイルは即座に答えた。



「シャーロットは優しい女性です!」


「質問に答えろ。」



 第一王子の声は冷たい。


 アイルは言葉に詰まる。



「王妃教育は?」


「・・・。」


「外交は?」


「・・・。」


「貴族達との関係は?」


「・・・。」


「王妃として必要な教養は?」


「・・・・・・。」



 何も答えられない。


 第一王子は呆れたようにため息を吐いた。



「何も考えていなかったのだな。」


「違います!」



 アイルは声を荒げた。



「シャーロットは努力していました!」


「努力していたから何だ。」



 静かな声が響く。


 発言したのは第三王子バロンだった。


 アイルの異母弟。


 そして、かつてディアナの婚約者だった男だ。



「バロン・・・。」


「努力するのは当然だ。」



 バロンは淡々と言う。


「王妃になるのならな。」


「・・・。」


「問題は王妃として足りていたかどうかだ。」



 アイルは口を閉ざした。



「兄上は忘れているようだが。」



 兄上という呼び方には温度がなかった。



「ディアナ嬢は幼い頃から王妃教育を受けていた。外交。法律。歴史。経済。他国の言語。貴族社会の調整。王妃として必要な知識の全てだ。」



 玉座の間が静まり返る。



「兄上はそれら全てを捨てた。」


「・・・。」


「愛のために。」



 皮肉のような言葉だった。



「立派な話だな。」



 アイルは何も言い返せない。



 ディアナはフードの奥でそのやり取りを聞いていた。


 胸が痛む。


 バロンの言葉は正しい。


 だからこそ苦しかった。


 その時だった。



「めんどくさいなぁ。」



 場違いな声が響いた。


 レイだった。


 全員の視線が集まる。



「魔塔主殿。」



 国王が苦笑する。



「何か意見でも?」


「意見というか事実。」



 レイは肩を竦めた。



「結局のところ今問題になってるのはディアナじゃなくてアイル王太子達だよね?」



 その言葉に空気が凍る。


 アイルの顔が歪んだ。


 だが誰も反論しない。



「魅了の件は終わった。」



 レイは続ける。



「ディアナが魅了されていた事も証明されてる。なのに未だに国内は混乱してる。それは何故か。」



 レイはアイルを見る。



「王太子がまだ王太子で、その王太子が平民と結婚すると言ってるから。」



 アイルの肩が震えた。



「そして。」



 今度はシャーロットを見る。



「その平民が王妃になれる実力を誰も信じてないから。」



 シャーロットは顔を真っ赤にした。


 だが声は出ない。



「魔塔主殿。その通りだ。」



 国王が静かに言う。


 国王はゆっくり立ち上がった。


 玉座の間の空気が変わる。



「アイル。」


「はい。」


「今のお前には後ろ盾がない。」


「・・・はい。」


「でも、あの時後ろ盾がついたからとお前を信頼し王太子として任命した私の責任だ。そこでチャンスをやろうと思う。」



 アイルは固唾を飲む。


 嫌な予感がしていた。


 そしてその予感は当たる。



「シャーロット嬢。」



 国王の視線が向く。



「お前が王妃になれる器かどうか。」



 玉座の間が静まり返る。



「それを見極める。」



 シャーロットの顔色が変わった。



「んんっ!?」



 必死に何か言おうとする。


 しかし口は封じられたままだ。



「安心しろ。」



 国王は冷静に続けた。



「別に今すぐ王妃になれと言う訳ではない。だが王太子妃を名乗るなら、最低限の資質は示してもらう。」



 アイルが青ざめる。



「父上、それは・・・。」


「黙れ。」



 国王の一喝が飛んだ。


 玉座の間が震える。



「いつまでもお花畑でいられると思うな。」


「・・・っ。」


「王を目指すなら考えを改めろ。」



 国王の視線が鋭くなる。



「王妃もまた同じだ。側妃もな・・・。」



 そして、国王はその場にいる全貴族へ向けて宣言した。



「三ヶ月後。王太子妃適性試験を行う。」



 玉座の間が大きく揺れた。


 アイルは真っ青で、シャーロットは信じられないという顔をした。


 貴族達は驚きながらもどこか納得したように頷いていた。


 そんな中、レイだけが呑気に呟く。



「へぇ。」



 そして隣のディアナへ顔を向けた。



「面白くなってきたね。」



 ディアナは心底疲れた顔で答えた。



「私は全然面白くないわ・・・。」



 王太子妃適性試験の話で騒然としていた場も、ようやく落ち着きを取り戻し始めている。


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