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魔法特許庁ーーその魔法、違法ですーー  作者: にけ


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135/164

「伝言」

朝、サクは、目が覚めた。


カーテンの隙間から、光が入っていた。


しばらく、ベッドの中で、じっとしていた。


---


研究は、続ける。


その答えは、もう、輪郭ではなかった。


サクは、起き上がった。


---


朝食のあと、ドアをノックする音がした。


「佐久間さん」デイヴィッドの声だった。


「はい」


ドアが開いた。


---


「おはようございます」デイヴィッドは言った。「お加減は、どうですか」


「大丈夫です」サクは言った。「お話、いいですか」


「はい」


---


「決めました」サクは言った。「研究は、続けます」


デイヴィッドは、サクを見た。


少し、間を置いた。


「わかりました」デイヴィッドは言った。「コール大統領に、伝えます」


---


「もう一つ、お願いがあります」サクは言った。


「はい」


「日本の、神崎ハルトと、連絡を取りたいです」サクは言った。


---


デイヴィッドは、少し間を置いた。


「現時点では、難しいです」デイヴィッドは言った。「情報管理の措置が、まだ続いています」


「いつまでですか」


「捜査の状況によります」デイヴィッドは言った。「ただ、できることがあるか、確認します」


---


午後、別室に移動した。


コールが、待っていた。


「佐久間さん」コールは言った。「決めてくれたんだな」


「はい」サクは言った。「研究は、続けます」


---


「わかった」コールは言った。「場所については、これから説明する」


サクは、頷いた。


---


「新しい施設は、国内の、別の場所になる」コールは言った。「これまでより、警備の体制が厳しい」


「研究は、できますか」


「できる」コールは言った。「必要な設備は、すでに準備されている」


---


「移動は、いつですか」サクは言った。


「今日中だ」コールは言った。「準備ができたら、案内する」


「わかりました」


---


少し、間があった。


「佐久間さん」コールは言った。「他に、何かあるか」


サクは、デイヴィッドを見た。


デイヴィッドが、頷いた。


---


「ハルトくんと、連絡を取りたいです」サクは言った。「デイヴィッドさんには、伝えました」


「聞いている」コールは言った。「現時点では、難しい」


「理由は、わかっています」サクは言った。


---


サクは、少し間を置いた。


「直接の連絡が、難しいのは、わかっています」サクは言った。「でも」


コールは、待った。


---


「せめて、伝言だけでも、お願いできませんか」サクは言った。「内容は、確認してもらって構いません」


コールは、デイヴィッドを見た。


デイヴィッドは、少し考えた。


---


「短いものであれば」デイヴィッドは言った。「内容を確認した上で、MPB経由で伝えることは、できると思います」


「事件や、施設に関することは、書けません」コールは言った。「それ以外であれば」


「はい」サクは言った。「ありがとうございます」


---


「紙を、用意します」デイヴィッドは言った。


デイヴィッドが、部屋を出た。


しばらくして、紙とペンを持って、戻ってきた。


---


サクは、紙を見た。


ペンを持った。


何を書くか、すぐには決まらなかった。


---


書きたいことは、たくさんあった。


教授のこと。


ノートのこと。


研究を続けると決めたこと。


---


どれも、書けなかった。


事件に関することは、書けない。


施設に関することも、書けない。


---


サクは、ペンを、紙に置いた。


短く、書いた。


---


「ハルトくんへ。元気にしています。研究は続けます。また、必ず連絡します。サク」


---


書き終えて、もう一度、読んだ。


短い文章だった。


それでも、書きたかったことは、入っていると思った。


---


「これで、お願いします」サクは言った。


デイヴィッドは、紙を受け取った。


内容を、確認した。


---


「問題ありません」デイヴィッドは言った。「MPBに、確認の上で届けます」


「いつ、届きますか」


「すぐに、手配します」デイヴィッドは言った。


---


「ありがとうございます」サクは言った。


一礼した。


---


夕方、移動の準備が始まった。


荷物は、少なかった。


教授のノートと、自分のノートを、バッグに入れた。


---


車に乗った。


窓の外を、見た。


ワシントンの街が、流れていった。


---


空港に着いた。


小さな飛行機だった。


デイヴィッドが、一緒だった。


---


飛行機が、飛んだ。


サクは、窓の外を見た。


雲が、見えた。


---


しばらくして、デイヴィッドが言った。


「もう少しで、着きます」


「どんな場所ですか」サクは言った。


「山に近い場所です」デイヴィッドは言った。「静かなところです」


---


飛行機が、降りた。


車に乗り換えた。


しばらく、山道を走った。


---


施設が、見えた。


これまでより、建物が大きかった。


周りに、木が多かった。


---


中に入った。


部屋に案内された。


これまでより、広い部屋だった。


---


窓があった。


カーテンを開けると、山が見えた。


研究設備のある部屋も、別にあると説明された。


---


一人になった。


サクは、椅子に座った。


バッグから、自分のノートを取り出した。


---


新しいページを開いた。


日付を書いた。


その下に、書いた。


---


「研究を続けると、正式に伝えた」


「新しい施設に移った。山に近い場所」


「ハルトくんへの連絡は、まだ難しい」


「ただ、伝言は許可された」


「『元気にしています。研究は続けます。また、必ず連絡します』と書いた」


---


五行、書いた。


ペンを置いた。


ノートを閉じた。


---


窓の外を見た。


山の稜線が、暗くなっていった。


日本は、もう夜中だろう。


---


伝言が、届くのは、いつだろう。


ハルトくんは、どんな顔をするだろう。


サクは、しばらく、その想像をしていた。


---


明かりを消した。


ベッドに入った。


---


第百三十五話 了

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