「続報」
十一月になった。
夜、サクから電話が来た。
二回のコールで出た。
「ハルトくん、今話せる?」
「はい」
「続報がある。研究室の爆破事件の件」
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サクは続けた。
「先週、警察から連絡が来た。捜査が進んでいるとのことで。犯人グループの一人が、別件で逮捕されたらしい。その人間が話した内容の中に、私の研究室への関与が含まれていたって」
「はい。詳細はわかりましたか」
「全部は教えてもらえなかった。捜査中だから。ただ、一点だけ。犯行の動機として、非適合者が魔法を使えるようになることへの反対、という方向の話が出ているって」
「はい」
「それって、業界団体の話と繋がっている可能性があるよね」
「はい。可能性があります」
「ハルトくん、怖くなった?」
ハルトは少し間を置いた。
「はい。怖い部分があります」
「私も怖い」サクは言った。「研究を続けることで、誰かが怒っている。それが、爆破という形になったかもしれない、ということで。正直に言うと、少し揺れた」
「はい」
「ただ」サクは言った。
「はい」
「続けます」サクは言った。あっさりした言い方だった。「揺れたけど、続けます。やめる理由がない」
「はい。わかっています」
「どうしてわかるんですか」
「続けてきた記録があるからです」ハルトは言った。「一度も、やめると言っていません。その記録があります」
「そっか」サクは言った。「ありがとう、ハルトくん」
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翌朝、リアに報告した。
「佐久間さんの研究室の爆破事件で、新たな情報が入りました」
「はい。聞かせてください」
ハルトはサクから聞いた内容を、正確に話した。
リアは黙って聞いた。
「非適合者が魔法を使えるようになることへの反対が動機、ですか」リアは言った。
「はい。捜査段階ですが、そういう方向の話が出ているとのことです」
「業界団体からの照会と、犯行動機が同じ方向を向いている可能性がある」
「はい」
リアは少し間を置いた。
「神崎さん、日本の警察には、この情報は共有されていますか」
「アメリカの警察から、連絡が来るとのことでした。日本側との情報共有もあるとのことです」
「わかりました。こちらでも、確認します」リアは言った。「神崎さん、今日の話は、慎重に扱ってください。捜査中の情報です」
「はい。わかりました」
「それから、神崎さん自身は大丈夫ですか。この件で、何か思うところはありますか」
「はい。怖い部分があります」
「そうですね」リアは言った。「怖くていいと思います。ただ、今日の話は、記録として持っておいてください。捜査が進めば、繋がる可能性があります」
「はい。持っています」
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その日の夕方、デイヴィッドから連絡が来た。
「神崎さん、少し話せますか。爆破事件の件です」
「はい。話せます」
「捜査情報として、少し共有できる内容があります。佐久間さんには、すでに連絡が入っているはずです」
「はい。昨夜、サクさんから連絡がありました」
「そうですか。それから、一点確認させてください」デイヴィッドは言った。「神崎さん、日本でも、類似した動きがあると聞いています。業界団体からの照会の件です」
「はい。先月、MPBに照会が届きました。回答を出しました」
「繋がっている可能性がある、ということは、IMPOとしても把握しています」デイヴィッドは言った。「マーカス所長も、注視しています」
「はい」
「神崎さん、気をつけてください。個人的に、そう思っています」
「はい。ありがとうございます」
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夜、今日のことを頭の中に入れた。
サクの「続けます」という言葉。リアの「記録として持っておいてください」という言葉。デイヴィッドの「気をつけてください」という言葉。
全部、残った。
研究室の爆破が、業界団体の動きと、同じ方向から来ている可能性がある。
捜査が続いていた。
記録が、繋がろうとしていた。
ただ、今できることは変わらなかった。
記録を積み上げ続けること。
サクが続けている間、こちらも続ける。
それだけだった。
窓の外に、十一月の夜があった。
少し寒かった。
寝た。
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第百五話 了




