↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/9

メサイアコンプレックスの彼―3

男性視点3話

「…ごめんなさい。今まで、ごめんなさい」


壊れたラジオのように謝っている、その声は涙声だった。顔を上げてそちらを見る。重い瞼の隙間から見える彼女の輪郭が、千莉の姿と重なる。

ずっと、責められると思っていた。どうしてあのとき、返事をくれなかったの。お兄ちゃんのせいであたしは死んだんだ――罵倒されるのを心のどこかで待っていた。なのに、目の前にいる彼女は泣きながら、僕に謝っていた。今まで、縛り付けていて、ごめんなさい。

僕は…許されたかったんだ。榛子を救うことで許されようとした。そして今…許されたのかもしれない。体から力が抜け、彼女に寄りかかる。


「榛子のせいじゃないから…泣かないで」


榛子は戸惑っている様子だったが、やがて言った。


「横になったほうがいいわ。ソファに戻りましょ」


彼女に引っ張られるようにしながら、ソファに横たわる。ずきずきとしていた頭痛は、だいぶ軽くなった。

それから榛子は僕が汚してしまった洗面器を持って、トイレに流しに行ったようだ。しばらく水道の音がした後、戻ってきた。

気が抜けてひと眠りしようかと思ったところで、腹がぐう、と鳴った。

朝から食欲がなくて栄養ドリンクしか飲んでおらず、それもさっき吐き戻してしまったため胃が空っぽだった。

彼女は困った表情をして目を伏せた。


「あのね、私…自炊ができないの。包丁が苦手で」


包丁が苦手なのは、彼女の過去が原因だろう。


「あとで食べるから、気にしなくていい」


そう言ったが、彼女は黙って立ち上がると、キッチンのほうへ向かった。

今、もし彼女がパニックを起こしても、僕は助けられないが…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。