夜空の下の二人
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今回は少し静かなお話です。
ブックマークやアクセスを頂き…とても感謝してます。これからも頑張りますので、どうかよろしくお願いします。
夕食を終えたあと…俺は疲れもあってか、少し頭痛がしたので、早急に親父の部屋へと戻った。
懐かしい様な匂いがするこの部屋は、もう既に俺のベッドスペースとなっていた。
一息付き、何となくベッドへと横たわると…ふと目を閉じて『思い出』を整理した。
今回…錬金術を使っている彼等に混じって、俺まで共鳴をしてしまったのは正直誤算だった。
彼等だけでは起きなかったのに…まあ、その後の足りない部分を補ったお陰で起きたと言うのはあるとは思うが。
それにしても…あの状況なら、俺は力を使っては無いし、元々そんな力もない。
ペンダントをつけていたのはレンで、しかもレンの手には直接触れてはいないのだ。
レンの手の上と下には、それぞれカインとジャックの手があった。カインの上はクウォーラの手だ。実際触ったのは下のジャックと、更に上にかざしていたクウォーラの手の筈だ。
まあ…彼等全員共鳴に成功している訳だし…間接的にと言うか、"繋がってる"事が共鳴には必要な事なのかもしれない。
それにしたって…俺の記憶や経験だけ、彼等の方に飛んでないのはどう言うことなのだろうか。
俺はそれが気になって…考えている内に、また頭痛がしてきた。
「痛てて…何だかな…考えれば考えるほど頭が痛い様な気がするぜ…。」
何だか、彼等の思い出や…受け取った意思と言うか経験と言うか…彼等の"想い"を頭の中に浮かべると、激しい痛みが襲った。
現実の世界で、少し聞いたことがあったが…人間の記憶には限界メモリが存在していて、それを超過すると…必要の無い記憶から判断して自然に消していくと言う。
これは論文としてまとめられ、研究会でも発表された証拠もある程度揃った話だ。
だとすると、俺は今日…『4人分の人生の記憶の一部』を頭にインプットしたことになる。
多分憶測だが…この頭痛は急速に得た"情報"を脳が管理しきれて無いのでは無いかと思っている。
だが…そうだとすると…俺の何か別の記憶が…いつの間にか消えてる事になるのかもな。
今のところそんな感じはしないが…もしも楽しい思い出や何かが勝手に消えたら嫌だな。
と、また考えていると…頭痛が酷くなってきた…今日はもう休もう。
そう思って、目を瞑ろうとした時…こんこんと、部屋の扉を叩く音が聞こえた。
「…? 誰だ?」
「リュウノスケさん…少し、良いですか…?」
「フィオラ…?」
訪れたのはフィオラだった。
すっかり可愛らしい寝間着に着替え…俺を訪ねてきたのだ。
所々ハートのデザインがあしらわれた…彼女にとっては多少窮屈なパジャマ…何処か幼さを感じるような物だったが、彼女にとってはある意味ベストマッチな姿だった。
そんな彼女は、何だか心配そうな表情を浮かべながら…俺を夜風に当たらないかと誘ってきたのであった。
※※※
外へ出た俺達は、綺麗な三日月の光をその見に浴びながら…生い茂る草のカーペットの上で、ふんわり身体を撫でるような、そよ風に当たっていた。
自然の匂いと、夜風の気持ち良さが身体に効いているのか…頭痛は少し収まってきた。
すると、彼女がその頭痛に心配をしていたようで…不安そうに声を掛けてきた。
「…大丈夫ですか? 随分辛そうですが…。」
「ああ…まあ今日も色々あったしな、こんな時もあるだろ。」
「そうですか…もし酷くなる様でしたら、私が抗体薬でも錬成しますね。」
「薬か…ありがとう、その時は頼むよ。」
ふふっと笑って…彼女は優しげな表情を向けた。
月明かりに照らされる彼女のそんな顔が、何だか大人びた様な印象を受け…直視は出来なかった。
こんな顔も出来るんだなぁと、子供だと思っていた彼女に関心を抱きながらも…何だか気まずくなりそうだと思ったので話題を変えることに。
少し寝転んでいた身体を起こすと、片膝を立て…彼女の方へと身体を向けるようにした。
「なあフィオラ…何か他に俺に話すこととか…あるんじゃないか?」
「えっと…どうしてですか?」
「うーん…何となくだ。
いつもフィオラから話し掛けて来るときは大体大事な話とかするからさ…違うか?」
そう言うと、彼女はバレちゃいましたかと…何とも意地悪な顔をして俺に言った。
やはり、頭痛何かの為に呼び出すことは無いだろうしな。
そんな彼女は…ふと俺の目をじっと見て…うーんと唸りをあげている…そんなに見つめられるとお兄さん困惑しちゃうんだけど…。
「うーん…やっぱり違ったのかなぁ…?」
「な、何だ? 俺の顔に何か付いてるか?」
「いえ…実はあの実験の時なんですけど…少し気になる事がありまして。」
そう言う彼女はまだ俺の目をじっと見つめている…流石にこれ以上は恥ずかしいので、話を聞くことにした。
彼女はどうやら、俺が共鳴の光に取り込まれると言うか…意識を失う前に、何か見たらしい。
良く聞くと…それは俺の事らしく、何やら返歌が見られたと言っていた。
自覚はしていないが…光に目を眩ませる瞬間、俺が彼女に振り向いたらしい。
その時に…俺のその顔に、何か違和感を感じたのだと。
「……目が青くなってた?」
「はい…確かにこの…青いペンダントと同じような綺麗な青色の瞳になってた気がするんです。
今は…そんな事は無いんですけど…見間違いでしょうか?」
目が青く…そう言っている彼女が嘘をついてるとは到底思えない。
でも…俺にそんなマジックは出来ないしする必要もないからな…どう言うことだろうか。
少し考えたが、ペンダントはあの時かなり光を放っていたし…それが目の瞳孔やら水晶体やらに反射して見えたのではと言う話をした。
今はそれしか俺に考える事は出来ないし…或いは"共鳴"と何か関係があるのかもしれない。
記憶の引き継ぎの件もそうだが…少し疑問に残っては居るが、解決の糸口が全く見えない。
取り敢えず、彼女の疑問にも…俺の疑問にも現時点では答えは見つからなさそうだ。
「うーん…今後何か情報が分かるかもしれないな。
そもそも"賢者の業技"って物自体あまり分かってないし…もしかしたら『賢者の花』とかそう言うのに詳しい人とか会えるかも知れないしな。」
「そうですね。そう言えばこの…『賢者の花』の事…私もまだ分かってません。
もし宜しければ…暫くして落ち着いた頃に、賢者の花の情報を見つけに行くのはどうでしょうか?
きっと分かれば、色んな事に繋がりが見える気がするんです。」
「そうだな…元々、フィオラの手伝いの為に俺がここに居るんだからな。
そろそろ生活にも慣れてきたし…本格的に動き出してもいいかもな。」
賢者の花…これの詳しい情報が分かれば、きっと共鳴の事だったりなんなりが紐解けていく筈だ。
情報集めは…まあまた後日考えるとしよう。
お互いにその意思を確認しあい、新しい目標も決まった所で、ふふっと彼女も笑っていた。
と、そこで彼女はくしゅん! と、くしゃみをした…夜風に当たりすぎたのかもしれない。
そろそろ…戻った方が良いだろう。彼女も疲れが溜まっていると思うしな。
「えへへ…少し肌寒くなってきましたね。」
「もう中に入った方が良いだろう。冷えると行けないしな。
えっと……あと……フィオラ。」
「はい……? 何ですか?」
「その……ありがとな。」
「…ふふ、どういたしまして…♪」
二人は夜空に浮かぶ星達と、その母である月明かりに背を向け…柔らかな笑顔を浮かべながら、寝床へとその身を預けることにしたのであった。




