未来の錬金術師へ
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「確かに共鳴した筈だよな…だって俺にはレン達の記憶が…。」
「どうやら、わたし達には…」
「ああ、カインとクウォーラ…それにレンの記憶ならこの目で見た…だけど少年…あんたのは見てないんだ。」
確かに俺は彼等の記憶を得た。
これはフィオラと共鳴した時も同じだ…だけど、彼等には今回俺の記憶や経験は届いていないとの事だった。
そんな筈は無い、共鳴したと言うことはお互いの記憶や経験を交換すると言うことだ。
だが、現実は異なっている…一方的に受け継がれないパターンでも存在するのだろうか?
いずれにせよ…その原因はもう確認できない。
大人しくその事実を受け入れるしかなかった。
「あー…なんかすまんな、俺はあんた達の事を覗いたってのに…。」
「あっ!そんなに気にすることはありませんよ!ね?みんな!」
レンがそう言うと、彼等は頷いて咎めるような発言はしなかった。
とにかく今は…成功したと言う喜びを素直に受け止めることが大事だと、そう言った。
「とにもかくにも…今回はお二人の計らいのお陰で、とても貴重な経験をすることが出来ました。
しかも…この思い出や記憶を…共鳴した事によって、わたし達はもっと高みを、正しい方向に進めそうです…本当にありがとうございました。」
そう言うと、彼等はレンに続いてまた深々と頭を下げた。
何はともあれ…これにて彼等の特別実習は幕を閉じたのであった。
彼等は支度を整え、レンは手に持ったその光輝く暖かな花を…大事そうに抱えていた。
他の三人も、その花を見て…笑みを溢していたのであった。
時は既に夕暮れ…どうやらかなりの次官を費やしていた様だ。
彼等も所々疲れが見え、無事に帰れるかと聞いたが…それは愚問だった様だ。
疲れはあっても気力はあるようで、何の心配も見せない素振りで彼等は笑っていた。
すると、見送る玄関先で…はっ!っと思い出す様にフィオラが何かを取り出した。
彼女が取り出したのは…先程ミッシェルに貰ったあの箱だった。
「レンさん!これを!」
「えっ?」
フィオラはそう言って駆け寄ると、その箱を手渡した。
それは錬金術の道具…恐らくさっきと同様に使用できる本物の錬金箱だ。それをフィオラは何の躊躇も無く、彼等に手渡したのであった。
驚いた俺は、彼女にほんとうに良いのか…そもそも彼等に渡しても大丈夫な物なのかを危惧したが…彼女の答えはそんな必要の無い事だった。
「フィオラ!?それあげても良いのか?」
「…リュウノスケさん、私達には必要の無い物です。
それに、彼等はもう錬金術を充分扱えるとは思うんです…経緯はどうであれ、彼等は錬金術師を目指す人達ですからね。」
胸のペンダントを掴み…とても固い意思を俺へと向ける彼女。
彼等の事を信頼し…応援しているからこその行動であると、そう言い聞かせるように。
「……本当に使えるのか?それに…また暴走したら助けられるかも分からないぞ。」
「その心配は要りませんよ♪私がしっかり箱の起動を補助しましたのでちゃんと使えます。
それに暴走しない様に、ある程度の安全補助を魔法で仕込んでおきました。」
「そんな事が出来たのか…なら、大丈夫かも知れないな。
錬金術師を目指すにあたって、経験は必須ってのは良く知っている…。まあそれを促すには最適って所か。
流石は天下の錬金術師だなフィオラ?」
「えへへ…一応錬金術師…ですからね。
仲間が増えるのは…願っても無いことですから。」
彼女はそう言って微笑むと、俺もちょっと心配ながらも…微笑み返したのであった。
彼女は改めてレン達にそれを渡すと…彼等も彼女の顔を見て頷き…確かな意思を示した。
きっと…彼等は"錬金術協会"をより良い物に変えてくれるだろう。
今回の事で結束も高まった…この前の様な独りよがりはもうしないだろうからな。
「フィオラさん…。」
「応援してますよ…私の…いえ、私達の夢はいずれ大きな物になるかもしれない。
だから…あなた達に、私は全力でサポートしますから…諦めないで下さいね。」
「…!! はい…!」
こうして…あの人の望んだ『未来の錬金術師』は、しっかりとこの子から受け継がれ…決意を抱くことを決めたのであった。
俺は、あの人が望んだ光景を…今代わりに見ているのかも知れない。
………。
…?
「あの人……って、誰だっけ?」
「リュウノスケさん?」
「あっ、いや…何でもない。」
※※※
そして彼等は手を振りながら、夕日の沈む町の方へと帰っていった。
最後に、少し立ち止まったレンは俺達に…遠慮深そうにこう言ったのだった。
「あの!リュウノスケさん!フィオラさん!
その…また、来ても良いですか…?」
レンのその言葉に、俺とフィオラは顔を見合せ…くすっと笑うと、最高の笑顔で答えたのだった。
「おう!いつでも来いよ!
なんなら俺から行っても良いけどな!」
「また助力出来そうな事があったらお手伝いしますー!お気を付けてー!」
そう言って手を振ると…レンはとても爽やかな笑顔で、手を振りながら夕日の町へと帰っていったのであった。
──
見送りを終えた俺達は、家に入ると…リベルさんが微笑みを携えて立っていた。
「リベルさん、今日は楽しかったですよ!」
「ええ…お嬢様達の姿、しっかり見てましたよ。」
「何だ、リベルさんも覗いてたのか…。」
「うふふ…行けませんでしたか?」
「ふっ、そんなこと無いよ。」
彼女はくすっと笑うと、俺達をテーブルへと案内してくれた。
リビングのそのテーブルの上には、並べられた幾つもの料理が美味しそうな匂いを漂わせていたのだった。
「疲れたでしょう…お食事出来てますよ。」
「おっ!旨そう!
さっすがリベルさん!用意がいいねぇ!」
「わぁー!豪華ですね!」
「何て言ったって今日は特別な『記念日』ですからね、これぐらいしたって…バチは当たりませんよ。」
「そうだな…よし!今日はたらふく食うぞ!」
「えへへ…はい!」
俺達はテーブルにそれぞれ着くと、しっかりと食材に感謝し…その豪華な食事を楽しんだ。
笑顔で色々な話をしながら、今日の苦労や、彼等の事なども簡単に話したりした。
今日は『記念日』だ。
彼等の成し遂げた一つの成果を祝う記念日になった。
俺は…その食事を楽しみながら、一人心の奥底で…共鳴した彼等の幻影と共に、祝杯をあげていたのであった。




