共鳴されなかった少年の記憶
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流石にこの季節…鼻水ずびずびです…
「これ…本当に俺達が作ったんだよな…?」
「うわぁ…綺麗…。」
「イメージ通りだ…本当に出来ちまった…。」
「私涙が出たきたよ…。」
レン達は、自らが作り出した一輪の花…『ピカピ花』を手に、本当に錬金術を成し遂げたと言う達成感と余韻に浸っていた。
キラキラと光を放ちながら、ほんのり暖かみを感じるその花は、彼等の苦労とその努力を称えるように、彼等を照らしていた。
俺とフィオラは、そんな彼等の"偉業"の達成に…ほっと胸を撫で下ろしながら、彼等を見つめていた。
「ほんとうにやり遂げちまうとはな…まあこれもフィオラのアシストとあいつらの最後まで諦めなかった心が生んだ結果だろうな。
初の四人での錬成…それも錬金術が扱えない素人がだ、これは大スクープって訳だ…なあ?ミッシェル?」
俺がそう言うと、リビングのテーブルに座りながら…奇妙な道具を片手に笑みを浮かべているミッシェルが立っていた。
どうやら…彼女は俺達の実験をほぼ最初から覗き見ていたらしい。
その際、彼女の持つ道具…何やらこの世界のカメラの様な物らしいが、水晶体に取っ手が付いたようなその道具…それにバッチリ映像が残されていた。
彼等の奮闘、成功までの軌跡そして…共鳴の瞬間。
「へぇ…綺麗に撮れてるな…それにこれが…共鳴の瞬間か。光でほぼ何も見えねぇな…まあいいか。
しかし、まさかミッシェルがこんな道具を隠してたとはな…。」
「いやいや!私隠してた訳じゃないけど…実は前の湖の事もこっそり撮ってたんだ。
それを見せに来たついでにお土産も持ってきたんだけど…」
「お土産…ですか?」
その映像を何度も見直しながら彼女の話を聞くと、どうやらとある道具を見つけたらしく…それを渡しに来たみたいだった。
彼女は羽織ったジャケットの様な服のポケットを探ると、そこには一際小さな黒い箱が出てきた。
良く見ると…そこには見覚えのあるラインが刻まれ…見つめていると、それは青色の光で点滅を始めた。
「これ…もしかして『錬金箱』か?」
「あったりー!凄いでしょ!」
「どうしてミッシェルがこれを…?
私の持っている物よりまた少し小さい様ですが…少し貸してもらえますか?」
「いいよー!はいフィオラ♪」
フィオラはそれを手に取ると、少し目を閉じて集中し始めた。
すると彼女の胸のペンダントに反応し、その箱は全体的に青色の光を帯び始めた。
どうやら、本当に錬金箱の様だ…何故ミッシェルが?
「なあミッシェル、これ何処で?」
「うん…それなんだけどね、私の仕事仲間の男の人が、近くにある『女神の泉』の遺跡で拾ったみたい何だよね。
使い道が分からなかったから私にくれたんだけど…どう見てもそれフィオラが使ってる箱と同じものだよね?」
「…『女神の泉』ってのが何処かは分からないけど、まあこの通り錬金術様の道具で間違いないよな。」
フィオラの方を向くと、彼女も確信した様に頷いた。
どうやら錬金箱はフィオラだけが持ってるとか、誰かが作ったとか…何だかそう言うものではないのかもしれない。
彼女の所有している二つの箱はどちらも彼女の母親の物だ。
遺跡でこれが見つかったと言うことは…もしかしたらこの箱は『遺物』なのかもしれない。
フィオラが箱を返そうとすると、ミッシェルは手を振って断った。
見せてくれただけかと思ったが、どうやら…これが俺達への土産らしい。
「私が持ってても多分使えないだろうし…それあげるよ!
まあ予備って事で…持ってても損は無いと思うよ?」
「でもいいのか?これ…もしかしたら過去の遺物かもしれない。
相当貴重な物であるのは確かだが、使えないとしても持っていた方がいいんじゃないか?」
「そうですよ、ミッシェルが貰った物なんだし…。」
「あ!それなら気にしなくていいよ!
私…何でか分からないんだけど、そう言うもの良く貰うんだ!
結構お店の常連さんとか、別のお仕事先のお得意さんとか…良く私に声を掛けてくる男の人とか!」
「待て、もしかして…全員男か?」
「えっ…?リュウノスケ良く分かったね?何で分かったの?」
「あっ……ふーーーん……成る程、じゃあ遠慮なく貰うかフィオラ。」
「そうしましょう…何となく分かりました…。」
「???」
成る程、仮にもミッシェルも可愛い女の子の一人だ。
それも顔が広いし仕事も出来る…そんな子に貢ぐってのは…まあ、どの世界でも同じって事だ。
取り敢えずその彼女への『貢ぎ物』を遠慮なく頂いた所で、ミッシェルは目的を終え…町へと帰る事に。
見送りに出たところで、ミッシェルがあっ!とこちらに戻って、レン達の方へと向かっていった。
すると、レンの手を握ってにこやかに笑いながら、ある事を提案した。
「あなた!もしかしなくてもレン・フリーセクスだよね!
噂聞いてるよ!錬金術協会のリーダー何だってね!」
「えっ!?あっはい!
今回フィオラさん達に本当の錬金術を教えて貰って…更に活動を大きくしていこうと思っています!」
「うんうん♪それでね!提案があるんだけど…」
「提案…?」
彼女が取り出したのは先程の映像を見せる不思議な水晶体。
それを左手に持ちながら、横についている取っ手を回すと…その水晶から小さな紙が一枚現れた。
その紙には…先程までの映像が写し出され、動いて見えた。
彼女曰く、魔法で一時的に紙に世界の情景を映像として射影するものなのだそうだ。
それをレンに渡すと、彼女は笑顔で、叫びながら去っていった。
「それ!次の情報更新時に、町の映像盤に貼っておくね!私こう見えても映像回覧局にも仕事請け負ってるの!
錬金術協会…応援してるから!今日の出来事を糧にして頑張ってねー!
あ、あと!リュウノスケ達もばいばーい!」
「えっ!?あ、あのー!!」
レンの声も届かず…例の如く土埃を巻き上げるあの靴で、町の方へと高速で走っていった。
人騒がせな奴と言うか…お気楽過ぎると言うか…困惑するレン達を尻目に、笑顔で手を振る彼女の姿を、最後まで見送った。
※※※
家の中に戻った俺達は、レン達が作り上げたその花を見ながら…先程までの成果を、改めて称賛した。
「良くやったな…フィオラも、無理やり連れてきたかいがあったって訳だ?」
「あはは…そうですね…半ば無理矢理でしたから、これで彼等に怪我でもさせちゃったら…どうしようかと思いました…。」
「いえいえそんな事は!ねぇみんな!」
頭を抱えるフィオラに、レン達は優しく頷いて、過ぎた事を流した。
最初こそもうダメだと思ってたが…何とかなったから、結果オーライって奴だ。
実は一番ひやひやしてたのは俺なんだけどな…。
と、そこでジャックがレンの肩を掴み、それに続いてカインとクウォーラも並んで立った。
すると、俺の方を見て…彼等は息ピッタリで頭を下げたのだった。
困惑する俺に対し、彼等は俺に対して思い思いの事をぶつけた。
「リュウノスケさんが居たから…わたし達は何事もなく成功できたんです!
それに…共鳴…でしたよね、それによって…彼等の本当の気持ちも掴めたんです。
わたしに流れ込んできた気持ち…思い出…苦労、経験…これが共鳴…。」
「実はな少年…俺達は"共鳴"の事を知識として知ってたんだ。
具体的には分かんなかったけど…本や情報で聞いた通り…本当に記憶を共有するんだな…不思議な感じだ。」
「成る程な…知識として持ってたなら、もしかしたら共鳴の成功も偶然だったのかも知れないな…。」
「共鳴って聞いたときは驚いたけど…まさかのまさかだったよな?クウォーラ。」
「ええ…本当に…共鳴した人間の記憶とかが見れるなんて…。」
薄々分かっては居たが、例えお互いに本当に気持ちが通じ合う人間同士でも、この共鳴と言うものは遥かに次元の違う物だ。
正直、フィオラとの最初の共鳴だってほぼ偶然…二回目は巨鳥の入れ知恵がなければ成り立ってなかった。
今回も、彼等が偶然片隅に情報を持ってたからこそ…実現した奇跡なのかもな。
「と、なると…あんたらは俺の記憶も見たんだよな?俺もあんた達の記憶や経験を見た…あまりにも辛い思い出や、記憶をな…。
本当にこの前は…強く言ってしまってすまなかった。」
と、俺も彼等に記憶を共有した事を話し、改めて俺も頭を下げた。
悪気は無かった上、ほぼ不可抗力に近い形で見てしまったとは言え…彼等の悲惨な過去を見たのだ。
言葉では伝えられないほどの辛さを…それを得た俺は、彼等にこの前強い言葉を掛けてしまったことを後悔した。
きっと彼等も俺の過去を見ているだろう…それなら、その記憶や経験は彼等にも役立つ情報として渡せた筈だ。
それを理由に…とは少々不相応だが、取り敢えずはそう謝った。
「まあこれであいこって訳だし…記憶の件は申し訳ないけど…」
と、そう言ったとき、レン達は頭をあげ…お互いに顔見て、何とも不思議な顔をしながら…そのあと、レン達はとんでもないことを言ったのだった。
「い、いえ!?わたしは…わたし達は、リュウノスケさんの記憶や映像は見てないのですが…?」
「俺もだ…俺達だけの記憶しか…みてねぇぞ?」
「俺も…だよな?クウォーラ?」
「ええ…そうよね?カイン?」
「………はぁっ!?」
「ええっ!?うそ!?」
その言葉を前に、フィオラも同じくして…驚き戸惑っていた。




