追っ手の理由そして提案
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余談ですが、中々他人の価値観を認めると言うのは難しい話です…ゴリラの脳じゃ一生理解できないかも知れませんね。
竜之介とレンは、追っ手がまだ居ないかを確認し、話したいことも出来たので、まずは落ち着ける場所を探すことに。
一通り町を共に歩いては見たが、レンが言うにはかなりの数の追っ手と思わしき人達が見当たるみたいで、あまり動けそうには無かった。
何故追われているのか…憶測ではあるが、この子が"錬金術協会"とやらを立ち上げようとしている事に不満を持つ人間の仕業か…はたまた別の事なのか、まだ分からない。
その事を話そうにも道では人目が多い、"その派"の人間に聞かれてはマズイだろう。
そこで、竜之介はひとまずとしてある場所へレンを連れていくことにした。
「近くに知り合いの居る店がある。
取り敢えずそこなら個人店だし、奥を借りれば落ち着ける筈だ。どうだレン、一緒に来てくれないか?」
そう言うと、レンは手をポンと可愛らしく叩くと、ニコリと笑って頷いた。
「分かりました!わたしも少し休憩をして落ち着こうと思ってましたので!」
「よし、決まりだ。
人も多いから手を離すなよ?」
竜之介はレンの手を強く握り、小さなその身体を行き交う人の群れに当てさせないように、彼の言う"知り合いの店"に向かった。
途中途中で、怪しそうな人間の目を避けながら…まるで潜入活動でもしているみたいだ。
現実でもこんなゲームがあったが…実際にそれをするとなると案外人目ってのは怖いものだと思った。
※※※
暫く歩いた先、人通りもそれなりの道の一角。
一風変わった装飾と落ち着いた雰囲気を出す店の前に到着した。
レンは不思議そうに、それでいて少し不安の色を見せては居たが、竜之介は微笑みながら頷き、その警戒の必要は無いと言う意思を見せた。
店の中には特徴的な物から一般的な物まで、様々な用途に使われる"ナイフ"が飾られている。
勿論全て商品だ、そう、ここはナイフ専門店…。
竜之介がその店の扉を開くと、カランカランと綺麗な音色を立てるベルが鳴り、客人が来たことを店に知らせる。
その音を聞き付けた店主が、トコトコとカウンターの前にやって来た。
竜之介が手を振ると、その店主の女性も驚いた顔で手を振った。
「お邪魔するよ、マルテッタさん。」
「おや!リュウノスケじゃないか、いらっしゃい!
昨日はミッシェルがお世話になったねぇ…それに店の売り上げの事まで手伝って貰っちゃって…。」
「良いってことよ、それより…。」
一旦竜之介がレンを見て頷き手を離す。
世間話も良いのだが、まずはこちらの状況を何とかしたいと思い、軽くマルテッタさんにそれを話した。
すると、重く話に介入する事なく、微笑みを携えながら無言で奥に案内をしてくれた。
事情の詮索は好みでは無いそうだ。
「さあレン、奥の部屋を貸してくれるみたいだからそっちで話そう。」
「は、はい!」
※※※
レンと竜之介は、マルテッタさんの計らいによって店の奥の作業スペースを借りることに。
周りには人目も無い…ここなら充分な話が聞けるだろう。
竜之介はふうと息を付くと、レンの目を見て話を始めたのだった。
「落ち着いたな…さてレン。
お前"錬金術協会"がどうとかって言ってたけど…単刀直入に聞くとだな、追われてるのはそのせいか?」
竜之介がそう聞くと…少し後ろめたい印象を見せながら、レンは上目遣いで話を始めた。
「お恥ずかしながら…情報屋であるわたしが情報を漏らしてしまったばっかりに……。」
「情報屋?レンは情報屋とそのリーダーを両立してるって事か?
それに漏らした情報…もしかして疚しいことでもあるんじゃないだろうな?」
「ち、違いますよ!
"錬金術協会"は歴とした技術への追求を目的とした慈善団体です!
ですが…その活動が少し問題でして…。」
「そう言うのが疚しいって言うんだよ…んー…もしかしてその類いの奴等に反感買うような事企んでた…とかじゃないだろうな?」
そう聞くと、目線を反らして如何にも図星と言った感じで汗を流している。
俺はため息を付かずには居られなかったが…取り敢えずどんなことをしようとしてたのかを聞くことに。
それによると、どうやら町の一角を貸しきって錬金術の歴史を読み説く講演をしようとしていたらしい。
それだけなら問題は無いのだが…場所が問題だった。
「……『王門通り前』?」
「はい…見ての通り、この町のシンボルであり、この町と大陸の統治を行っている王城があるのは分かりますよね?」
「あの城…政治局みたいな所だったのか…。
で、それがどうしたってんだ?」
「実は王城の前…『王門通り前』には、その王城で働く気高き兵士たちが愛してやまない…まあ言うなれば|そういう人達(VIP)が通う場所で、お店や露店何かも豪華だったりするんです。
腕の立つ職人や、気に入られた人達はそこに店を開くことが出来る…つまり、より一層今の技術に力を注ぐ人達の場所なんですよ…。」
つまり、王門の前と言うのは高級な店が並び、貴族の類いの人達が集まる場所…現実で言うと六本木とかだろうか?
そんな場所を貸しきって講演を…成る程反感を買ってもおかしくはない筈だ。
反感を買うと思って、元々秘密裏にサプライズで行うつもりだったのだが、どうやらそれが裏目に出てしまったらしい。
そして情報が漏れ、その発端人と思わしきレンを追っていた…と言うことだ。
実際に考えたのはレン自身では無いらしいが…とんだとばっちりと言うわけだ。
この町の人間で錬金術を嫌うのは腕の立つ職人や貴族が多いと昨日フィオラから聞いた。
だとしたら王門前でそんな講演を開くなんて…パラシュート無しで空から飛び降りる位の自殺行為だ。
身勝手な価値観で物事を進めた結果…それがこの状況に陥ったと言うことらしいな。
「ある程度状況は把握した…でも悪いが、ちょいと無謀すぎるしやってることはクーデターに近い。
反感を無理やり押し潰そうと画策したとは思うが…それじゃ人の目は振り向かないぞ。
キツイ言い方かも知れないが…それを考えた奴は"協会"には向いてないと思うぞ。」
「そう…ですか…。」
少し強く言い過ぎたかも知れない、レンはうつ向いて悲しげな表情を浮かべている。
これはこの子に言うべき事では無かったかもしれない。
この子は情報屋であるが故、その統率力と操作力を過信され、リーダーとして任され…その結果とばっちりを受けた被害者だ。
はっ!とそう考えると、竜之介は居ても立っても居られなくなり…思わず立ち上がって謝った。
「す、すまん!ついつい言い過ぎた…何も知らない通りすがりの奴が偉そうに言っちまったな。」
思い切り頭を下げた衝撃でテーブルの上にコツンと頭をぶつけ、痛た…と言いながらも頭を下げ続けた。
すると、慌ててレンも立ち上がり、頭を下げて謝った。
「こ、こちらこそ!全く見ず知らずのあなたにこんな話を…怒られて当然なのに、それも助けてもらって…ごめんなさい!」
と、頭を更に深く下げると…今度はレンの方がテーブルに頭をぶつけ、涙目に鳴りながらその額を擦っていた。
その姿に思わず笑いを堪えきれなかった竜之介は、そのドジさに免じて…ここは両成敗な感じで話を閉じようと言った。
しかし、竜之介自身…"錬金術協会"そのものには興味を惹かれているのは確かだ。
何せ錬金術を普及したいと考えることは同じだ…やり方はどうであれ考えは同じなら、自分にも何か手伝えることがあるのではないかと。
彼はそう思うと、ぶつけた額を擦りながらレンに提案を持ちかけた。
「レン、実は…俺も錬金術の普及を考えている人間の一人なんだ。
知り合いに錬金術師が居てな…そいつの為にもと考えていたんだが…。」
「えっ!?も、もしかしてその錬金術師って…フィオラ・ビスマルクさん!?
お知り合いなのですか!?」
「お、おう!何せ今そのフィオラの家で今暮らしてるからな…。
そこで…だ、提案がある。」
「暮らしてる…はわわわ!
えっと…それと提案……その提案とは?」
竜之介は、下ろしていたリュックをしっかりと肩に掛けると…忘れ物等が無いことを確認した。
それが終わり、レンの目を見つめ…こう言った。
「俺を…"錬金術協会"とやらに入れてくれないか?」




